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桃色の片想い
早寝早起きをしてみる朝焼けはいつになっても良いもので、誰よりも早い秋の到来を季節の香りと共に感じる。
1日をクラウチングスタートしなくて良いってのは随分健康的だ。
薄ら青白い空に雲が桃色に染まるのが好きで、随分と眺めてしまう。この短い時間で温度も少しずつ変わっていく様も結構悪くない。
明るくなってきたのに鳴いてる鈴虫と閑静な住宅街から聞こえる室外機。目を閉じれば夜が続いている気がしてなんだか妙な感じ。
この眺めってのはある程度大きくなってから知った。夕焼けとはまた違う、爽やかなファンタジア。
小学校の頃に図書室で借りて読んでいたミッケ!という本が最初の朝焼けだった。
今思えば夕焼けだったのかも知れないそれは、本当の雲ではなく間違い探しの背景だった。
なんとも幻想的な描写に感動したのを覚えている。
たくさんのシリーズが出ているミッケ!は人気だったので、なかなか借りることが出来なかった。
なので置いてあった全巻を手に取るのには少し時間が掛かった。そうしてなかなか出会えないその空に焦がれては、海外の本だから海外にはそういう景色があるんだなーと、想像しては少し羨ましかった。
中学の時にイベントでオーストラリアに行く機会があって、広大な空があることを知った。夕焼けもミッケ!で見たような夕焼けだったから、本当にあるんだ...!と感動した。
それから夕焼けに黄昏れるようになったのは言うまでもない。何かと物思いにふけていたかったのだろう。
しばらく経って浪人生になった頃、変なサイクルで暮らしていた時期の僕は日が明るくなるのを窓越しで眺めるのが好きになった。
ああ、今日も朝まで起きてしまった。そうして自堕落な時間を過ごしていた時に私は見つけたのだ。
それはあの日絵本の中で知ったファンタジーのような空だった。
窓を大きく開けて身を乗り出した僕は一面に広がるその美しさに見惚れた。東京にもあったんだ。
あれから10年くらい、この歳になって早起きしてこの景色に会いに行くのが少しの日課になっている。
桃色に燃ゆる雲に包まれながら、散歩先のコンビニで人知れず頬張る温かいおにぎりが何よりも美味しい時間だ。
AM5:08
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