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11月の読書 | 自由と夢を永遠に守る
東欧旅行に出かけ帰ってきてドタバタの毎日。読書記録更新が滞っていたのですがやっと今週末時間が取れたので、ゆったり振り返ります📚
ヨーロッパのお供に選んだのはこの2冊。千早茜さんのガーデンと、原田マハさんの<あの絵>のまえで。千早茜さんの本は初めてでした。先日会社の先輩が勧めてくれて2冊ほど購入。「2冊のうち『ガーデン』を先に読むといいと思う。」とアドバイスをもらったのでドイツに行くちょっと前に読み始めました。出発まで仕事がかなり詰まっていてなかなか読めず、結局ドイツまで持ち越すことに。
ガーデン/千早茜
あまりにたくさんの願いごとがあるのと、まったくないのとは、何も願えないという点では似ているような気がする。
「そう。しばらくは様子をみていたんだけど、調子の悪い葉はどんどん茶色くなっていったから、腐敗して他の葉も痛めたらまずいと思って切ることにしたんだ。それでも、数日はためらってしまって。そしたら、ある日さ、その茶色くなった葉に触れた途端、葉がぽろっと剥離してね。もう死んでいた。植物は自分の身体に異常がおきると、その部分に養分がいかないようにして、枯らして切り離してしまう。迷うことも痛がることもせず。断捨離とか流行ったけど、そんなレベルじゃない、自分の身体の余分なものをすべてそぎ落として生きているんだ。」
幼少期を緑豊かな「発展途上国」で過ごしたことが起因となって、植物を偏愛し、他人と深く関わらない編集者の羽野が主人公。ある時取材先で知り合った女性との出会いや周囲の人々の変化で羽野の人生観が揺らいでいく物語。最初はあらすじを聞いたとき、結構羽野は変わり者なのではないかというイメージだった。実際に読み始めると、ところどころ共感できたり、人間らしい価値観が垣間見えて、とても読み進めやすかった。
わたしの家には観葉植物が割と多くある。夫の趣味だ。わたしも植物は好きだけれど、毎日朝に陽のあたるところへ、夜には寒くないところへ移動させ、話しかけ、というのは夫の役目。植物はその気候や調子に正直で、変化していることは毎日ちらちらっと目にするだけのわたしにも分かる。必要な場所にだけ養分を、そして他の葉を殺さないようにもう不要になった葉は落ちていく。そして陽の当たるほうへ、幹が伸びていく。ある意味で健康的な、家にある植物たちのことを考えながら読んでいた。一方で、人間もそうであるべきかというと、そういうわけでもないのかな、と感じた。複雑で、荷物も多くて、なかなか捨てられなくて、いつまでもいろんなものに未練が絶えない。愚かで、いつまでも馬鹿なのだ。だから面白い、それでこそ、だからこそ、人間の世界は面白いのだとも感じた。
<あの絵>のまえで/原田マハ
全部で6つの短編がつまった1冊。ずっと前からヨーロッパ旅にこの本を持っていこうとなんとなく決めていた。傷ついても再び立ち上がる勇気を得る極上の美術小説集。すべて美術に関することがテーマになっている。
絵の中でどうしても鳥に見えなかったものが、急に、鳥に見えた。かごにとらわれているんじゃなくて、自由なのだとわかったその瞬間に。
どれも心に響いたが、わたしは「窓辺の小鳥たち」が好きだった。自由と夢と。歳を重ねるにつれて減っていくように見えてしまうこの2つ。本当はなくなったりしないのに。わたしはいつまでも自由で、いつまでも夢を見つけたい。何度も夢を見つけて、叶えたらまた見つけて。そういう風に生きていきたいと思っている自分にはっと気づかされた。自由、それはわたしがこの世で一番守りたいものかもしれない。
もものかんづめ/さくらももこ
安定のさくらももこさん。何度読んでも、いつ読んでも、どんなときでも元気が出る。それでどこからかまるちゃんの声や、コジコジの声が聞こえてくるような気がして、今悩んでいることとかどうでもいいかも、と思えちゃう。
みんなに読んでほしいので敢えて抜粋は書きません。どの一文も先に読んじゃうとなんだかもったいない感じがする。ぜひ全部セットで読んで欲しい。とっても笑えるから。それぞれのエピソードの「その後」の話も超面白かった。
エッセイストのように生きる/松浦弥太郎
「タイパ」という言葉の根っこには、すべてが計算できるという考えがあります。でも、計算できないところにこそ人生のおもしろさはあります。そもそもすべてのことが計算できる、というのも傲慢な気がします。
せっかちなわたしにはずさりと刺さる話もありました。松浦弥太郎さんの言葉はどの媒体で読んでも丁寧で、好きです。
エッセイとは「秘密度」の高いものである、というお話も興味深かった。わたしも時々、日記とかエッセイまがいのこととか書いているが、ちょっと恥ずかしくてうわべだけになってしまったりするなあと読み返していて思う。これからはもっととっておきの秘密を隠しこんだ言葉を書いてみたいなと思うのでした。何より、エッセイストのように生きる、という言葉がとても気に入りました。
最近は本を買ってばかりでなかなか読めていない。積読できてるからいいかしら。そういえば、kindleを買った。本は圧倒的に紙派だけれど、この間のヨーロッパ旅でやはり長期旅には電子書籍が必要だと感じた。軽くて、そして暗い機内でも、どこでも読める。悪くなさそう。うまく使い分けて、これからもたくさん本を読んで楽しい世界をたくさん知りたいな、と思ってます。
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