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ニーチェ 「自己超克の哲学──最高の自己啓発書」
ニーチェの哲学を理解する上で極めて重要な著作は、主著である『ツァラトゥストラ』、自らの著作に新たに加えた「七つの序言」、そして自らの著作を解説している『この人を見よ』です。
ニーチェは、『ツァラトゥストラ』という「この世で最高の書」を書き上げたにもかかわらず、それに満足することなく、最後の最後まで自らの思索を深め続けました。特に「七つの序言」と『この人を見よ』から、そのことがうかがえます。
「超人」を説いたニーチェは、常に自己を乗り越えようと努めていました。その絶え間ない向上を目指すニーチェに触れるたびに、自己成長や自己克服へのモチベーションが高まります。
『ツァラトゥストラ』こそ、最高の自己啓発書と言えるでしょう。
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主著
『ツァラトゥストラ』(1883-1885)
七つの序言
①『善悪の彼岸』序言(1885年)
②『悲劇の誕生』序言(1886年)
③『人間的なもの、余りに人間的なもの1』序言(1886年)
④ 『人間的なもの、余りに人間的なもの2』序言(1886年)
⑤『曙光』序言(1887年)
⑥『喜ばしき知』序言(1887年)
⑦『道徳の系譜』序言(1887年)
自らの著作の解説書
『この人を見よ』(1888)
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わたしの著作のうち、独自の位置をしめているのは、『ツァラトゥストラ』である。わたしはこの書で、これまで人類に贈られた最大の贈り物をした。
何千年の未来へ響く声をもつこの書は、およそこの世にある最高の書、ほんとうの高山の空気の書であるばかりでなく──人間という事実の全体がこの書物のおそろしいほど遥かの下方に横たわっている──
それはまた、真理のもっとも内奥のゆたかさから生まれ出た最深の書であり、つるべをおろせばかならず黄金と善意とがいっぱいに汲み上げられてくる無尽蔵の泉である。
ニーチェ『この人を見よ』「序言4」手塚富雄訳、中公クラシックス、Kindle版。
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これらの序文は、自身の著作を回顧し、それぞれの著作の位置づけを行いながら、それまでの著作活動を総決算するような性格をもっている。これらの序文の内にもまた、自分自身の著作を文献学の対象とし、その編集者となって自身のテクストを編集するという反省的な所作を見ることができる。
村井則夫『ニーチェ──ツァラトゥストラの謎』中公新書、Kindle版。
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彼の創作活動の頂点は、1883年に始まる『ツァラトゥストラこう語った』にあり、その後の彼の創作活動はこの作品の彼自身による解明・解釈であると言って良いものであるが、本書ではこの彼の創作活動の最後の年である1888年に彼が「もう一歩先へ」踏み出したことに彼の思想の究極的意義を認めたい。
岡村康夫『瞬間・脱落・歓喜──ニーチェと永劫回帰の思想』知泉書館、p.14