レビュー / 映画『愛のむきだし』愛ってそんなにきれいなものなのかい?★4.8
嗚咽した……ニッシーってこんなに素敵な演技ができる人だったのですか!
愛とはなにか。この作品のメッセージは、愛はそんなに清く美しいものじゃない、もっと欲にまみれていて、時に汚く、時に身勝手で、時に痛ましい。でもそれでも、やっぱり、愛がすべて。ってことなんじゃないかと、個人的には思った。
ヨーコを本気で愛する悠。それゆえに勃起もするし、パンツも盗んじゃうし、自分を見てほしいと付き纏ってしまうし。
一方で、性欲を悪だとし、見返りを求めない無償の愛こそ本当の愛だとするゼロ教会。ゼロ教会の教えに洗脳されたヨーコの口から、悠の愛は完全否定される。「最高の道である愛。……慈悲深いものは愛。愛は妬まず高ぶらず誇らない。見苦しい振る舞いをせず、自分の利益を求めず、怒らず、人の悪事を数えたてない……」。
でもそんなゼロ教会の聖書の言葉を聞いて私が思ったのは、愛ってそんなきれいなものなのかい?ということ。
自分を見てほしい。君のヒーローでありたい。洗脳を解いてあげたい。それがその人にとっての幸せかなんて、究極どこまでいってもわからない。エゴだと言われたら、そうなのかもしれない。でも自分が心の底からその人のことを思って取った行動だってことだけは、紛れもない真実で。それを愛だと呼べないなら、一体私たちは愛する人のためになにができるというのか。
だからこそ、ラストシーンで、やっぱり悠のような、決して清く美しくはないけれども、どうしようもなく切実でむき出しな愛こそが本当の愛なんだ、って思えて最高だった。
そうやって愛をむき出しにすることは、怖いことでもある。傷つくリスクもあるし、かっこ悪くもある。でも私もそれぐらい思い切り、むき出しで、人を愛してみたい。まあでも、あまりに一人よがりだと、ストーカーになってしまったり、愛するその人を傷つける結果にもなってしまうだろうから、やっぱりバランスは大事なんだけどね。。
「見えない弾がいつもどこにいても飛んでいる。それに当たって死ぬなんて、誰も信じていない。でもその見えない弾は無数にこの街に放たれ、どこにでも飛んでいる。それが見える人には殺人も事故死も唐突ではない」。ぐっとくるパンチラインが多くて、小説版も買ってしまいました。まだまだ読めていないけど。
人間がぶちまけられている作品がやはり大好きです!役者の皆さんも漏れなく自分をぶちまけざるを得ないハンパねえ物語。人間のカッコ悪さと愛おしさが詰まってる。皆さんの熱量に本当に脱帽です。人間最高。