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【万葉週話59】万葉集の月の満ち欠けの歌(三日月)

こんにちは。
三日月といえばセーラームーンを思い出す
絵本&万葉作家のまつしたゆうりです。

自ら「美少女(戦士)」と満面の笑顔で名乗ってしまえる
主人公うさぎちゃんの自己肯定感の高さに、
観るたび衝撃と尊敬の念を抱かずにはいられません!(笑)

さてさて今日は万葉集の三日月の歌。

三日月は“初月”

今でこそカレンダーがあり、新月も三日月もいつかは
すぐに分かりますが、当時は実際に目で観測していました。

月が空から消え、初めて観測できる太さが三日月。

なので、“初月”と書いて“みかづき”と読まれていました。
(“ついたち”は“月立ち”、月が出来る日。
三日月から遡って「その日だ」と知るので
遡る日と書いて“朔日”と表すそう。)

万葉集では題詞に“初月”と書かれた歌が三首あります。

間人さんの爽やか三日月の歌

289  間人宿大浦

天(あま)の原 振り放(さ)け見れば 白真弓(しらまゆみ)
 張りて懸(か)けたり 夜道はよけむ

 
《訳》空を振り仰いで見ると
白く立派な月の弓が張って懸かっている。
夜道は歩きやすいだろう。

なんとさっぱり、爽やかなお歌!!
間人さんのお人柄が見えてくるような…*

愛しい人に会える喜びを
高らかに歌い上げています。

弓は、仇なすものを射る物理的な力と、
弦を弾く音で魔を打ち払う効果とがあり、
天にかかるほどの大きな弓は
暗い夜道でさぞ心強かったろうと思います。

郎女ねえさんの愛らしい三日月歌

“郎女ねえさん”こと大伴坂上郎女といえば
大人カッコイイ歌を思い浮かべますが、
こちらの三日月歌はなんとも愛らしいお歌。

993 大伴坂上郎女

大伴坂上郎女の初月の歌一首

月(つき)立ちて ただ三日月の 眉根(まよね)かき 
 日(け)長く恋ひし 君に逢へるかも


《訳》新しい月になり、ただ三日月のような眉毛を掻きながら、何日も何日も恋しく思った君に会えました。

当時「眉毛が痒くなると恋人が会いに来てくれる」
前兆だと思われており、転じて
「眉毛を掻いていると恋人が会いに来てくれる」
というおまじないに。

そんな風に、おまじないをしながら待っていたなんて…
キュンとくるエピソード!

しっかりしてそうな女性の、以外な子供っぽさなんて
ときめかずにいられない…緩急自在な郎女ねえさん、
男女問わず虜になってしまっていたかも。

“もっちゃん”こと大伴家持の三日月歌

郎女ねえさんの歌のすぐ後に、このお歌が載っています。

993 大伴家持

振(ふ)放(さ)けて 三日月見れば
 一目見し 人の眉(まよ)引き 思ほゆるかも


《訳》振り仰いで三日月を見ると、一目会ったあの子の眉毛が思い出されるなあ…。

このお歌は、もっちゃん16歳の時の歌!
(初々しい…!!)
思春期まっただなかでしょうか。

詠んだ年齢が分かっている、一番若い時の歌とされています。

「見し」は単に見ただけでなく「逢瀬をした」
という意味なので…
最初の妻の、大伴坂上大嬢ちゃんに宛てたんじゃないかしら
と言われています。

もっちゃんはこの後、大嬢ちゃんとは別れて
妾(名前不明)ちゃんと夫婦となり
息子の永主くんが生まれました。

しかし二十代の頃に妾ちゃんに先立たれ…
また大嬢ちゃんと復縁します。

大嬢ちゃんは、もっちゃんと違い
「歌を必要としない」メンタルっぽいなという
印象なので…そういうところが頼もしく心安らかに在れる
存在だったのかもしれないなと。

三日月の歌、いかがだったでしょうか。

郎女ねえさんともっちゃんの歌は
「三日月を題材に興にのって詠まれた歌では」
とも注釈に書かれていました。

皆さんは歌の余白に、どんな物語を
見つけられたでしょうか*

(よかったらコメントで感想いただけたら嬉しいです♪)

万葉集では三日月歌は他五首のみらしく、
満月や上弦の月が多いようです。

上弦の月の見立ては、七夕歌のところでご紹介*


来週は【月の満ち欠けの歌、続き】

今週のお歌は共著書『よみたい万葉集』
万葉新聞 七夕号」に掲載した
「月の歌」を元にご紹介しました*



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来週は、読みきれなかった「三日月以降の月の形」
の歌をご紹介します!

雑談いろいろ

今日はいろいろコメントいただき、学びの場となりました*

・竹生島旅(またnoteに神社めぐりマガジンアップします)
・蓮の花の開く音の話(動画教えていただきました)

・般若心経のお話
・向かい干支のお話
・サマーウールの着物のお話
などなど

お話していた散華型の万葉しおり
好きな歌を書き込んで、オリジナル「万の言の葉」を🌿

インスタライブ📺アーカイブはこちら↓

今日のお着物

月の歌ということで
満月のようなアンティークビーズのブローチに
サマーウールのお着物で。
(母が反物から仕立ててくれました*)


絵本作家・万葉&民話作家 まつしたゆうり

「心をつなぐ扉を描く」水彩画

共感覚で感じる色と模様を描く。
昔から伝わる物語を、今に届く形にして
お届けしています*

大阪在住、滋賀県長浜出身
大阪芸術大学デザイン学科卒

🌟第5刷 『よみたい万葉集』

初心者から中級者まで楽しんでいただける入門書。
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一面に田んぼの広がる田舎町で、
虫と草花と、本を友として育ちました。

幼い頃から 古典と歴史と仏像と恐竜と特撮と漫画とアニメが大好き!
心に触れることで果てしない空想の旅を一緒にできるような作品を作っています。

ゆったり季節に寄り添う暮らしと、日々 野鳥観察&着物。
鳥は愛でるのも食べるのも好き。

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