日本の美容室を、シンガポールに海外進出させる経営戦略と課題
※この論文は、私が大学2年生の前期に作成したものになります。
※私の通う大学の「世界経済」という講義で、海外の一つの国の経済や環境に関するカントリーレポートを作るという課題が出ました。この記事は、その際に作成した内容になっております。
以前、NHK番組である「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組で、日本で1番の人気を誇ると言われている美容室【オーシャントーキョー】の代表取締役を務める高木琢也さんが、「シンガポールに海外進出したい」という話をされていました。
そこで、このレポートを作る際、「実際に僕が、オーシャントーキョーの社員になったと仮定し、僕が他の社員に対し、「海外進出の候補国であるシンガポールについてのプレゼンテーションをする」という想定で、以下のレポートを作成しました。僕自身も、将来美容室専売品メーカーへの就職を目標としているので、自らの勉強も含めてレポートを作成しています。
1. はじめに
美容室オーシャントーキョーがシンガポールに海外進出するにおいて、重要なチェックポイントは2つある。
まず一つ目は、「シンガポールの経済状況」である。美容室というのは当然ながら顧客にお金を支払ってもらわなければ営業赤字となってしまう。そのためシンガポールの経済が上手く回っていなかったり、経済システムが整っていなかったり、これから景気が下向きになる予想などがあれば売れ上げが伸びる余地がなく、シンガポールへの事業進出は諦めなくてはならない。そのため、シンガポールの経済状況をチェックし、「美容室にお金を払うだけの安定した経済状況にあるのか」ということをチェックする必要があるのだ。
チェックポイントの2つ目は、「シンガポールの環境問題」である。環境問題と言っても、最も重視するべきは「水道水が清潔かどうか」ということだろう。美容室というのは一般的に1人の客に対して20リットルの水を使用すると言われている。そのため、清潔な水がなければ客に対して満足なサービスを行うことができないわけである。
これらの理由から、美容室オーシャントーキョーをシンガポールに進出させるための条件である、①経済状況と②環境問題(主に水の問題)の二つの項目を、以下で考察していきたい。
2. シンガポールの経済状況とその背景
先程述べた通り、美容室をシンガポールに進出させるにおいて、シンガポールの経済状況を確認しておくことは重要である。
実際、シンガポール現在の経済状況は日本よりも良好で、一人当たりGDP(ドル単位)を見ると日本は40,500ドルなのに対しシンガポールは50,000ドルを上回っている。1人当たりGDPというのは文字通り国民1人1人の豊かさを示すため、貧困によって美容室に出すお金が無いというような状況ではまず無いと言えるだろう。実際、それを裏付けるかのようにシンガポールの街は超高層ビルや、ショッピングモールや商業施設が立ち並んでいる。
さて、これまでシンガポールの現在の経済状況を確認してきたが、続いてシンガポールがいかにして現在の良好な経済状況に辿り付いたかを見てきたい。
シンガポールはもともと1965年にマレーシアから分離し、資源に乏しい決して裕福な国とは言えなかったようだ。そこで、初代大統領であるリー・クアンユー氏が一党独裁制による強烈なリーダーシップを発揮し、今に続く経済発展の基盤を築いたという。
ではリー氏は、経済発展を遂げるためにどのような政策を取ったのだろうか。大きく3つに分けて考察していきたい。
①外資融資
シンガポールは独立当初、外資企業を排除することで国内企業の育成を図る。しかし、国内マーケットの小ささゆえに経営を行き詰まったことから方向転換し、外資企業の誘致に乗り出した。外資企業への優遇処置によって産業の急速な工業化を進めることができ、シンガポールの経済成長が成し遂げられたという。
その結果経済の流動性は増し、1980年から2010年までに平均GDP成長率が7%以上となり、安定した成長を遂げることができたのだ。
②エリート教育
シンガポールは少ない人材を活用するため、徹底した実力主義で知られている。小学生頃にPSLEという全国統一テストのようなものに受験し、その結果がその後の人生を決めてしまうような重要な試験だという。その後、進学先の学力レベルに応じてGCEという学力調査を受講し、全てに合格した生徒のみが国立大学に進学することが許されるのだ。
このように、徹底した実力主義が、結果的にシンガポールの経済に良い影響をもたらしていると言えるだろう。
③GLC(政府関連企業)の存在
GLCとは、日本でいう国策会社のようなものであり、テマセクホールディングスという政府の株式保有率100%の持株会社が管理し、政府の方針に沿って企業戦略をしていくのだ。GLCの幹部は、②で述べたようなエリート教育でトップレベルの成績を残した者が就任しているため、安定かつ高い成績を残すことができているのだ。
これら3点が、シンガポールの経済を、発展させた背景であり、これからもアジアの中心経済圏としての影響力を発揮していくだろう。
以上の理由から、美容室オーシャントーキョーをシンガポールに事業進出する上で、貧困によって美容室にお金を払う余裕がなく、美容室の売り上げが伸びないというような恐れはまず無いと言えるだろう。
3. シンガポールの水資源の状況
さて、続いては環境について見ていきたい。先程も述べたように、美容室というのは1人の客に対して最低でも20リットルの水を使用するといわれ、その水が清潔でなければ顧客に対して満足なサービスを提供することはできないだろう。顧客が美容室に求めるのは、当然理想とするヘアスタイルに近づけてもらうことだと考えるが、それ以前に安心安全なサービスを受けたいという心理も存在すると考えるからである。
さらに、重要なのは水道水のコストだろう。1人の客に20リットルを使うということは、1日に20人の客が来店し、週に6日営業だと考えると、一年間で最低でも120,000リットルもの水を使う計算になる。その水道水が日本の水道料金よりも大幅に高い場合、コスト面からもシンガポールへの事業進出は難しくなるだろう。
前置きが少々長くなってしまったが、ここから実際にシンガポールの水状況について見ていく。
①シンガポールの水の安全性
やはり美容室において水は客の髪や頭皮に直接触れるわけであるから、安全性が保たれていないとサービスとして成り立たない。
さて、実際の水状況を見ていくと、結論から述べると美容室で使っても問題無いであろう。シンガポールでは水質検査に力が入れられており、世界保健機構の基準も満たしているため、当然飲み水として使用できるほど清潔だと言える。
②シンガポールの水道料金
先程も述べたように水を大量に使用する美容室にとって、水道料金というのは特に重要なチェックポイントだと言える。では実際にはどうなのだろうか。
結論からいうと、コスト面での問題は無いと言える。日本では都道府県など地域ごとに水道料金にばらつきがあるため定かでは無いが一番高い地域で「1立方メートル当たり約220円」である。
それに対してシンガポールの水道料金は、「使用量が40立方メートル以下であれば1立方メートル当たり2.1ドルとなっていて、日本よりも低い水道料金となっている。現在では値上がりし、2.39ドルになっているようだが、それでやっと日本と同じくらいの水道料金になると言えるだろう。
これらのことから、シンガポールの水は清潔で美容室で使用しても問題ないと言え、水道料金も日本とさほど変わらないためコスト面での心配もないだろう。
4. シンガポールに事業進出する上での課題
ここまで、美容室オーシャントーキョーがシンガポールへの海外進出をするにあたって、シンガポールの経済と環境についてのカントリーレポートを作成してきた。
考察の結果、進出候補国であるシンガポールは、美容室を運営するにあたり経済的にも環境的にも申し分ないという結論に至った。
しかし、ここから述べることは今回の「シンガポールの経済と環境」というテーマとは趣旨が異なり、完全に美容室の経営戦略的な話になってしまうが、せっかくの機会なので述べていく。
たしかにシンガポールは、経済の循環も良く、街並みも整備されており、水資源の清潔さや水道水のコストなど、美容室を経営していく上での問題は全くない。
だがしかし、シンガポールに進出して、「日本と同じだけ、またはそれ以上の売り上げを達成することができるのか」という問題に関しては、はっきりと達成できるということは言い切れない。
その理由は、シンガポールの独自の気候にある。日本の平均湿度はおよそ60〜70%と言われていて、最も湿度が高くなる夏場でも75%くらいであるのに対し、シンガポールの平均湿度はそれを遥かに上回る84%である。さらに晴天の日は、早朝から湿度90%を超えると言われている。
そのため、外を歩いているだけで体中から汗が噴き出し、髪の毛も常に湿っている状態らしい。そのため、ヘアアレンジなどはおろか、ドライヤーで髪を乾かすこともほとんどの人がしないそうだ。
言ってしまうと、「髪の毛に対して無頓着である」と言える。
先程も述べたが、シンガポールに事業進出する上で、「経営的な面」では問題ないだろう。しかし、シンガポール人がもしこの先も髪の毛やヘアスタイルに対して無関心、無頓着のままだと、美容室の「売り上げ」という面では期待できないと考える。
こちらの美容室側がいくら良いサービス環境を整えても、シンガポール特有の超高湿度な環境が改善されるわけでもなければ、シンガポール人全員が髪の毛やヘアスタイルに関心を持ってくれるとはいえ限らない。
5. 「ヘアスタイルの持つ力」をシンガポールに広める
しかし、解決策がないわけではない。いくら髪の毛に無頓着と言っても、人間は必ず定期的に髪の毛を切って、外出する前には髪を整えて、帰宅すればお風呂で髪の毛を洗う。このように、髪の毛に興味が薄いだけであって、髪の毛には毎日触れているのだ。
よって私の考える案としては、美容室側がシンガポール人に対して、「ヘアスタイルの持つ力」を広めていくことである。それなら方法はいくらでもある。美容室に来てくれた客には、パーマやカラーの提案をしたり、ヘアスタイリングの方法を教えたりする。そして、自宅でも髪の毛への興味を強めてもらうために、日本製の髪の毛に優しいシャンプーや、トリートメント、スタイリング剤を購入してもらい自宅で使用してもらう。いくら高湿度な気候によってヘアスタイルが崩れやすいとは言っても、しっかりとドライヤーなどで乾かし、スタイリングをすれば何もしないよりは髪型に変化が出るだろう。「髪型は顔の額縁」とも言われてるくらい、ヘアスタイルがその人に及ぼす影響は大きい。見た目だけでなく、内面的にも前向きになれる力があるのだ。
その「ヘアスタイルの持つ力」というのを、シンガポール人に広めていければ、結果的に美容室の売り上げをアップさせることができると私は考える。
今回の記事、レポートはここまでです!
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます!😆
自分としても、ここまで長い文章を作成する機会はなかなかないため、もしかしたら誤字脱字、または文脈が綺麗ではないところも多々あるかと思います。
そもそも大学の課題なんて、言ってしまえば最終的に単位を貰えればそれで良いわけですから、ここまで真剣に取り組まなくても良いのです。
しかし、自分の興味のあることには熱意を持って取り組みたいと思っているので、このような長文になりました。おそらく文章からも、少しは僕の熱意が感じられたかと思います笑
これからも、noteブログを頑張って書いていきますので、是非見てください!😆
もし良ければ過去の記事も是非👍