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「日常のお菓子でありたい」変わらぬ思いと生まれるアイデアー老舗和菓子店「満月堂」

神戸市の中心部から北へ車で30分、のどかな田園風景が広がる北区淡河町。かつて宿場として栄えた町の中心部にひときわ目立つ大きな櫓が立っています。ここが今回ご紹介する「満月堂」です。創業明治15年、初代の名前を冠した「豊助饅頭」は、長年変わらず作り置きをしないスタイルでいつでも出来立てが店頭に並びます。5代目の妻で取締役の吉村元子さんに満月堂の創業当初からの変わらぬ思い、現在の商品やSNSでの取り組みについてお話を伺いました。

湯治客で賑わう淡河町に明治15年創業

かつて豊臣秀吉の時代には、宿場町だった淡河町。淡河本陣前の道は「湯乃山街道」とも呼ばれており、江戸時代には参勤交代や湯治目的の大名達で賑わいました。

以前のお店は、鉄骨造りで淡河本町の交差点の辺りにあったそう。

初代・吉村豊助氏は、淡河町で独自のまんじゅう作りの秘儀をあみだして、明治15年(1882年)に湯乃山街道沿いに和菓子店「満月堂」を出店。お店の名物「豊助饅頭」は、有馬温泉の湯治客のお土産物としても評判となりました。

その後、昭和48年(1973年)に淡河本町の交差点付近に店を構えましたが、隣接する県道38号線の道路拡張工事が決まり、移転を余儀なくされました。


木造建築の趣ある店構えにリニューアル


現在の店内の様子。
カウンターには看板商品の「豊助饅頭」をはじめ、
「かりんとう饅頭」や「手づくり最中」など8種類の和菓子が並んでいます。
(※季節によって和菓子の数や種類は異なります)

平成8年(1996年)に現在の場所に移り、新店舗での営業がスタートしました。『豊助饅頭』の文字が入った大きな櫓の看板を作ったのもこの時期です。

「お店の内観でこだわったのは、風情ある和の趣です。内装にも木材をふんだんに使っています」と話す元子さん。

移転前は、豊助饅頭・最中・羊羹の3種類を中心に作っていましたが、移転後、店舗の規模が大きくなり、扱う商品のラインナップが増えました。


お彼岸には1日1万個以上売れる「豊助饅頭」

満月堂の看板商品の「豊助饅頭」は、多い時には1日1万個以上売れる人気商品です。原材料は、北海道産小豆と砂糖と小麦粉のみとごくシンプル。柔らかい薄皮の中には、京風の淡泊な風味のこしあんがたっぷり。おまんじゅうを舌にのせた瞬間、とろけるように柔らかなあんこの上品な甘味が口いっぱいに広がります。

「昔のおまんじゅうはもっと甘かったんですよ。時代の移り変わりで少しずつ配合を変えています。戦時中はお砂糖が貴重で、兵隊さんたちは『最後の甘いもの』とおまんじゅうをお腹いっぱい食べてから戦場へ行ったそうです。そういう時代を経てきていますから、この味を守り引き継いでいかねばと気持ちが引き締まります」(元子さん)


「経木(きょうぎ)」に包まれた10個入りの「豊助饅頭」包みを開けた瞬間、ふわりと木の香りが漂います。

まんじゅうが蒸しあがるタイミングは1日3回。朝、昼、夕方にお店の屋根からモクモクと白い湯気が立ち昇ります。
「冬の朝、空気が澄んでいる時間帯に一番湯気が上がります。お客様にはいつでも出来立てをお持ち帰りいただきたいです。その思いは創業から代々変わらないですね」(元子さん)

経木の10個入りの豊助饅頭をまとめ買いするお客様も。

春先の温かくなってきた時期、紅葉の時期、帰省シーズンはお土産を求めて地元のみならず観光客でお店も賑わいます。1個76円(税込)と価格も良心的。いくらでも食べられてしまうその美味しさにリピートするお客様もたくさんいるのでしょう。

「多い時だと1日1万個売れる日もありますよ。賞味期限は3日間と生菓子に比べると日持ちします。遠方で来店するのが難しい家族や友人のために10個入りの『豊助饅頭』をまとめ買いする方もいらっしゃいます」(元子さん)

淡河は食材の宝庫!地元の素材と和菓子の融合

満月堂は、地元産の米や豆類、果物を使用した和菓子も豊富です。

「淡河町の生産農家のいちごを使った『いちご大福』や自家製の米粉団子に北神みそをたっぷりつけた『みそだんご』を冬期限定で販売しています」(元子さん)

(画像提供:満月堂公式Instagram)
(画像提供:満月堂公式Instagram)


その他、秋には淡河産の黒枝豆を使った『ずんだ団子』や淡河産の栗と自家製の米粉を使った『渋皮煮と栗餡の和風ロール』などがあります。旬の食材の宝庫である淡河町だからこそ、季節を大切にした和菓子が生まれています。

(画像提供:満月堂公式Instagram)
(画像提供:満月堂公式Instagram)

満月堂から歩いて5分ほどの距離の「淡河宿本陣跡」にあるカフェ「本陣なな福」では、満月堂で購入した和菓子を持ち込んで食べられます。周辺散策をした後に立ち寄ってみるのもいいでしょう。冬場は、暖かい暖炉の火の揺らぎを眺めながら。カフェスタッフとの談笑も心地よい時間です。

淡河宿本陣跡は、50年以上誰も住んでいなかった空家を地元の有志が地道に再生活動に取り組んで、今の形を築いています。庭のお堀も改修し、夏には蛍が眺められるまでになったそう。

SNSで「満月堂えがおプロジェクト」始動! お菓子から笑顔広がるひとときを

満月堂では、公式Instagramでお店の新商品やイベント情報を発信しています。新商品の販売情報がアップされると、お客が押し寄せて即完売することもあるそう。
地元のみならず、淡河町を訪れる人も更新を楽しみにしています。

令和5年(2023年)からは淡河町のイラストレーター貝瀬美穂さんが描く”満月堂の風景”の水彩画の投稿もしています。

(画像提供:満月堂公式Instagram)
(満月堂公式Instagram)


(画像提供:満月堂公式Instagram)

「令和6年(2024年)には、和菓子を囲む笑顔のお客様の写真から水彩画を描き起こす『満月堂えがおプロジェクト』がスタートしました。今年は新年から災害で始まってしまいましたが、どんなことがあっても、和菓子を食べて温かいお茶を飲んで笑顔になってもらいたい――そんな想いをこのプロジェクトに込めています」(元子さん)

創業からの伝統を守りながら、自家製の米粉や地域の食材を使って新しい和菓子を生み出している満月堂。多くの人に今なお支持されているのは、創意工夫した和菓子を通してお客様の日常のお菓子でありたい思いが人々に伝わっているからかもしれません。

和菓子のベースとなるあんの味わいを大切に、出来立てを手渡すことにこだわっています。これからも満月堂の和菓子は常に進化し続けていくことでしょう。

手土産としても喜ばれ、2つ3つと毎日食べても飽きのこない満月堂の和菓子。淡河町の四季の移ろいと共に味わってみてはいかがでしょうか?


満月堂
住所 651-1603 神戸市北区淡河町淡河754-1
TEL:078-959-0031
営業時間:8:00~18:30
定休日:水曜(不定休あり)

電話番号:078-959-0310
facebook  https://www.facebook.com/toyosukemanju.mangetsudou/
Instagram https://www.instagram.com/mangetsudo/
公式サイト https://mangetsudou.jp/


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