終わらせようと思ったのに
虐待サバイバーのゆうかです。
私は虐待されて育ちました。
精神を病み、生きづらさを抱えながら、生きてきました。
それでも、いつまでも恨んでいると、自分の人生が前に進めない気がして、両親に対して、ひとまず育ててくれた感謝だけを伝え、恨みは残るけれども、一区切りつけようと思っていました。
私が今生きているのは、両親が私を殺さずに大人にしてくれたからだと思うからです。
私は、両親に、ビデオ電話をかけました。
両親とも画面の前にそろったところで、途中で口を出されたくなかったので、「何も言わずに最後まで聞いてください」と前置きしてから、
改めて
「お父さん、お母さん、私を産んで育ててくれてありがとうございました。子供の頃は色々あったけれど、そんな試練があったからこそ、努力ができる人間になれたと思うし、辛抱強くもなれたと思っています。お父さんとお母さんの愛情を感じていたので、ここまで来られたのだと思います。本当にありがとうございました」
と、泣きながら伝えました。
これで、私は、全て終わりにしたかったのです。恨みも感謝もぐちゃぐちゃでしたが、ただもう終わりにしたかったのです。
ところが、どうしても終わりにすることはできない言葉が帰ってきたのです。
父は泣きながら
「俺はね、ゆうかちゃんが小さい時になんでもっと可愛がれなかったんだろうって後悔してるんだ。ずっと言えなかったけど今日言えてよかった。ゆうかちゃんが小さいときに仕事に行く俺をいつも追いかけてきて、よく転んでたんだ、なんで俺はその時に、抱き上げてあげなかったんだろうって。また小さく戻ってくれたら、育て直すのに。」
と。
この話はもう100回くらい聞かされていますが、え、そこ?ってなりました。
父は、私が様々な虐待に苦しんでることを全くわかってないんだなぁと痛感しました。
そして、全く私の言葉が伝わってない…
母は、笑みを浮かべながら
「ゆうかちゃん、そんなに深刻にならなくていいのよ。私達は、あまり子育てが上手くはなかったかもしれないけど、それでも当たり前のことをしたまでなんだから。だからあなたはそんなに深刻にならないでね〜」
愕然としました。
母は昔のことを忘れてしまったのかもしれません。
「これは深刻な問題なんです!!!」
そう言おうと思いましたが、伝わらないと思い、言うのは諦めました。
結局、父も母も、過去のことは忘れたいのか、忘れるしかなかったのか、忘れてしまったのか、どちらにしても、私の心にこんなにくっきりと残っている記憶を、両親は消してしまったのかと思うと、もう諦めしかありませんでした。
そうやって、身を守るしかなかった両親をこれ以上責めたり、謝罪させたりするつもりはありません。
それは私の本意ではないからです。
たとえ、両親が私の憎しみの対象だとしても、これ以上は私自身が、この苦しみを処理していかなくてはならないと、固く誓ったのでした。