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連載《教え子~塾講師と生徒~淡くてほんのり苦い物語~》

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塾講師の沢崎と、女子中学生の玉城彩子。 二人の間に淡くてほんのり苦い関係が生まれた。 講師と生徒の間柄を乗り越えて、二人の思いは結実するのか、しないのか。 じれったいが故のほろ苦…
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2019年5月の記事一覧

連載《教え子10~塾講師と生徒~淡くてほんのり苦い物語》

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駅のホームに電磁掲示される次の新宿方面は、三分後に急行が来て六分後に各停が来ることを示していた。
彼女の最寄駅は各停の駅だったから、まだ少し余裕があった。
これで少しは話ができる。
それだのに、自分の気持ちを知られたくないから、
「ちぇ、六分も待つんだって」
と、裏腹な台詞を吐いてしまった。
つい口をついて出た言葉に“へどがでる”ほど嫌気が刺すも、それすら感づかれたくない。だから、

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連載《教え子09~塾講師と生徒~淡くてほんのり苦い物語》

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俺はいかにも先生らしくあくまで生徒を送っていく体を装い、
「じゃ、行こか」
と言って、玉城へ目をやり、
「じゃ、お先に失礼します」
と言って、他の講師陣と塾長に軽く挨拶した。

講師の中には俺たち二人を好奇な目で見たり、無関心に「おつかれさま」と言って明日の教材から目を離さずにいたりする者がいた。でも、俺にしてみれば彼ら全員が無言で「生徒との関係は御法度だぞ」と言っているようで、そ

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連載《教え子08~塾講師と生徒~淡くてほんのり苦い物語》

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18時台までは晴天だったのに、今日に限って急に雨がザンザン降りになった。
授業が終わっても降り続けているため、近くに住んでいる生徒は親御さんに迎えにきてもらって、自転車は敷地に置きっぱなしにすることになった。
でも、男子はむしろ雨の中を自転車で帰ることが楽しいらしく、ワアワア言いながら帰って行った。
俺の最後のクラスは生徒数が12名で7名が男子だった。残り5名の女子に玉城がいた。彼

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