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毎日400字小説

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2023年10月24日~2024年10月23日 毎日1篇アップしました!
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2024年4月の記事一覧

毎日400字小説「カレーライス」

 夜、母さんは缶ビールを開けた。おめでとうと言って、麦茶を注いだ私のグラスと合わせる。に…

友直
9か月前
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毎日400字小説「住宅街の午後」

 今泉加津は正午ちょうど、昼食の載った盆を足元に置いて二階の洋室のドアをノックする。腰を…

友直
9か月前
2

毎日400字小説「避妊」

    デキ婚という言い方が授かり婚と呼ばれるようになって久しく、低用量ピルの知識も広まり…

友直
9か月前
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毎日400字小説「恋?」

 また、浅田が恋をした。そろそろ花粉症なんかに並ぶ、春になるとやってくる病気と認定されて…

友直
9か月前
3

毎日400字小説「女」

 祖父が昔演歌歌手のお弟子さんをやっていて、いとこには若者に人気のボーカルグループのメン…

友直
10か月前
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毎日400字小説「弁当」

 寝ぼけまなこで玉子焼き用のフライパンを引っ張り出して、冷蔵庫のドアを開ける。卵二個と、…

友直
10か月前
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毎日400字小説「危険な」

 友人の結婚式に夫婦で出席したら、新婦の友人として過去の不倫相手が来ていた。「えー、係長。どうして?」と言われ、ゆで卵を飲み込んだような顔になって、「どうしたの?」と妻に訝られた隆司だったが、「ほら昔、徳島の現場でさ……」妻も知っている話をして上司と部下であることを強調した。「あのときは大変お世話になりました」彼女も心得たもので、妻に向かって愛想よく頭を下げる。大丈夫、きっちり別れたのだ。隆司は自分に言い聞かせる。しかも悪くない別れ方だった。彼女のほうに新しい男が出来て、結婚

毎日400字小説「恋とは」

 久慈サクラは高森俊也が好きだった。高森俊也はずっと年上の辻美咲が好きだったが、彼女は俊…

友直
10か月前
1

毎日400字小説「間違えたわ」

 駅を降りて歩いていると、後ろから駆けてくる足音がして、邪魔にならないようなんとなく道端…

友直
10か月前
2

毎日400字小説「誘拐」

 誘拐されたことがある、という打ち明け話を、中瀬晶がよく初対面の男にするのは、興味をこち…

友直
10か月前
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毎日400字小説「玉ねぎ」

 冷蔵庫の中を見ると、玉ねぎが一つごろりと転がっていた。月曜日、初めての自炊のために張り…

友直
10か月前
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毎日400字小説「降ってくるもの」

 高瀬里奈はがんばっていた。二歳と五歳、二人の子供を自転車の前と後ろに乗っけて保育園に送…

友直
10か月前
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毎日400字小説「ちーちゃん」

 居酒屋の個室に現れたそいつを見たとき、裏切られたと俺は思った。だけどそれは俺の勝手な思…

友直
10か月前
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毎日400字小説「木村一 七十五歳」

 東北の貧しい農村の生まれだった。しかし勉強はずば抜けてできたため、なんとしても進学させるべきという高校教師の奔走により、奨学金を得、生活費はアルバイトでまかなうことを条件に上京する。親の意向で医学部に進んだが、興味は持てず、大学では哲学書を読み漁った。出版社のアルバイトで知り合った別大学の先輩に影響を受け、学生運動に関わるようになる。大きな闘争で逮捕され、そのまま中退した。就職は出来ず、実家からは縁を切られ、学習塾の講師で生活をすることとなる。三十七歳のとき、自分の理想とす