毎日400字小説「美容液」
「この成分が入ってるのは、これだけなんです。毎日の習慣で十歳、若見えしますよ」
ドラッグストアの化粧品コーナー。いつもの乳液を買いに来たところ、ふと隣の商品に手を伸ばした千加は、すかさず声を掛けてきた店員の、十歳若見えという言葉を、頭の中、反芻した。十歳? てことはギリ二十代?
特に結婚願望もなく、仕事に邁進してきた。一人で生きていく将来を見据え、マンションの購入に至ったところだ。恋愛にうつつを抜かす暇があるのなら働きたい、そう思っていたのに、十歳若見えが、返しのついた釣