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多摩川とジムと鍵
どこのジムも休館日だった。でも筋トレしたい。やっているところを手当たり次第探してみたら、立川市の体育館がやっていた。小生はジム巡りが好きだ。矢継ぎ早に支度し、電車に乗り込み、30分ほどかかって体育館に到着。多摩モノレールを使ったので、電車賃はなかなかの出費。トレーニング室に入ると、若い小汚いギャルの従業員が話しかけてきた。
「あのぉ券をそこに入れてください。」
「いや見学にしただけなんだけど。」
「わかりました。でしたら券買ってから入ってください。」
なんだこの居丈高な女が。と心中で思いながらも、券売機で400円の券を購い、更衣室で着替えてトレーニング室に行き券を渡す。
「はい。券買ってきたよ。」
「わかりました!お客様、初めてのご利用ですか?」
「そうだけど...」
「でしたら、初回講習を受けていただきます。こちらの表をご覧ください。次回の講習は17時ですね。」
「はぁ...いま13時だけど。」
「あと4時間待ってもらえますか?」
「は?」
「初回講習のトレーナーが来るので、4時間待ってもらえますか?」
「めんどくさいね、何そのシステム。じゃあ返金してよ。」
「それはできません。お買い求めになられた券の返金はお受付けできませんので初回講習まで待ってもらえますか?」
銭ゲバにがめられた気分である。この業務的な対応がなんとも辛気臭い。
俺はクソアマの事も聞かずに更衣室のドアを蹴り飛ばし、がなり立てながら着替える。ここで妙案を思いついた。これは一種の反骨心に似たような気持ちである。それは更衣室の鍵を盗むことだ。ここまで電車賃から無駄な時間まで浪費されたからには何かやり返さないと腹の虫が治らない模様で、ぞんざいな手つきでロッカーに100円をぶちこみ、矢継ぎ早に7カ所の鍵を抜き取って、余った小銭は投げ銭感覚でシャワー室に投げ込んでやった。精神的乞食の与太者が拾うだろうなと北叟笑みながら、近くの自販機のゴミ箱に鍵をぶち込み、近くの居酒屋に入りビールをいっぱい頼む。まあ多摩川に投げてやっても良かったのだろうけど、ちょっと話題性を富むために、他人の目に見えるようなところに捨てた。小生は、癇癪玉が破裂したら、何をするかわからない性分なので、(過去には人を殺しかけたことも多々あった)現今に至って些か不安を抱いている。