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『13歳からのサッカーIQ』-第1章①-サッカーIQの正体。
J3のFC大阪でプレーしている下澤悠太です!
いきなりですが、あなたはこの質問にどう答えますか?
「サッカーIQって何ですか?」
最近、よく耳にするようになった『サッカーIQ』という言葉。
『サッカー選手の賢さ』を表す言葉として広まりつつあると思います。
しかし、実際は人によって解釈が異なっているほど、とても曖昧な概念として扱われています。
そのため、「そもそもサッカーIQってなに?」「このプレーは "賢い"って言われるけど、何がどう賢いの?」といった質問をされた時に、明確に答えられる人はそこまで多くはいないように思います。
そんな状況の中で日に日に増えるサッカーIQに関する情報。
当たり前ですが、そもそもの概念が曖昧ということは、どの情報が本質的に適切なのかを見極めることが難しいとも言えるはずです。
一番怖いのは「もっと成長したい!」と思っているサッカー少年・少女たちが、誤った情報に惑わされ、本質的にズレた解釈のままサッカーを続けて苦労してしまう、といったことが起こることなのではないでしょうか?
そんなことを考えていた中で、僕自身が『サッカーIQ』について深く考えてみよう思ったキッカケがあったので、自分なりに考察してみることにしました!
記事は以下の3章に分けて整理してみました!
第1章:サッカーIQの正体(この記事)
第2章:そもそもなぜサッカーIQが大切なのか
第3章:サッカーIQの具体的に身につけ方
あくまでも「自分はこのように整理した!」という内容なので、ぜひ一緒に考えてもらいたいです!
*[補足]:-序章-プロの世界で活躍し続ける選手は何が違うのか。
この記事を書こうと思った背景と問題提起を別の記事にまとめました!
ぜひこちらも!
プロになって5年。改めて思うのが、「プロになるまでも大変だったけど、プロになってから活躍し続けることはもっと大変。」ということ。
その中でも、メッシ選手のように世界のトップレベルで、単発的ではなく、継続的に活躍し続ける選手は一体何が違うのか?
そんな問いからこの記事を書こうと思い立ちました。……
-第1章-サッカーIQの正体。
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*『サッカーIQ』を構造的に整理することへの挑戦。
『サッカーIQとは一体何なのか』
この曖昧な概念を整理するにあたって、改めて色々な角度からサッカーを学び直してみました。
そして、自分が立てた仮説が、
『サッカーIQとは”戦略的思考”のことではないか?』というものです。
第1章①(この記事)では、この仮説を具体的な事例や解説を踏まえながら証明していきたいと思います。
話を進めるにあたって、まずは『戦略と戦術の違い』について整理してみます。
*戦略と戦術の違い
昨今、日本サッカー界では「戦術が大事だ!」と議論されている印象ですが、一方で『戦略』という言葉をあまり聞きません。
聞いたとしても、「クラブの経営戦略が…マーケティング戦略が…」といったことでしょうか。
みなさんは『戦略』と『戦術』の違いをご存知でしょうか?
森岡毅さんが書かれた『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』という本の内容を引用すると、以下のようになるそうです。
-戦略とは-
▶︎目的を達成するために資源(リソース)をどこに配分するかを選択すること
-戦術とは-
▶︎戦略を実行するための具体的な施策
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[補足]
・目的とは:達成したいこと。
例)『試合に勝つ』『ゴールを決める』『パスを通す』など。
・資源とは:試合中に利用可能なもの
例)体力や技術、時間やスペース、プレーの選択肢、人、ボールなど。
これだとちょっとなに言ってるか分からないかもしれないので、もっと簡単に言い換えてみると、
戦略とは、目的を達成するために何でもかんでもやろうとするのではなく、『何をするか(あるいは、何をしないか)を見極めること』と言えます。(戦略は目に見えづらい。)
そして、戦術とは戦略を実現するための具体的な手段となります。(戦術は目に見える。)
例えば『テスト勉強』で整理すると以下になります。
目的:テストで高得点を取りたい
戦略:重点的に勉強する分野を見極める
戦術:その分野の問題集を繰り返し解く
このように、目的を達成するために、自分の時間や労力といった資源を、何に対して重点的に使うか(あるいは、何に対しては使わないか)を決めることが戦略というわけですね。
一方で、特に何も考えずに手当たり次第に教科書やノートを1から読み込もうとすることは、戦略性のない(頑張っているけど、頑張り方が間違っている)勉強方法と言えます。
その結果、無駄に体力や時間(資源)を使ってしまい、気づけば一番勉強した方が良かった分野をほとんど勉強せずにテストに挑むことになってしまった、ということが起こるかもしれません。
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そして、サッカーもこれと同様のイメージです。
例えば『ゴールを決める』という目的を持った選手の事例で考えてみると、
目的:ゴールを決める
戦略:『いつどこから動き出すか(あるいは、いつどこからは動き出さないか)』などを見極める。
(例)『味方の顔が上がり、ボールを蹴れる状況になったら動き出す。(あるいは、味方がボールを蹴れない状況なら動き出さない。)』など。
戦術:(今の状況であれば、) 味方ボール保持者Aがボールが蹴れる状況になるまで我慢し、選手Aと目が合った瞬間に背後に走り出し、パスを要求する。
といった感じでしょうか?
一方で、特に何も考えずに、なんとなくボールを受けるためにピッチを縦横無尽に動き回ったり、味方がボールを蹴れないタイミングで動き出してオフサイドになるような、場当たり的な行動が多い選手はサッカーIQが低い(戦略的思考が低い)とよく言われると思います。
そして、上記の事例のように、戦略的に考える(戦略的思考)とは『目的➡︎戦略➡︎戦術』の順番で、大きいところから考えることなんだそうです。
これが今後の話の軸になってくるので、頭の片隅にでも入れておいてください!
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「最初に目的を明確にすることが何よりも重要。
戦略は目的達成のために存在するので、目的が変われば全ての戦略は(戦術も当然)やりなおしになります。
そして、戦術よりも先に戦略を明確にすることです。」
✔︎戦略的思考のイメージをつけよう!
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ここで『目的➡︎戦略➡︎戦術』の違いに慣れてもらうために、2つの問題を用意してみました!
以下の文章の①〜③が『目的』『戦略』『戦術』のどれに当てはまるかを考えてみてください!!
[問題1]
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[問題2]
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-改めての補足-
目的とは:達成したいこと
戦略とは:技術や体力といった資源をいつどこで発揮するかの見極め
戦術とは:戦略を実行する具体的な行動・手段
⬇︎⬇︎⬇︎
★正解★
[問題1]
目的:①
戦略:③
戦術:②
[問題2]
目的:③
戦略:①
戦術:②
正解できましたでしょうか??
このように整理してみると、日本サッカー界では戦略と戦術が混同して使われているように感じました。
(だから『戦略』という言葉をあまり聞かない?)
戦略と戦術は明確に違います。戦略レベルの話と戦術レベルの話は明確に区別しなければなりません。戦略によっては、その戦術は一切不必要になってしまうからです。先に戦略を決める。戦術はその後です。
もちろんサッカーの試合中では、展開が早くなるほど瞬間的な意思決定が求められるので、『目的➡︎戦略➡︎戦術』のプロセスに分けて考えながらプレーしているというよりは、ほとんど一体化した状態でプレーしていると思います。
しかし、うまくいっていないプレー(あるいは、局面だけ切り取るとうまくいっているように見えるプレー)を分析してみると、
多くの場合この流れに沿っていなかったり、流れに沿ってはいるけど設定している目的や戦略が本質からズレていることが多いように感じます。
例えば「なんのためにボールを受けるのか?」という目的がなく、「とりあえずボールを受けるために味方の方に近づいていく」という手段が目的になっているような状況でしょうか。
そして、この時によく起こるのが、『ボール周辺に人がたくさんいるけど、一番重要なゴール前に人がいない』『味方が使った方がいいスペースを潰していまう』といった現象だと思います。
これらは、本来の達成するべき目的に対して、必要のないところで資源を消費し、効果的なプレーになっていない戦略性の低い事例と言えると思います。
*補足:5W1Hと戦略的思考の関係性
ちなみに、ここ最近サッカーに関する発信の中で、
「”いつ”動くか」「”どこで”待つか」「”誰から”受けるか」「”何を”見るか」「”なぜ”縦パスを入れるのか」「”どのように”攻めるか」Etc…
といった『5W1H』のフレーズを頻繁に聞くようになってきましたが、これをあえて細かく分解すると、以下のように整理できると考えています。(詳しくは第3章で。)
・「なぜ」➡︎目的
・「いつ」「どこで」「誰が」「何を」➡︎戦略
・「どのように」➡︎戦術
今のゴールシーンをワンプレー毎に
— 中村憲剛 (@kengo19801031) July 2, 2021
区切って、
「いつ」「どこで」「誰を使って」
「何をするのか」
が全部正解だと、
ああいうプレーが可能になります。
ということで、一旦ここまでの内容を簡単にまとめてみました。
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ここまでの内容はまだ触りの部分なので、まだ何をいっているかわかりづらいかもしれませんが、この『戦略的思考』こそが、世間的に『サッカーIQ』と呼ばれるものの土台になっていると考えています。
そして、次の記事では、ここまでの内容を踏まえて、具体的なサッカーの事例を踏まえながら、サッカーIQと戦略的思考の関係性に迫っていきます。
-第1章②-『サッカーIQとは”戦略的思考”のことである。』に続く⬇︎