甘噛みハムハム
それは昼下がり、都内のとある喫茶店での話。
歴史を感じる少し厚めのテレビで流れていた通販番組で、『甘噛みハムハム』と呼ばれる商品が販売されていた。
僕は最初映像は見ていなかったので音声のみの情報番組だったのだが、音声だけでその商品を想像することは出来なかった。
甘噛みハムハム?
甘噛みしたくなる堅さの本格派ハム?
新しいエクササイズ?
話題沸騰中の動物の仕草?
きゃりーぱみゅぱみゅ的な新しい何か?
でも通販番組だしなぁ、、
『甘噛みハムハム』という耳馴染みのない8文字が脳内にひっきりなしに流れる。
具現化に気を取られていた間に、お店のおばちゃんがよくある半透明のピッチャーでコップにお冷を補充してくれていた。
僕は注ぎ終わって定位置に戻りかけた背中にお礼をする。
おばちゃんは振り向くことなく『は〜い』と返事した。
そう言えばここのお店はお冷に命をかけているのか、
というくらいに補充が早い。
おばちゃんのそれはじいじの瓶ビール手酌に匹敵するほどで(皆知らない)飲んだと同時にピッチャーを持ち上げ、一歩目を踏み出しているような感覚だ。(そこまでじゃない)
何が言いたいかと言うと、すごくいいお店だということ。
味はもちろん、人情というか目には見えない温かみが確実にあり、僕には食べログ以上の評価を感じさせた。
いや評価ってなんだ。
食べさせてもらっておいてなんと生意気な。
ごめんなさいおばちゃん。
、、、あ。いけない、本題をほったらかしていた。
ついに僕はテレビと対面し、
甘噛みハムハムをこの目でみた。
それは僕が思っていたよりも平和で、
思わず口角が上がってしまうようなものだった。
これが通販番組で売られるなんて、日本は嘘みたいに平和だ。この馴染みやすい喫茶店で僕はずいぶんと和んだ。
気になった人はぜひ『甘噛みハムハム』で検索してみて下さい。