諸説あるSaaSの「事業開発/Bizdev」という役割と、カミナシの事例
こんにちは!カミナシでCOOをしている河内です。
直近数ヶ月はマルチプロダクト化が進む中で新規事業の立ち上げやM&AでグループジョインをしたチームとAIプロダクトの取り組みを進めたりと、事業開発に関わる業務に奔走しています。
今回は、その中で考えた事業開発/Bizdevという役割をテーマに書きたいと思います。
「Bizdev」という職種の分類
Bizdevという職種は、企業やビジネスモデルによってその定義が大きく異なります。また、同じ企業内でも事業フェーズに応じて役割が変わるため、期待される内容が抽象的になりがちです。
今回は、難解なBizdevの役割を世の中に出ているジョブディスクリプションと私見をもとに、(かなり強引に)5つのタイプに分類してみました。
<Bizdevの5つのタイプ>
1.パートナーシップ型
M&Aや業務提携などの手段で、社外リソースを活かした成長を担う
2. 新規事業開発型
新規プロダクトや新しい機能の検証、立ち上げを担う
3. Bizゼネラリスト型
大企業のアカウントマネジメントやBizOpsなどを担う
4. 市場開拓セールス型
既存製品の新規市場の検証や開拓を担う
5. サービス企画型
事業側の役割を担いながら、プロダクトマネジャーと近しい役割を担う
これらの5つのタイプを、「非連続な成長 / 0→1」か「連続的な成長 / 10→100」、そして「ビジネス寄り」か「プロダクト寄り」の軸で4象限にマッピングしました。
一括りにBizdevといっても、期待される役割は様々であることが分かります。
SaaS企業でのBizdevの必要性
事業がまだ浅いフェーズでは、経営メンバーがこれらの業務を兼務していることがよくあります。
しかし、カミナシのようにマルチプロダクト化が進み、事業が複雑化すると、経営メンバーだけで全ての事業を推進するのは困難になります。そのため、専任のBizdevの役割が必要になってきます。
また、SaaS企業では分業化が進むにつれ、既存組織で「連続的な成長」と「非連続な成長」を両立して同時に進めることが難しくなります。特に、非連続な成長への投資が後回しになりやすいため、専任のBizdevがそのギャップを埋める重要な役割を果たします。
カミナシにおけるBizdev
カミナシにおける事業開発という活動は「社内外のリソースを活用して事業の成長曲線に変化をもたらすこと」と定義しています。具体的には、新規事業の0→10の立ち上げや、既存事業における新しい施策の実施によって、事業のTAM(総市場規模)を拡大する取り組みを行います。
この事業開発の活動は、あらゆる組織や職種が担う可能性がありますが、Bizdevはこの領域を専門的に担う役割です。特に、非連続な成長を目指した取り組みをリードすることが求められます。
カミナシのBizdevの主な役割
カミナシでは、マルチプロダクト化を積極的に進めており、この1年でプロダクトラインナップが1つから開発中のものも含めて5つへと大きく拡大しました。この背景から、カミナシのBizdevは特に「新規事業開発」を担うことが多くなっています。
Bizdevの役割は、事業フェーズに応じて変わっていきます。新規事業のフェーズが「0→1」から「1→10」に移る際、スキルセットや組織状況に応じて担当領域が広がることもあります。
軸足は「非連続な成長テーマ」におきながらも、事業フェーズや状況に応じて、担う役割がどんどん変遷していきます。役割に固執せずに環境の変化に柔軟に適応し、必要に応じて業務を移譲できるBizdevでなければ、事業の推進は難しいでしょう。
「新規事業開発」での役割
新規プロダクトを立ち上げる際、Bizdevは探索フェーズではプロダクトマネージャーと共に仮説検証を行い、実行フェーズではビジネスチームと協力して販売活動を推進します。
フェーズごとに協力体制を図で表すと以下のイメージです。
探索フェーズ - Discovery
プロダクトマネージャー(PM)と共に、プロダクトの仮説検証を行います。役割分担はプロダクトの特性やチームメンバーのスキルセットによって異なりますが、一般的には販売に近い活動はBizdevが担当し、プロダクトの仕様や要件に関してはPMがリードすることが多いです。
※PMとBizdevの役割分担については、estieさんとLayerXさんの記事が参考になります(貴重な情報をありがとうございます!)。
実行フェーズ - Go-To-Market
プロダクトリリース後は、セールス&マーケティングチームと連携し、初期販売の加速を担当します。
具体的には、初期ターゲットや価格設定を検討したり、サービスサイトや営業資料などのコンテンツ制作を行います。
こうして探索フェーズで得た顧客・プロダクト理解を活かし、販売が軌道に乗るまでの道筋を作ります。
販売が軌道に乗った後は、PMと再び協力して新機能の探索を行ったり、アライアンスなど外部リソースを活用して事業成長を促進するなど、必要に応じて柔軟にアクションを取ります。事業推進の過程で、こぼれ落ちる課題を拾いながら、引き続き成長をサポートします。
開発体制とBizdev
事業開発は、広義のプロダクトマネジメントの一環であり、これらの活動を連携させるために、Bizdevはプロダクトチームの一員として密に協力します。
特に、初期の立ち上げフェーズでは、Bizdevがビジネスプロセスを一人でカバーすることで、ステークホルダーを最小限に抑えた職能横断型チームを編成し、開発を進めることができます。これにより、意思決定をチーム内でスピード感を持って行うことができ、変化する環境にも柔軟に対応できるようになります。
一方、「エンジニア、デザイナー、PM、セールス、CS、マーケター、事業責任者…」といった多くのステークホルダーが関与する体制では、共通認識を揃えるだけでも多大なコストがかかります。不確実性の高いフェーズでは、実行に集中することが重要で、議論に費やす時間は極力減らすべきです。
そのため、立ち上げフェーズのチーム人数は少ない方が望ましく、担当者のスキル次第では、プロダクトマネジャーと事業開発を同一人物が兼任することもあって良いと思います。
Bizdevに求める人物像
ここまでBizdevという職種の役割について書いてきました。
最後にそんなBizdevにカミナシがどんな人物像を求めているかを書きます。
圧倒的なゼネラリストであること
Bizdevは1人で複数の職能を兼ねる必要があり、事業フェーズに応じて役割や対応が変化します。そのため、他職種と比べても非常に幅広い領域でのスキルが求められ、「ゼネラリスト」としての成長が不可欠です。
もちろん、最初からすべてを高いレベルで実行できる人はほとんどいません。しかし、特定の領域で強みを持ちながら、未知の領域に対しても好奇心を持ち、積極的に学ぶ姿勢が求められます。貪欲にキャッチアップする能力が重要です。
戦略から実行まで責任を持つこと
「戦略を考えるだけで、実行できないBizdev」では、仮説を自ら検証できないため、スピードが出ません。
自身で戦略の仮説を立て、泥臭く自ら手を動かして実行しきる。そして、その実行結果をもとに新たな仮説を立て、再び実行する。この繰り返しの中で、圧倒的な解像度を持ちながら、最短距離で事業成長の変化点を作り出すのがBizdevの役割です。
要点のまとめ
そのため、広い視野と高い視座で戦略を考える能力を持ちつつ、泥臭く実行し続けることを厭わない姿勢が重要です。
Bizdevの5つのタイプ
企業や事業フェーズによって、パートナーシップ型、新規事業開発型、Bizゼネラリスト型、市場開拓セールス型、サービス企画型の5タイプが存在カミナシにおける事業開発
社内外のリソースを活かし、事業の成長曲線に変化をもたらし、特に非連続な成長をリードする役割を担う新規事業開発での役割
PMと協力してプロダクトの仮説検証を行い、ビジネスチームと共に初期の販売活動を推進する開発体制とBizdev
プロダクトチームと協力し、職能横断かつ少人数のチームで開発を進めることで、スピード感と柔軟性を維持する役割の柔軟性
事業フェーズに応じて担当領域が変化するため、圧倒的なゼネラリストとして、戦略から実行まで責任を持つ
今回は以上です。
定期的にカミナシやSaaSスタートアップに関する発信をしているので、よろしければフォローしてください。
Twitter:@yusuke_kawauchi
最後まで読んでいただきありがとうございました!
カミナシでは「まるごと現場DX構想」を掲げ、マルチプロダクト化を進めており、私と一緒に新規事業開発をミッションに持つBizdevを積極的に採用しています。
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