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本棚の本だな!

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わたしが出版物や読書について書いたものを入れておくnote本棚なんだな!
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記事一覧

2024年に読んだ書籍から10冊を紹介(文庫・新書以外)

昨年末に書いた書籍紹介。たったの10冊だけだったけれど、1冊あたりの感想の簡潔さが奏功してか、わたしにしてはたくさんのスキをいただいている。 noteはテキスト主体だからか読書好きのユーザーが多いのには頷ける。書籍紹介のエントリをスクロールしてゆくと、次々と読書関係の記事が紹介されてくる。あらたな書籍との出会いもあって、たいへんありがたい。わたしのエントリも同じように他のどなたかの読書体験につながってくれていたら嬉しいことだ。 昨年末にざっと10冊ほど取りあげたとき、いつ

文庫・新書の独断的10選(2024年下半期)

便利なポシェットのおかげか、わたしは文庫本を読むことが増えた。このペースだと年末には思い出せなくなりそうな気がしたので、6月のおわりに今年上半期に読んだ10冊をピックアップした。 1年を上半期と下半期に分けて上半期になにかをしたら、下半期も同様にやるのはものの道理である。あっという間に陽が短くなり、1年の終わりに近づいてきた。上半期と同様に半年分を簡単にまとめておくことにする。 わたしが選んだ下半期の10冊は以下のとおり。リンクはいつもどおりAmazonアソシエイト。最近

秋のひな祭、それは一葉祭ぞかし

「ひなっちゃんにゾッコンなのですよ」 これはわたしが友人と交わした会話での発言で、この“ひなっちゃん”とは明治時代を生きたある小説家のことだ。それは前の五千円札の顔だった樋口一葉その人で、本名が夏子(戸籍名は奈津)なので「なっちゃん」。親友だった伊東夏子と区別するため、それぞれ「ひなっちゃん」「いなっちゃん」と呼びあっていたという。 そういうわけで、冒頭の会話のとおりわたしはひなっちゃん即ち樋口一葉の文章が大好きで、これはそのうちnoteにも書いておきたいと思っていた。

秋の神保町。増える積ン読。今や、金策なし。

秋の読書週間は10月27日から。それに合わせるように、その前日から開催された神保町ブックフェスティバル。昨年、一昨年と同様にわたしは今年も“世界一の本の街”神田神保町に足をはこんだ。 今年はある明確な目的があって午前10時の開始時間にあわせて行った。その10時よりも早いタイミングであっても、すずらん通りはすでに黒山の人集り。 毎年のことながら、これだけ本好きさんたちがいるのだから日本の出版業界はまだまだ安泰なのではないかなんて思えてくる。しかし、そもそもこのブックフェステ

人生の秋、半世紀は反省機?

五十而知天命。「五十にして天命を知る」と訓読する。 これは孔子の言行録『論語』より、人生を振り返って節目の年のことを語った一節の一部だ。孔子は50歳で自分の天命を悟ったらしい。天命とは、天より与えられた使命。同じ一節に「四十而不惑(四十にして惑わず)」とあるから、40歳までに試行錯誤して、40代はひたすら研鑽に励んで達した境地なのだろう。 最近、ある学術団体の50周年記念の出版物に寄稿した。わたしはまだ所属して10年にもならない新参者だ。にもかかわらず、学会50周年を孔子

パン好き書店好きの憂鬱

先月、10日ほど日本を離れていて、その間に行きつけの近所のベーカリーが閉店していた。どうしたことかそれは本当に唐突で、すぐには気づけなかった。狐につままれたような不思議な感覚だ。 帰国後にいつもどおりそのベーカリー(と同じ場所にあった店)でパンを買ったのだけど、どうも様子がちがう。買って帰ったバゲットを切ってはじめて、その違いに気がついた。グルテン膜、あのおいしい穴(※)がない!実際、その味はかつてのものとは雲泥の差。そして思い返せば、店内の配置が以前とは違っていたし、レジ

たゆたえども沈まず?パリ五輪の国旗解説

直前に予告したオリンピックのパリ大会開会式での国旗解説。日本時間では深夜〜早朝だったにもかかわらず、常時10名前後の視聴者がアクセスしていてくださったようで、ありがたい限り。 今回は東京大会の時のようにずっと前から準備していたわけではなく、日本旗章学協会の先月の会合で話が出て急に決まった。みな忙しいなか、なんとか形にできたのは前回の経験があったことが大きい。 タイミングの悪いことに、わたしは別で締め切りのある仕事に追われていたのでほとんど準備に時間が割けなかった。国の割り

文庫・新書の独断的10選(2024年上半期)

昨年末に1年間の読書を振り返って10冊を選んでいたけれど、後でやっぱりあれも入れとけば良かった、こっちよりもこっちだったかな、なんて因循に考えることもあった。 その後、このnoteで取り上げられていた本を買いましたなんて話を個人的に聞くこともあって、やはりもうちょっと本の紹介をしておいても良かったかなと思ったりしている。 何度か書いているように、わたしには乱読癖があって、ひとつの本をじっくりいっぺんに読破するということがあまりなく、だいたい同時進行で何冊も読んでいる。だか

乱読本棚が先週特にスキを集めてくれたらしい。

ウワサには聞いていた「先週特にスキを集めた」通知が、とうとうわたしのところにもやって来た。 激しい雨が上がって青空が戻ってきた月曜午後の東京。休憩がてらスマホを手にとったその時、この通知が届いた。文字どおり青天の霹靂だななんて、またつまらないことを考えながら、記念のスクリーンショットを保存した。 フォロワー数の少ない拙アカウントでは、こうした通知はまったく縁のないことだと思っていた。昨年12月に「今週の注目記事」に選ばれた時ですら該当しなかったというのに、これはどうしたこ

本棚からその持ち主の頭の中がわかるって?

わたしの読書習慣は乱読である。大半はいわゆる速読で、速読したあとに気になった本を読みなおすことが多い。それも飛ばし飛ばしだったり、途中でほかの本に移ってみたりと、一般に読書とされる行為の範疇に入れてもよいものか甚だあやしい。小説や詩では一語一語をていねいに読むことが多いのだけれど、わたしの読む本のなかでは小説は少数派だ。 我が家のリビングには、いつの間にか本棚化した棚があって、そんな乱読している書籍がざっくりとした分類のもと、著者や分野がなんとなくかためて置かれている。それ

世界はさまざまなストーリーでできている。ポール・オースターさんありがとう。

訃報はいつも突然やってくる。米国の作家、ポール・オースター氏が亡くなった。77歳。肺ガンを患っていたらしい。まだ新作が読めると信じていたから、この訃報はとてもショックだ。 ちょっと前にブッカー賞のノミネートだかにも名前があがっていたと思ったけど、それももう7年前だったようだ。時の流れの速さを実感する。そうか、7年ともなれば病気にもなるか。オースター氏に年齢の近いわたしの父もいろいろと病気を患っていることにもふと思いをめぐらせた。 ◆ わたしがポール・オースターを知ったの

天下を取った成瀬あかり

今年の本屋大賞は『成瀬は天下を取りにいく』。いやはやこんな形で天下を取るとは!いかにも成瀬らしい展開ではないか。 いつもはあまり発信しない高校時代の旧友が何名もソーシャルメディアで触れていたのを見た。 ローカル色の強い小説だからか、なおのこと母校や実家まわりで盛りあがっているに違いない、と思ったり。これを機に西武百貨店が大津に再進出を検討してくれまいか、なんて妄想してしまった。 せっかくだから、わたしが昨夏に書いていた読書感想文を引っ張ってこよう。もしよければ読んでね!

今年読んだ書籍からのトップ10

昨日、今年の振り返りとしてやっぱり書いておきたくなって映画について書いた。 もうひとつ。本についても書きたかったのだけど、読んだ本が多すぎて、しかも乱読ゆえに記憶が交錯していて、まとめるには時間もなくて・・・、これらはそれらしく聞こえる言い訳なのだけれど、ようするに「#今年のベスト本」のnoteを書くのは断念していた。 この年末年始は帰省しないことにしたので、通常の買い物など以外は引きこもっている。たとえ仕事は休みにはいっていてもなにかと気忙しいのが年末で、家事やら買い物

本の街を歩いたあとの月夜、蛇紋石の杯に葡萄酒を注ぐ。

秋の読書週間にあわせて始まった神田古本まつり。そして連動して開催される神保町ブックフェスティバル。昨年同様、半日だけだったけれど足を運んだ。天候に恵まれて気分が良いので秋葉原から散歩を兼ねて歩いて行った。意外と近かった。 今回はブックフェスティバルをメインにして書くつもりではなく、その前日に中国出身の同僚からもらった中国のお土産について。 ◆ それは深いグリーンの小さなコップ。日本で言うお猪口に相当するか。暗いグリーンに黒い縞模様が見える。その材料は石。マントル物質の変