伊福部昭の音楽の持つ意味の大きさを改めて伝えた『クラシックの迷宮』の特集「ゴジラ70年 PART 1」

本日のNHK FMの『クラシックの迷宮』は、1954年11月3日(水)に映画『ゴジラ』が封切られてから今年で70周年を迎えることを記念し「ゴジラ70年 PART 1」と題して放送されました。

今回は『ゴジラ』の音楽を担当した伊福部昭の手掛けた総譜を復刻、補綴し、2016年5月1日(日)に和田薫の指揮で日本センチュリー交響楽団が録音した音源が利用され、映画の筋立てを司会の片山杜秀先生が紹介しつつ、各曲が紹介されました。

放送の中で片山先生が指摘したように、和田は東京音楽大学で伊福部に師事し、2014年7月13日(日)には東京オペラシティ・コンサートホールで行われた第4回伊福部昭音楽祭において映画『ゴジラ』を上映しながら音楽のみ会場で演奏した公演も指揮するなど、『ゴジラ』の音楽の演奏にかけては当代随一の知見を持ちます。

そのような演奏と、未知の生命体が水爆実験により太古の眠りから目覚め、口から高熱放射線を放出しながら東京湾に上陸し、都心を蹂躙した後に海中へ去るものの、最後は芹沢博士が開発したオキシジェン・デストロイヤーによって破壊されるという物語の展開を、1954年3月に米国がビキニ環礁で水爆の実験を行い第五福竜丸が遭難した一件に着想を得た経緯や、戦後の復興期を迎えた当時の日本の人々にとって戦争の災禍を思い起こさせる巨大なゴジラの持つ意味などを丹念に検討する様子は、この番組ならではのものでした。

実際、冒頭で「『ゴジラ』は1954年、昭和で申しますと29年に」と説明したことは、封切当時の観客にとって圧倒的な破壊力を持つゴジラが戦争の記憶を蘇えらせる存在であった点を間接的に強調していました。

また、音源の選択について、オリジナル・マスターテープによるサウンドトラックや2014年の公演の録音ではなく、2016年の日本センチュリー響版を使用した経緯を解説したことは、『ゴジラ』という作品そのものだけでなく伊福部昭の音楽に対する人々の興味と関心の高さを示すものであったと言えるでしょう。

何より、物語の筋を説明する片山先生の愉快そうな語り口は、長年にわたり伊福部昭に取材し、『大楽必易』(新潮 2024年)で『ゴジラ』への音楽を含む伊福部の軌跡を克明に描き出した実績と自信に裏打ちされたものでした。

広く知られた作曲家から忘れ去られた人物まで、交響曲や歌劇からブリッジ音楽や歌謡曲に至るまで多種多様な話題を取り上げ、「クラシック音楽」の領域と可能性を広げている『クラシックの迷宮』の中でも、ひときわ片山先生らしさが表れていたのが今回の特集です。

それだけに、"PART 2"、さらにはそれ以降の特集でどのような『ゴジラ』とその音楽が描き出されるか、今後の放送が大いに期待されます。

<Executive Summary>
The Featured Programme of the "Labyrinth of Classical Music" Demonstrates the Deep Impact of Akira Ifukube's Music for "GODZILLA" (Yusuke Suzumura)

The NHK FM's programme "Labyrinth of Classical Music" featured gamelan named "The 70th Anniversary of GODZILLA PART 1" on 2nd November 2024. It was a remarkable opportunity for us to understand the deep impact of music for the movie composed by Akira Ifukube for us.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?