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908回目:【勉強】シンギュラリティ〜技術的特異点とは〜

2024年03月06日の備忘録

「オートメーション」「自動運転」「AI」「生成AI」「DX」と、人間は今自ら人間にとって変わるテクノロジーを、人間自ら作り出している。第三次AIブームと呼ばれる昨今、さまざまな分野で積極的にAI(人工知能)が活用され、2023年にリリースされた「ChatGPT」は、世界に衝撃を与えた。日本では少子高齢化に伴う人手不足が深刻化しているが、AIを活用すれば業務効率化を図りやすくなるため、AIが多くの企業で注目されている。

ただ、AIの技術が進歩する反面、「人類の知能を超えることで雇用がなくなってしまうのではないか」といった心配も増している。今回は、シンギュラリティ、つまり技術的特異点(AIが人間よりも賢い知能を生み出す時点)について考えたいと思う。

【1】シンギュラリティ(技術的特異点)とは?

技術的特異点(ぎじゅつてきとくいてん、英: technological singularity)とは、科学技術の急速な進歩によって、人間の生活が決定的に変化する未来の時点を指す言葉。具体的には、人工知能(AI)が人間の知能を超え、自律的に進化し始める状態で、人間と人工知能の臨界点を指す言葉。つまり、人間の脳と同レベルのAIが誕生する時点を表している。

【2】技術的特異点の概念

シンギュラリティの提唱者、米国の発明家レイ・カーツワイル博士は著書「The Singularity Is Near(シンギュラリティは近い)」においてシンギュラリティへの到達を2045年と予想している。イギリスの物理学者、スティーブンホーキング氏も「完全な人工知能の開発は、人類の終焉を意味するかもしれない」と、シンギュラリティの到来に危機感を示した。ソフトバンクグループの創業者の孫正義氏も、シンギュラリティは人類史上最大の革命「ビッグバン」であると指摘し、シンギュラリティによりすべての産業が再定義されると主張している。

技術的特異点の到来は、以下のような影響をもたらすと考えられている。

  • 人工知能が人間の知能を超え、自律的に進化し始め、人間と人工知能の境界線が曖昧になり、新たな生命形態が誕生する。

  • 人間の雇用が激減する。

  • 人間の寿命が伸びる。

  • 現在の経済・社会システムが崩壊し、新たな社会秩序が形成される。

  • 技術的特異点に対する議論

技術的特異点の到来は、多くの議論を呼んでいる。楽観的な見方としては、技術的特異点は人類にとって大きな飛躍の機会であり、技術の進歩によって多くの問題が解決されると考えられてる。例えば、医療技術の発展により寿命が延び、病気や貧困がなくなる可能性がある。悲観的な見方としては、技術的特異点は人類の滅亡につながる可能性があり、AIが人間を支配したり、人間がAIに依存しすぎて社会が崩壊したりすると考えられている。

【3】シンギュラリティは本当に起きるのか?

シンギュラリティは未来の出来事であり、実際に起きるかどうかは誰にもわからない。しかし、技術革新が加速していることは事実であり、技術的特異点の可能性を真剣に考えることは重要だ。シンギュラリティが2045年に到来する根拠として、二つの観点から読み解こうと思う。

【3-1】ムーアの法則

ムーアの法則は、「集積回路に用いられるトランジスタの数が18ヶ月ごとに2倍に増える」という法則のこと。インテルの創業者ゴードン・ムーア氏が提唱した指標であり、もともとは大規模集積回路を生産するときの長期傾向指標について表すものだった。一般的な公式は「p=2n/1.5」というもので、「n」は年、「p」はn年後のトランジスタ倍率。そのため、18ヶ月で2倍となり、3年では4倍、15年では1024倍の容量のメモリチップが登場するということになる。

このムーアの法則に従って行くと、2023年1月に発売されるスマートフォンと、2024年9月に発売されるスマートフォンは、約2倍の処理が可能になっているという経験則。このペースが保たれると、2045年を目処に人工知能が人間の脳に到達するらしい。

【3-2】収穫加速の法則

収穫加速の法則とは、「技術進歩において性能は直線的に向上するわけではなく、指数関数的に向上していく」という法則。新しい技術が発明されると、複数の技術が次の発明に利用されることになるため、技術革新までの間隔が短くなっていくことを意味する。

【4】シンギュラリティが及ぼす影響

シンギュラリティが起きた場合、テクノロジーのレベルがこれまで以上に上昇していくため、より多くの業務において「自動化」が実現されることが予想される。そのため、労働による負担が大幅に軽減されることになる。近年は、働き方改革によって過重労働や過労死について見直され始めているが、場合によっては「人間の労働力を一切必要としない」というケースも出てくる可能性がある。人の手によって行われていた業務がすべてAIに置き換えられ、人間の仕事が失われてしまう可能性もある。とはいえ、すべての業務がAIに置き換えられるわけではない。たとえば人間の想像力や独創性が求められる職業は、AIに奪われないかもしれない。

さらに、シンギュラリティが起きた場合、社会制度にも変化が生まれる可能性がある。シンギュラリティによってAIに仕事を奪われる人が増加した場合、これまで以上に貧困格差が広がっていく。そのため、最低限の所得を保障するベーシックインカム制度が導入される可能性がある。ただ、ベーシックインカム制度を導入した場合、労働しなくても一定のお金を得られるようになるため、労働に対するやる気が無くなってしまう可能性もある。

【5】AIができないスキル

我々人間がこれからやらなければならないこと。それは、AIが出来ない人間らしいバリューを常に意識することだ。私が思いつく限りの、人間らしいスキルを列挙する。私は近年、特にインドに来てから、この考え方に沿って、ずっと仕事をしているつもりだ。私達の脅威は、優秀な人間ではない。私達の対戦相手はAIだ。

【5-1】リーダーシップ

AIは、私たち人間のように「心」を持っていない。そのため、業務の効率化、自動化を図ることはできても、人間と協力しながら新しいものを創造していくことはできない。ビジネスでは、組織をまとめるためのリーダーシップが欠かせない。このような力を発揮できる「対人ビジネススキル」は、シンギュラリティが到来しても重宝される。

【5-2】常になぜを考えること

AIは情報の集積によって導き出される答え。ただ、その答えを疑うことはAIは出来ない。つまり、一つの答えに対し、それ自体を疑う事。その論理的思考法は、今後人間が高めなければならない要素の一つと考える。

「なぜから始める (Start with Why) 」は、サイモン・シネック氏が提唱したリーダーシップと行動の理論。その根幹は、人は「何を」や「どのように」よりも、「なぜ」を理解することで行動を起こすという考え方。優れたリーダーは、常に「なぜ」から考え、なぜを部下に伝える事で、部下の行動を促す。優れたリーダーは、自分たちの組織や製品が何を提供しているかだけでなく、なぜそれを提供しているのかを明確に理解している。そして、その「なぜ」を人々に伝え、共感を得ることで、行動を促す。このスキルは、AIには到達できない人間のスキル。

【5-3】肌感覚を養うこと

AIは、この世に溢れる情報の集積で答えが導かれる。しかし、人間に養われる「肌感覚」は、AIには養えない。肌感覚とは、「個々の人間の経験則」によって養われる第六感。つまり、人と違う経験、新しい経験、現場の経験、そこから感じた、言葉で表しにくいリアルな感覚。この肌感覚は、AIには蓄積できない。そして、これは、人間のみが持つ創造性を養うことにもつながると思う。

【5-4】臨場感を伝えるスキル

自分が養った経験、人と違う経験、インターネットに載っていない経験、これらを人に臨場感を持って伝える技術は、AIには養えないと思う。だから、レアな経験や人がやらなそうなことをやって、それを臨場感を持って伝えるスキルは恐らく重宝される。

【5-5】人間の話を聞くスキル

AIは、人の心を加味せずに、感情のかけらもなく答えを出す。例えば、医者が患者と対峙した時に、将来的にはAIが病気を特定する可能性がある。しかし、患者さんが病院に来ているのは、本当にただ病気を特定するためだけに来ているのだろうか?否、医者に助けを求めに来ているに決まっている。そんな中、患者の話もよく聞かず、AIが突如「ガン・ステージ4」と、感情もなく答えを出したら、その患者のメンタルはどうなるだろう?つまり、患者が心の底で求めている本当の気持ちを汲み取れるのは、人間しかいない。つまり、人の話を聞く力は、人間しか出来ない能力となる。

【6】最後に

私は、AIが席巻する世界を、脅威に感じながらも、楽しみにしている自分がいる。故に、そのAIが作る世界の中で、自分の価値を上げるための準備を常に続ける必要がある。20年後、シンギュラリティが到来した社会の中で、どこまで自分の人間としてのバリューを保てるか。その先を見た準備をし続けたいと思う。

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