『地球はレモンのように青い』を観た(2020/7/25)
『地球はレモンのように青い』
とても奇をてらったタイトルのように感じる。
何故レモンが青色なのか。黄色ではなかろうか。
連想ゲームなんだろうか。
自分の感覚だとそうなってしまう。
そんな事を考えていたら、ふと昔テレビで見たことを思い出した。
国によって色から受け取る感覚や色のとらえ方が違うという話。
太陽の色は赤ではなく白や黄色だったり、卵の白身を青身という地域があるとか。
日常の中で大切にしている基準の色が違うことで生じる差異らしい。
だからどこかの国では、レモンは青なのかもしれない。
この展覧会は"両義性"というテーマで構成されており、作者の廣瀬智央さんは世界の多様性や複雑性を意識しているらしいので、この解釈は間違いでは無いのかも知れない。
そんなレモンに思いを馳せながら会場に入ると、チケット確認のテーブルにちょこんとレモン。進んでいくと足元にレモン。
これからめくるめくレモン世界が広がっているんだろう。
そして階段を降りると、透明な柱の中に埋め込まれている鮮やかな粒。
よくよく見ると豆。
レモンではなく豆の洗礼。
宇宙の星々の様な豆。不意打ちに美しい豆との遭遇だ。
そして足元には器に乗せられた泥団子、箱に収められた小さな惑星、地図を丸めてできた惑星、世界の紙幣を折って作った家、禍時のような藍色の写真。
レモン以外の要素が結構多かった。
そして大きい作品もあるのだけれど、基本は掌に収まるサイズの作品や、小さなものの集合体。
小さなものだけれど何だか一つ一つ生命力に溢れている。映画『星になった少年』のテーマソングでも流れてきそうな雰囲気。
はっきりとしたレモンの展示である『レモンプロジェクト 03』は、会場中央部にあった。
大量のレモンと、レモンの上を歩くために設置された透明な板。
時間が経過して橙色になりつつあるレモン。腐りかけているものもある。
もしかしたらレモンのように青いとは、カビの生えたレモンの事を指していたのだろうかと思ってしまう。
展覧会初日には逆に若くて青いレモンがあったのだろうか。それとも最初は黄色だったのだろうか。
同じ展覧会でも観に来たタイミングで新鮮さを感じるものと劣化を感じるものと、受け取る印象が違うものになるという事も内包した展示なのだろうか。
しかし、レモンの量よりもレモンの爽やかな香りの方が鮮烈に記憶に残る。
レモンって、素の状態でこんなに強い香りを放つものだっただろうか。アロマを焚いているんだろうか。
香りを忘れられない展覧会は初めてかもしれない。
個人的に芸術とは、日常に溢れる常識と思い込んでいる感覚を一度リセットさせて、別の角度からの視点を教えてくれる役割もあると思っているのだけれど、この展覧会では改めて、人それぞれ受け取る感覚は違っているという事を思い出させてくれた。
期間:2020/5/22~7/26
場所:アーツ前橋 地下ギャラリー
料金:一般500円
※写真撮影可