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Jリーグ 観戦記|豊田の夜|2022年J1第24節 名古屋 vs 浦和

 身体に伝わる揺れを名鉄の扉に預けた。伏見から豊田への旅路。名古屋と浦和。二種の赤が混ざり合う車内。人々は互いの身に触れるか触れないかの微妙な間隔を空け、豊田スタジアムへと向かう時間を貪った。

 赤き群れは一直線にスタジアムへと伸びる。奇才として名高い黒川紀章が世に残した名作の前に、曲線が空へと美しく伸びる豊田大橋が人々を出迎える。温和な高揚感がその場を支配しながらも、屹立するコンクリートの壁面はその存在感を失わない。壁面と壁面の間から場内の熱気が漏れる。戦いの舞台へと視線を誘う、魅惑の傾斜。息を弾ませ、汗を絞りながら、階段を上へ上へと踏んだ。日本においてそれは唯一無二と言っても差し支えない。また一つ、僕のスタジアム史にページが加わった。

 音量を競い合うように、ゴール裏にそびえる二つのスタンドが太鼓と拍手をとどろかせる。その音。そのリズム。それらが空気を伝わり、体内へと流れ込む。眼下に広がるピッチと、その上で戦う選手たち。この傾斜により、粒子がうごめき合うような攻防戦はさらに迫力を増す。3−2−5。その間隙を突こうとする、浦和のビルドアップ。勝負に対する目線を変えるかのように、時にロングボールが右から左、左から右へと宙を舞う。勝負の天秤は激しく揺れ続けた。

 試合は突如変化した。往々にしてそうであるように。26分。マテウスがコーナーフラッグ付近でボールを持つ。明本を前にして、その佇まいは余裕を感じさせる。身体を左右に振る。ボールは明本の股の下を通り、ニアスペースに位置を取る永井の足元へ。反転。永井も知念の股の下を通し、重廣が右足でボールをゴールへと流し込んだ。優雅。熱気が充満する試合に流れ込んだ、束の間の涼風。その対比は鮮やかであり、残酷な転換点と言えた。

 名古屋は合理的だ。それは名古屋を率いる、長谷川健太の真髄なのかもしれない。前進と後退。その動きから、集団として意思決定をする際の基準が存在するように感じられた。確固たる規律により、浦和を最後まで苦しめる、粘着性の高い守備が実践された。

 その守備の攻略を目指し、浦和は小泉を投入する。軽やかな身のこなしと確かな技術。等々力陸上競技場で舞い踊る、彼の勇姿が忘れられない。しかし、敵の分厚い守備は小泉の手足に絡みつくように、中盤で自由を奪い続けた。

 浦和のミスは結果に影響を与えた。しかし、そのミスを生んだ要因に明確な正解はないからこそ、この競技は興味深い。名古屋の合理性は印象深く、その動きは浦和のミスを誘発したのかもしれない。しかし、ボールを持ち、そのボールを前へと運べる選手たちが放った輝きもまた忘れられない。世界中のどこにいても、その価値が損なわれることはない。浦和の左サイドを幾度も脅かしたマテウス。右サイドを駆けた相馬。最前線で攻守を司った永井。勝因は一つではないが、それらの選手たちが躍動する姿は勝利を手繰り寄せるに値した。

 闇夜に浮かぶ豊田スタジアムに赤い光が差す。汗を肌に浮かべ、名古屋市内へと名鉄は走る。静けさとともに、仕事や花火大会の疲れの色が車内に漂っていた。非日常の中に僕はいる。刺激を含んだ疲労感は足取りを軽くさせる。

名古屋 3-0 浦和

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