書評 #101|ユーチューバー
村上龍の文体に触れた。何年ぶりだろう。最後に読んだのは『オールド・テロリスト』だった気がする。それらの表現が適しているかわからないが、挑戦的であり、野心的であり、男性的。五感が鋭利になるような感覚が忘れられない。
『ユーチューバー』は作者の化身である、矢﨑健介の女性にまつわる回想録だ。どこまでも本能的な生き方が印象に残る。「用事のない生き方」という表現も同様だ。群れず、迎合しない。その生き方には責任が伴い、周囲の反発や抵抗も想像できるが、荒波の中を突き進むような、その姿勢こそが村上龍ではないだろうか。
小説を書く理由は怒りと喪失感であるとも説く。作者の本能について言及したが、村上龍を表す言葉として「生命力」は切っても切り離せない気がする。創造と破壊の間で揺れ動き続ける、圧倒的な生きる力。そのエネルギーが文章に乗り移る。数々の作品に触れてきたが、過去を振り返り、そんな思いが体内を駆け抜ける。