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勢いそのまま、ついに日本が同点に追いつく。33分、香川が下がって昌子からボールを受ける。相手の意識を引き寄せる。セネガルが引いて構えようとしたところ、柴崎からまたも意表を突いたロングパスが放たれる。長友の飛び出しについていけないサールとワゲ。日本を序盤に苦しめていたコンビだ。長友のトラップが内側へと流れる。フリーの乾が瞬時にシュート体勢へと入る。振りは小さく的確に。そのボールにK.エンディアイェは左手を目一杯に伸ばすが、触れることができない。狙い澄ました一撃は燃え上がる炎の
強い日差しに照らされたカイザースラウテルン。歓喜に沸く、サッカルーズ。そして、悲嘆を映す青き侍たち。明るい世界の中で、黄と青の対比は鮮やかであり、激しい悔恨を僕の内に残した。忘れられぬ傷。その傷を癒す旅は二〇〇六年から始まった。 二〇〇七年と二〇一一年のアジアカップで勝利した。しかし、内なる感情が浄化されることはなかった。ワールドカップの舞台で生まれた傷。それは、ワールドカップでしか癒すことはできない。最終予選で繰り返される接戦。二〇〇九年のメルボルンでは敗れ、舞台を横
空気が「膨張」している。六万人の静寂。十二万の眼は本田圭佑へと注がれる。 いくばくかの運も味方し、オーストラリアは敵地で先制した。近くに座っていたオーストラリアのサポーターが一人立ち上がる。漆黒の夜空。照明を受けて輝く芝生。青い海の中から突如姿を現した黄色の男と雄叫び。その光景は一枚絵として脳裏に焼きついている。 空気が焦りを醸す。時計の針が止まることはない。焦燥感が身体を支配していく。ワールドカップは鼻先にあった。しかし、眼前に靄が立ち込める。 鈍い痛みを感じ
“KING OF ASIA”のバナーが踊る。アジアの王として臨む、ワールドカップ最終予選。大陸を席巻した煌びやかな攻撃。その攻撃は本田圭佑や香川真司といった名手たちによって彩られる。その華やかさは緊張という名の冷水によって引き締められ、高揚感が埼玉スタジアム2002を包んでいた。 すべての動作が流れるようでありながら、同時に止まっているように見えた。優雅な舞を連想させる、軽やかな余韻。今野から前田へ。前田から香川に落としてリターン。スペースへと駆け出す長友を追うようにボ
「世界の壁」「惜敗」 見慣れた言葉が頭に浮かんだ 日本代表にとっての大舞台は糸を張ったような緊張感に包まれていた 57分、ヴィルモッツが巨体を宙に預け、舞い降りてくるボールを真上から振り抜く 揺れるネットに呼応するように、身体中に苦味が広がっていく ゴールの残像が残る中、辛い展開となることを覚悟して再び画面に眼を向けた 劣勢に立つ日本からは連想できないほど優雅なボールが小野の右足から放たれる 自陣奥深くからのロングボール 緩やかな放物線からは得点の匂いは感じら