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生き返る希望

 勢いそのまま、ついに日本が同点に追いつく。33分、香川が下がって昌子からボールを受ける。相手の意識を引き寄せる。セネガルが引いて構えようとしたところ、柴崎からまたも意表を突いたロングパスが放たれる。長友の飛び出しについていけないサールとワゲ。日本を序盤に苦しめていたコンビだ。長友のトラップが内側へと流れる。フリーの乾が瞬時にシュート体勢へと入る。振りは小さく的確に。そのボールにK.エンディアイェは左手を目一杯に伸ばすが、触れることができない。狙い澄ました一撃は燃え上がる炎のようにサイドネットを高らかと揺らす。

 一斉に飛び上がる日本のサポーター。視界が揺れる。怒号のような歓声が巻き起こる。ウカスカジーの『勝利の笑みを君と』が場内に大音量で流れる。一カ月前の横浜では試合後に虚しく流れたこの曲は熱狂にさらなる油を注ぐ。大柄なセネガルの守備陣の隙間に乾が見え、その隙間を縫うようにゴールへと流れ込むボールはたゆたうシルクのように美しかった。この瞬間に立ち会えただけでも、僕はロシアにきた甲斐があったと思う。この一撃で試合は振り出しに戻った。いや、僕はこの試合は11分で死んだと思っていた。望みはつながった。この試合をまだまだ楽しめる。日本が相手を押し込んで同点ゴールを奪う。僕はそんな姿を想像していなかった。日本は僕が思っていた以上に歯応えのあるチームだった。

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