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【独り身レズビアン放浪記】お金が稼げないっ!

そろそろ本当に恋活も再開しようかとレズビアンイベントの情報サイトなどつらつら見ていましたら、こんなイベントを見つけました。

文筆家の牧村朝子さんが主催している「自立したかっこいい女でありたい人」のための異業種交流会でした。

何しろ私ったら、知力も胆力もあるのに経済力だけは本当に才能がない。(体力もあんまりないけど)
これまでの人生、お金を稼ぐことだけは上手くいったためしがないので、実は恋よりもっと切実に、金の稼げる仕事を求めておるのです。
「まずは恋活より生活じゃ!」と、ギアを切り替えこちらに行ってみることにしました。

意識高い系の人たちが集まってたらコワイかも…?と思ったけれど、蓋を開けたら恋活系のイベントより馴染みやすく交流しやすくて、いろんな人と話せる場でした。

身につまされたのは、みんな、やりたいことやスキルや夢を持っていたりするのに、それでお金を稼ぐチャンスだけはなかなか見つけられないという共通の現状…。
私たちみんな同じだね!という謎の一体感が生まれる現場…。
そう、本当に生きていくのが難しい世の中だよね…。

なんか、こういう人たちが沢山いるのをどうにか生かす方法ってないんですかね〜。
みんなで力を合わせたらなんかできるんじゃないのか。
YouTuber?クラウドファウンディング?フリマアプリ?
何が現実にできるかわからないけれど、今にも動きだしたい衝動と、どうしたらいいかわからないもどかしさと、何かできるんじゃないかという希望を同時に感じる場でありました。

ロマンス小説が書けなかった話

そういえば「お金を稼ぐのうまくいかない」話の一つとして、最近ものすごく自分自身を思い知らされる機会がありまして。

ここしばらく私は、「なんとか書くことで生計を立てていきたい」という思いから、いわゆるティーンズラブ小説(=TL)に挑戦しようとしていたのです。
すなわち女性向けの、男女の恋愛をテーマにした、エッチシーンのある小説ですね。
何しろ需要が本当に多いらしいと聞いたもので。

それまであまり読んだこともなかったので、現在発行されているTL小説数本を読んでみたりもしつつ、設定を考え、プロットを作り、いざ書こうとなったその時。なぜかまったく筆が動きません。
がんばって書こうとしてみても、書くというスイッチが入らず体が動かないような状態。

数日ねばってみましたが、「これがBLや百合、もしくは文芸作品ならすぐに書き出せる」という事実に気づき、やっぱり向いていなかったのだとあきらめることにしました。
自分自身がつまらないと思うものを書く仕事から脱するためにも、これまでの最弱末端ライターの仕事をやめて小説を書こうとしているのに、これじゃ意味がないと思ったのです。

でも、本当に良いと思ったんですけどね、TL。
私、自分のセクシャリティでは全然理解できない世界でありながら、ヘテロ女性が生き生きとヘテロとしての性や恋愛を謳歌している様子はとても好きなんですよ。ジャニーズオタクとか、俳優好きとか、二次元男性キャラが好きな人たちの、自由で楽しそうな様子も、見てて元気が出るんです。
だから、女性が読んで元気が出るものだと思えば、ヘテロ恋愛でも楽しく書けるんじゃないか、とかなりポジティブな気持ちで始めたんです。

なのに、書けなかった。
男女のロマンスは、それほどまでに私にとってハードルが高かったのです。

そもそも、私自身が書ける許容範囲の男女恋愛ものを書こうとして、私が考えた設定がまずもってTLの王道から外れていたと思います。

相手役の男性はお金持ちで権力があり、強引だったり上から目線だったりするのが今も男女ロマンスものでは王道…ということが事前調査によってわかりましたが、女性を支配するような相手役はどうしても嫌。
そこで考えたのは、まさにSexy Zoneマリウス葉さんのようなイメージの、とにかく倫理観の正しい王子様のような年下の相手役で、その「正しさ」に主人公が戸惑うこと自体をストーリーのフックにするという方向性でした。
後付けで「社長の息子」とかの設定を入れてどうにか王道に寄せようとしてましたが、初期設定ですでにかなりレールをそれています。

さらに、TLにしろBLや百合にしろ、恋愛に特化した「ロマンスもの」として書くということは、ある程度ロマンスをエンタメ化しなければならない、文学性や社会性に寄りすぎてはならないセオリーが、すべてではないですが、存在すると思っています。
恋愛でときめきたい人が読むものなのに、「恋愛など実態のない錯覚」みたいなことが延々と書かれていたら、需要と供給が一致してないですからね…

しかし私は、男女恋愛ものにおいては、そういう「恋愛など実態のない錯覚」みたいなことを、今はまだ書かずにいられないのだな…と思い知ったわけです。
BLや百合だったら、もっと恋愛の現実をそこまで直視し分析するものでなくても、エンタメ化されたロマンスを読み物として書くことができるのに、ヘテロではそれが「まだ」できないのです。

今の世の中でスタンダードになっている「男女の恋愛」の形は基本的に間違っていると、私自身が思っていることが主な理由だと思います。

社会構造として女性差別が今も厳然とあるわけですから、男女の恋愛はそのことに対する共通理解がないと絶対不平等になると思うわけですよ。差別構造に気付いていない人間は絶対に無自覚に差別構造に乗っかりますからね。
女性差別に対する共通理解があるかどうか、というエクスキューズを入れた上で男女の恋愛を描こうとしたら、社会派作品か、人間心理を掘り下げる文学作品か、エンタメならバディものアクションにちょっと恋愛要素が入るとか。
ロマンスものとして書くとしたら、それはかなり斬新な冒険作にならざるをえないのでは…と思います。

だから私はヘテロ恋愛が書けない。
私がお金を稼げないのも、なんだかそのこととつながっているような気がしてきました。世の中の流れに手放しに乗れないノリの悪いやつが、金を稼ぐことが下手なのは当たり前なのです。

でもね、世の中の流れなんていつだって変わりますから。
裏返ったら私の世界ってことですよ。
こうなったら思い切り裏側に回ってやる。資本主義の犬になってたまるか。

…でもやっぱり、生活は楽になったらいいな〜と、気持ちは揺れ動く毎日です。
今はとりあえず、TLを諦めてBLを書いています。

文・宇井彩野

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