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幾何の絶望を超えてもなお、創作物に表現されたレズビアン(女性同性愛)を求めずにいられない。懲りないやつらの懲りないウェブマガジン。

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【映画レビュー】ラフィキ:ふたりの夢

道の向こうにいつも友達といるあの子。ちょっとかわいいな、ステキだよね。気付くといつもこちらを見ている気がするんだけど、もしかしてあの子も、仲良くなりたいと思ってくれているのかな… 『ラフィキ:ふたりの夢』の主人公「ケナ」と「ジキ」はこんな風に、当たり前のように惹かれ合いはじめます。 それはさりげないほど平凡な、不特定多数の誰かの美しい記憶を呼び覚ますような、恋のはじまり。 青春の真ん中を駆け抜けるように恋する2人は、生命力に溢れカラフルで眩しい!演じたサマンサ・ムガシア、シ

    • ミュージカル『FACTORY GIRLS』【女たちの邪魔をするな】

      1回目に観てボロ泣きし、リピートして1回目よりもさらにボロボロに泣き崩れました。 現在東京公演を終わり、10月25日〜27日に大阪公演を控えているミュージカル『FACTORY GIRLS』です。 19世紀半ば、ヨーロッパからの産業革命の流れを受け急速に変わりつつあるアメリカ社会で、実在した工場労働者の女性たちの寄稿集「The Lowell Offering(ローウェル・オウファリング)」を元に、当時の女性労働者の闘争を描いた本作。 音楽・詞を担当しているアメリカ在住のクレ

      • 【ネタバレ】映画『テルマ』についての追記

        映画『テルマ』、前回かなり熱く考察を語ったにもかかわらず、その後また「ん?待てよ?」と気づいたところが出てきてしまったので、追記を書くことにしました。 今回は最初からネタバレです。 テルマは力を使ったのか?幼い頃のテルマが弟に力を使ったエピソード、前回の記事で私は、母親の行動の奇妙さから、「テルマは自分の願望ではなく親の願望に応えて力を使ったのではないか?」と推測していました。 しかしよく考えると、そもそもあの2つの回想シーン、どちらもテルマの仕業だと断定できる要素がほぼ

        • 【映画レビュー】『テルマ』が面白すぎて2回観た

          一年ほど前の映画ですが、やっと観ることができました。これは、最高のレズビアン成長録といっても過言でないのではないでしょうか。 しかしこの映画、深読みできるところがありすぎて、観終わってからも、後から後から考察が止まらない!結果、2日続けて同じ映画を観てしまいました。やばい。 〈あらすじ〉 厳格なキリスト教家庭に育ったテルマは、親元を離れて都会の大学に通うことになる。同じ学校の女の子アンニャへの恋心と、不可解な発作により、テルマの身の回りに少しずつ変化が現れ、やがてテルマの秘

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          【映画レビュー】ミスエデュケーション

          「百合」というジャンルと、「レズビアンもの」というジャンルを分けるべきか同じと考えるべきかは、何年も前から議論されています。 この映画は、レズビアンが主人公の作品ですが、恋愛ものではありません。 そういう意味では「百合」とはいえないのかもしれません。 しかし、百合を愛する百合人の中に、確実にこの映画を観たい人はいると思うのです。今回はそんな「レズビアンもの」映画をご紹介します。 『ミスエデュケーション』は、同性愛者矯正施設に入れられてしまった10代のレズビアンの物語です。

          【映画レビュー】ミスエデュケーション

          マルリナの明日 【女たちの邪魔をするな】

          男たちの暴力に立ち向かう一人の女性、マルリナの旅を描いたインドネシア映画。 荒野を行くマルリナのあまりにもシブくて強靭でカッコいい姿に、「マカロニ・ウエスタンならぬナシゴレン・ウエスタン」とも呼ばれる話題作です。 日常の不条理を打ち破る痛快さ夫を亡くしたマルリナの家に、ある日突然男が押し入って、仲間の男たち7人でマルリナの金と家畜をすべて奪い、皆でマルリナを犯すと宣言します。 全財産を奪われてしまったマルリナは、命じられて男たちのために食事を作り、毒を盛ります。なんとかその

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          【レビュー】『バリキャリと新卒』の推せるポイント

          最近は、大人の女性を主人公にした百合漫画の人気も高まっていますが、「大人の女」のイメージが90年代トレンディードラマで止まってるような作品もいまだに多くて、この世界はまだ女性を生き生きと描くことに慣れていないのかも、と思ったりします。 そんな中、現代の働く女性のリアルかつポリシーある描写で、注目が集まっている百合漫画が、『バリキャリと新卒』です。 今回はそんな『バリキャリと新卒』の推せるポイントをご紹介します! 「風俗で働いていた女性」のフラットな描き方主人公の森野さん

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          【独り身レズビアン放浪記】お金が稼げないっ!

          そろそろ本当に恋活も再開しようかとレズビアンイベントの情報サイトなどつらつら見ていましたら、こんなイベントを見つけました。 文筆家の牧村朝子さんが主催している「自立したかっこいい女でありたい人」のための異業種交流会でした。 何しろ私ったら、知力も胆力もあるのに経済力だけは本当に才能がない。(体力もあんまりないけど) これまでの人生、お金を稼ぐことだけは上手くいったためしがないので、実は恋よりもっと切実に、金の稼げる仕事を求めておるのです。 「まずは恋活より生活じゃ!」と、

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          【独り身レズビアン放浪記】理想の先に女の子がいてほしい

          キャプテン・マーベルからMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)にどハマりしている話は以前の記事に書きましたが、最近こんなツイートを見かけて、私は大興奮してしまいました。 見た瞬間、うわー!これ、小さい頃私が欲しかったやつだ!と思いました。 特撮ヒーローのおもちゃで似たようなものは、私の子ども時代にもきっとあったと思います。 でもそのヒーローたちは多くが男性だった。紅一点的に加わっている女性ヒーローのおもちゃは、マイナーでなかなか出回っていなかったし、何より紅一点の

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          【映画雑記】キャプテン・マーベルとカプらせるなら?

          ここにきてマーベル作品にどハマりしております。 原因は確実に「キャプテン・マーベル」。 これまで映画に登場した女性アメコミヒーローの中でも最強にして最高に痛快との呼び声高い彼女にすっかり心を奪われ、関連作品を見漁っている今日この頃です。 この記事は、そんなキャプテン・マーベルを関連作品(MCU)内の女性ヒーローとカップリングしたい!というだけの雑談記事です。 ※アベンジャーズ /エンドゲームのネタバレはありません。 ・キャプテン・マーベル/キャロル・ダンヴァースの公式キ

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          【新刊レビュー】あーとかうーしか言えない 1巻

          とある「百合」をタイトルに冠したドラマの脚本家が、先行記事で「女性同士の恋愛を描くつもりは全くありませんでした」「女同士で手をつないでトイレに行くことの延長」などとコメントしていてざわつかせていますね。 この方のドラマ、中高生の頃けっこう好きで観てたんですが、あの頃斬新に見えていたものが今はこんなに古びてしまった切なさのような感覚… (もちろんドラマ自体が面白いかどうかは記事のコメントだけではわからないので、そこはそれぞれでご判断いただきたく。) 同性愛的な表現をしながら

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          【新アニメ】キャロル&チューズデイが熱すぎる。

          やばいアニメ始まりましたね。 キャロル&チューズデイ。 17歳の女性ミュージシャン2人が一緒に夢を追う物語です。設定を聞いただけで熱い! 第1話を観て、いろいろと熱いポイントはあったのですが、何より感動したのは「歌」でした。 アニメのために作られた歌は、どうしても「アニメのための歌」になり、「作曲者や歌い手の心から溢れ出た歌」という設定が偽物っぽくなりがちです。 しかしキャロル&チューズデイの歌唱シーンで私は、「これは嘘のない心からの表現だ」と感じたのです。 ここはNY?

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          アイカツ! 【女たちの邪魔をするな】

          そうなんです。『アイカツ!』がTOKYO MXにて4月11日毎週木曜19:00~から再放送するんです。 穏やかじゃない!(by霧矢あおい) 『アイカツ!』は2012年にスタートし、現在放送中の『アイカツフレンズ!』の元祖となったシリーズ。 サンライズ制作としては20年ぶりの女児向けアニメとして、放送開始当時は冒険枠扱いだったのが、瞬く間に女児と大人オタクの心をガッチリ掴んで人気シリーズとなりました。 アイカツ!の何がそんなに凄かったのか。一足先に1stシーズンをBlu-r

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          【新刊レビュー】オトメの帝国14巻

          百合人ならみんな大好き『オトメの帝国』、最新14巻発売ですね! なんか、最近ますます人気高まってませんか? 発売日当日に地元(本屋激戦区)の書店を数件回ってもなかなか見つからなくて、ポップの付いた最後の一冊をやっと手に入れたんですよ。 この人気からすると、メディアミックスも今後期待できそうな気もしますが、どうなんでしょう? 作品の雰囲気としては、アニメより実写のリアルな女の子たちで観たいけれど、このゆる面白さは、肩の力の抜けたセンスある演技ができるキャストじゃないと体現で

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          【小説】スピカの歌

          音芽(おとめ)から私たちに召集がかかったのは、たぶん解散して以来じゃないかと思う。そうは言っても私たちは、年に一回は必ず会っていた。スピカの命日に合わせて、だいたい私か、のりこが声をかけた。音芽から連絡してくるのは珍しいことだった。 「みかん」 部屋の隅の暗がりから名前を呼ばれてはっとした。 呼び出された音芽の自宅は、だだっ広いワンルームの半分が生活スペースで、半分がスタジオになっている。 グループが解散した後、音芽は作曲家としてなかなかの成功を収めていた。 グループ時代か

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          【独り身レズビアン放浪記】恋活なんだコリャランキング

          どうも、いつも「恋活しなきゃな〜」とぼーっと考えているだけの30代レズビアンです。 私は25の時に自分は恋愛をしない「アロマンティック」というセクシャリティであるということを受け入れると同時に、性的に惹かれる対象は圧倒的に女性だなあということにも気付き、それから女性とそういうことになるための様々な手を打ってきたのですが、前述した通り、自分自身のモチベーションもかなり低く、なかなかうまくいった試しがありません。 レズビアンの恋活について詳細を公開するといろいろと弊害があるこ

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