ひとりで見れる世界があるのはひとりじゃないから
ひとり旅することを決めた日と、旅先の小樽で過ごした様子を動画にした。
少し前、恋人との未来が危ういと感じる瞬間があった。お互い望んでいないはずなのに、いつの間にか胸が締め付けられるような苦しい時間が続いていた。数日経った時にふと思った。「ふたりで同じ景色を見られない未来なんて、ひとりの世界に何を感じればいいんだろう」。ひとりで生きることを楽しんでいる人が大勢いるのはわかっている。でも「この先、ひとりで見る世界なんて、つまらないんだろうな」そう思った。
その時に頭に思い浮かんだのが、数年前の東ヨーロッパひとり旅。好きな画家の生まれた地を訪れ、感動的な経験をいくつもしたけれど、緊張する場面やトラブルも多く、そこで「ひとりで見られる世界の限界」を感じた気がした。(海外ひとり旅経験はあるのに、国内ひとり旅経験がない私)
その後恋人と出会い、ふたりで見る世界の楽しさを知り、この先ももっと楽しみたい。たくさん話して、その気持ちを大切に、改めて生きて行こうと自分の心に確認した。今思い返しても不思議で、そう思うことで「ひとり旅をしてみたい」という想いが浮かび上がった。でもネガティブな気持ちはそこにはなかったし、先日木版画の講習会に参加したことも、後押ししてくれたような気がする。
講習会では、人目を気にして遠慮するのは本当に無駄だと気づいた。あの体験から、ひとりで行動することに自信が生まれ、恋人も今の私を信じてくれているという実感があった。だから今回、ひとり旅をしたいという気持ちを大切にできたのかもしれない。
小樽行きを決めたのは、特別な理由があるわけではなく、たまたま気になる喫茶店や展示、ライブがあったから。「これがきっかけで、ひとり旅を始められるかも」くらいの気持ちだった。泊まりがけで行くと言った時、恋人は驚くだろうなと思った。よほど行きたい理由があるように受け取るだろうなと。でも彼は意外とあっさり「いいじゃん」と言ってくれて、泊まる予定のドミトリーを一緒に確認してくれたり、電車の時間を気にして、おにぎりや卵焼きまで用意してくれた。
小樽は不思議な街だった。育った高円寺を思い出させる独特のカルチャーと、アーティストたちのコミュニティの存在が感じられて、この地で何か表現できたら面白そうだと思った。それと同時に、今暮らしている苫小牧で出会った人たちの顔も浮かんできて、「まずは身近な人たちをもっと盛り上げるところから始めたい」という気持ちを再確認することができた。
帰宅した私は元気さが満ちていたと思うし、恋人にもそれが伝わったはず。今後また、ひとりで旅をしたいという気持ちもある。ひとりで見れる世界があるのはひとりじゃないから。そう思えることが、今の私にとって心強い支えになっている。
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