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木版画の講習会で感じたこと

木版画の講習会に参加した日のことを動画にまとめた。

やりたいことはたくさんあるし、それを深めていけばいいはずなのに、なぜかいつも新しいことに手を出してしまう。自分の中で積み上げた1を10にするより、定期的に「自分は0だ」とリセットして、また1を探そうとする。好奇心があると言えば聞こえはいいけど、過去の自分を否定するのも違う。

それでも、「何か新しい体験がしたいな」という日があった。それは普段する散歩のコースを変えてみようかなとか、行ったことのない雑貨屋さんを巡りたいなとか、そういうのとは違くて、かと言って人生に大きな影響を与えるような感動的なことをしたいというのも違う。ふと「ワークショップに参加してみようかな?」と思った。

札幌を中心に探していたら、北海道の「札幌芸術の森」のワークショップが目に留まった。規模が大きく、版画や陶芸、染めなど、色々な工房が集まっている場所のよう。そこで河内成幸。さんという木版画家の講習会が企画されているのを見つけた。「少々変わった表現を1日で体験できる」とあったのが妙に引っかかった。そして、河内さんが76歳の現役木版画家だということを知り、いくつかのインタビューを読んだり作品を見たりして、すぐに参加を決めた。

当日は、札幌駅まで恋人と一緒に行った。恋人は別の講習会に参加する予定だったから、お互い長い1日になるなと思いつつ、終わってからの合流が楽しみだった。

私は昔からいつも遠慮がちで、人が大勢いる場では隅っこで静かにしていることが多かった。自分の意見や存在を主張することに抵抗を感じてしまうから。でも恋人は違う。恋人はいつも「遠慮する必要なんてない」と言って、撮影が必要な場面では迷わず誰よりも前に出て撮影するし、話を聞きたい時は、一番前の席に行ってしっかりと聞けるようにする。自分が学びたい、吸収したいという姿勢を堂々と貫く。その姿が本当にすごいなと思っていたし、いつも尊敬していた。

そしてふと気づいた。なぜ私は、自分が学びたくてお金を払って参加しているのに、周りの目を気にして100%学べない環境を「自ら」作り出しているんだろう?それって時間もお金も無駄にしていることだし、そんな風に人生を消費していくなんて絶対に嫌だ。だから今回の講習会では、自分を変えてみようと決めた。誰よりも早く会場に到着して、どこに座ってもいいと言われた時には、一番見やすい席をスタッフに聞いて座った。撮影も許可されたので、躊躇なく前に出てカメラを構えた。

もちろん周りを全く気にしなかったわけじゃないし、完全に自信満々で動けたわけでもない。それでも、以前の私とは確実に違う行動ができたし、今回の講習会にしっかりと向き合ったという強い実感があった。自分が積極的に動いた分だけ学びも深まったし、体験そのものがより充実したものになった気がする。

実際の木版画は難しかった。技法そのものがすごく興味深くて、頭がフル回転するかんじ。とても1日じゃ理解出来ないし、取得するには膨大な年月がかかると思う。工房スタッフの方が熱心に質問している姿が印象的だった。木の板を彫刻刀で彫る感触は気持ちよく、木への苦手意識は払拭された。銅版画では感じなかった別の楽しさがあった。刷りの作業は難しさが上回って楽しいとは思えなかったけど、講習会自体は満足している。家に飾りたいと思える作品にはならなかったけれど、恋人に見せた時にもらった反応を見て、もう十分かなと思った。木版画の講習会に参加したことで、学ぶための姿勢を変えることができた。それが何よりの大きな収穫だと思う。

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