恐るべき子供たち
遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。
近々、noteを始めてすぐから企んでいた、クトゥルフ関係の友人たち・・・というのはおこがましい、《哲学者の薔薇園》のお客様たちとの、クトゥルフリレー小説を始動します。
プロを含む、名状し難い書き手が揃っておりますので、どうぞお楽しみに!!
さて、今回掲載するのは、大大大好きなジャン・コクトーの「恐るべき子供たち」から、タイトルだけ借りた詩。
画像は、「カルネヴァール展」の時の、人形用仮面を手にした天音ちゃん(左)と、マナセちゃん(右)。
夏がまた じり・・じり と
草木を溶かして のさばり始める
浮かんでいる水母を 掌に掬い取り
湿った頬に 砂をまぶして
僕らは世界と戯れている
遠い街の幻を 僕らは弄ぶ
悲しいまでに明るい陽光のもとで
記憶の片隅をまさぐり
柔らかい 死の感触を 蘇らせながら
終わりのない この夏の一日
僕らの歩いた道のそこここに
願望の芽吹きが音を立てる
日暮れがた 水門の前で
僕らはモイラの視線と出会う
虚偽的なまでに猛々しく
知覚を超えて美しい
集合的無意識の中で僕らは育つ
つまりはそれが夏の儀式だ
改めて問い直そう、これは何だ?
要するに 繰り返しということ
とんでもない、ご免こうむる と僕らは言う
道化た仮面を手に手に
僕らは生を生きてはいない
昨年の春から夏にかけて、「カゲロウプロジェクト」にめちゃくちゃ嵌っていた時期があります。
その時、この詩を読み返していて、なんかすごい共通点ある!と一人興奮しておりました(笑)。
いいんです。分かる人にだけ分かってもらえれば・・・。
ちなみに好きなキャラクターはキドさん。
そして、以下はライター仕事をちょこちょこやっていた時、どこかに書いた本家コクトー「恐るべき子供たち」の書評です。
ご興味を持たれた方いらしたら、是非小説を読んでみて下さいね!
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エリザベートとポールの姉弟、その友人ジェラールは無軌道な毎日を過ごしていた。
やがて洋裁店で働き始めたエリザベートは、同僚のアガートを部屋に入れる。
エリザベートはミカエルという大富豪と結婚するが、彼は自動車事故で死に、4人の生活は続く。
ポールとアガートがお互いを愛していることを知ったエリザベートは、二人を引き裂く為奸計を巡らし、ジェラールとアガートを結婚させる。
ポールは毒薬を飲み、駆けつけたアガートとお互いの気持ちを確かめ合う。
エリザベートは弟への愛を告白し、ポールの死と同時にピストルで自殺する。
ジャン・コクトー。彼の肩書きと活動内容は多岐に渡る。画家、小説家、劇作家、批評家、舞台演出家、映画監督・・・。
しかし我が国の万能の才人、寺山修司がそうであったのと同じく、敢えて一つ挙げるなら「詩人」というのが最も相応しい。
「恐るべき子供たち」は紛うことなき小説の形態を取りながらも、その詩的雰囲気は作品の隅々まで満ちみちている。
その理由の一つは、子供たちがたびたび夢想の中で遊ぶという習慣を持っていたことにあるかもしれない。
姉弟の夢想(ポールはその上夢遊病者でもある)には、阿片中毒者となっていたコクトーの幻覚体験が投影されていたのであろう。
また、ポールの死の直前にエリザベートが見る夢の描写も、極めて幻想的で美しい。
夢の中で、部屋はそのまま森になり、玉突き台が小山になる。ポールが自殺を図ったことをまだ知らないエリザベートは、そこで死んだポールに出会うのだ。
ポールは物語の冒頭で、憧れの少年、ダルジュロスの投げた雪球で倒れる。そして物語の最後に、ダルジュロスから贈られた毒薬の玉で自殺する。
ダルジュロスは物語の最初と最後にしか登場しないが、エリザベートの連れてきたアガートという少女は、ダルジュロスに生き写しである。
白と黒の玉をもたらすダルジュロスが死の天使ならば、アガートは生の象徴に他ならない。
詩的象徴はこれに留まらない。何とも言えず魅惑的なのが、子供たちが暮らす部屋だ。
モンマルトルのアパルトマンに存在していた部屋は、巫女と結婚することで罰を受けたと仄めかされるミカエルの死の後、彼の大邸宅の一角に再現される。
部屋は胸像や鏡や様々ながらくたで満たされ、赤い安綿布で覆われた舞台装置として描かれる。夜毎、部屋の精霊が、開幕の合図をする。
彼らの生活は常に芝居になぞらえられる。ポールとアガートを引き裂く為の工作を終えた時、エリザベートはマクベス夫人のように手を洗うのだ。
それでは、部屋の精霊とは何者であろうか。
それは詩のエスプリ、芸術のアウラに他ならないのではないだろうか。
精霊の庇護下に生きることはしかし、大人になることを拒否し、子供のまま死なねばならないことを意味していた。
一歩間違えれば退廃的との謗りを免れ得ない題材を、ギリシア悲劇に匹敵する程の格調高い筆致で描いた、詩人コクトーの面目躍如たる作品と言えよう。
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