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『僕と私の殺人日記』 その7
※ホラー系です。
※欝・死などの表現が含まれます。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
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身体が言うことを聞いてくれなかった。わたしの身体は勝手に家へ向かって歩いて行った。
「まあ、どうしたの! リナ!」
「これはまた派手にやったな」
家に帰ると、おかあさんとおとうさんがわたしを見て驚いていた。壁に立て掛けていた鏡を見て、顔が泥まみれになっているのを知る。
「田んぼで遊んでたら、転んだ」
わたしが勝手にしゃべる。子猫を殺したことは言わないらしい。
「どうりで遅いと思ったわ。お風呂が沸いてるから、早くきれいにしなさい」
おかあさんがお風呂の方を指差した。泥のおかげで血がついているのがばれなかったみたいだ。
「ホントに! 手のかかる子なんだから!」
「まあまあ、かあさん。今日はリナの誕生日なんだから、大目に見ようじゃないか。うれしくてはしゃいじゃったんだ。ね?」
わたしはうなずく。
「しょうがないわね。今回は特別よ」
怒ったおかあさんをおとうさんがなだめてくれた。とりあえずお説教はまぬがれたようだ。
「あがったら誕生日会するからね」
やさしくなったおかあさんの言葉を背に、わたしはお風呂場に向かう。泥まみれの服を洗濯機に入れて、シャワーを浴びる。温かいお湯がわたしの汚れた心まで洗い流してくれる。
お風呂についている鏡を見る。顔の所どころに血がついていた。それを石鹸でごしごし擦って取る。やがてきれいに取れて、白い肌が現れた。
もし、泥が顔についていなかったらばれていただろう。わたしはあまり頭がいい方ではない。あの時、泥で血を隠すなんて考えもしなかった。
なのに、身体は勝手に動いた。いや、身体はまだ、今も勝手に動いている。鏡に映った顔がわたしではないような気がした。目に知性というものがあり、強気なわたしと違って弱々しい表情をしていた。
「リナちゃん、早く変わってよお・・・」
また、勝手にわたしの口が動いた。意味がわからなかった。田んぼの水で顔を洗った時から様子がおかしい。まるでだれかがわたしの身体を動かしているみたいなのだ。
わたしはどうすればいいかわからない。 身体を洗ってすっかりきれいになったわたしは、家族のみんなと誕生日会をした。
ピザ やチキン、大好物のシュークリームに苺のケーキがテーブルへ並ぶ。 どれもおいしかった。でも自分で食べた気がしなかった。もっとシュークリームを食べたかったのに一つしか食べなかった。ケーキも半分は食べたかったのに一カットしか食べていない。
不満を残しながら、わたしの十歳の誕生日が終わった。
眠りについたわたしは夢を見た。 一人の男の子が立っていた。わたしと全く同じ顔だった。なのに、なぜか男の子だとわかった。こっちをじっと見つめている。悲しそうな顔だった。
「あなたはだれ?」わたしは聞いた。
「ぼくは君だよ」男の子は答えた。
「わたしはわたしよ!」 わたしは叫んだ。
男の子の言っていることがわからなかった。
「そうだね・・・。ぼくもそう思う。そうであってほしかった・・・」
信じられなかった。でも、心がどこか繋がっているのを感じる。
「あなたは一体・・・」
「ぼくはユウ。君の別人格なんだ・・・」
続く…