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銭湯から最高の受け手になる -北区での新体験を通して-

日本の全ての市町村を巡り、昨年は東京23区の全ての駅を回った写真家の仁科勝介さん(かつおさん)のインタビューから1週間。

湯の輪らぼのたなかいとユウト・ザ・フロントは、北区の銭湯が運営する貸しアパートにいたのであった…

インタビュー後

何でも自分の中に取り入れたいっていう気持ちはいつもある。写真を撮るにしても、大事なのは色々本を読んだり、映画を観たり、人の話を聞いたりとか、できるだけ受け手であるしかない
絶対に自分の人生じゃ追いつけないくらいの色んな土地の生き方があるから、そこで見つけた面白さを提示できたらいいな。

「できるだけ受け手である、かあ…」

インタビューが終わってから、たなかいとユウト・ザ・フロントは「受け手」という言葉が頭から離れませんでした。

「じゃあ思い切って新しい街に1週間住んでみて、全力で受け手になってみようではないか!」

そう一念発起し、民泊サイト「Airbnb」を開き候補地を探す。

「できれば、いい銭湯が多いと聞いていた北区がいいな〜」

すると、東京メトロ南北線の志茂駅にある銭湯・テルメ末広が運営している「第一末広荘」という物件にヒット!

「北区にあって、しかも銭湯が運営しているなんて最高じゃないか!」

運命的な出会いに思わず笑みが溢れ、1週間の予約を入れました。

こうして始まった1週間の北区滞在記。

テーマは、「最高の受け手になる」。
日常生活では出会うことのできない地元の慣習や文化にとりあえず飛び込み、「実績解除」していこうと決めました。

別に好きにならなくてもいい。
ただ、体験する前に判断しないマインドを大事にしました。

まずは地元で愛される銭湯に入り、ウォーミングアップ。
滞在先のテルメ末広さんにお邪魔しました。

(赤羽経済新聞より引用)

中は白と水色を基調とした壁で、天窓から爽やかな昼下がりの太陽が差し込んでいました。
ちょうどその日はボンタン湯ということで、サッカーボールくらいの大きさのボンタンがごろごろ浮いていました。

ボンタンには北区銭湯のマスコットのゆきたんの似顔絵が描かれていて、早速お店側の遊び心を感じられます。
露天風呂では父子が楽しそうに学校の話をしていて、ほっこり。

地元の銭湯であたたかく迎えてもらったら、街へ繰り出す勇気と好奇心が漲ってきました。

さあ、北区を探検しようではないか。


北区の赤羽は言わずと知れたのんべえの街でもあります。
それを体現する店を求め、千円でベロベロに酔っ払えるお店、通称センベロ立ち飲みの「いこい」へ。

ビニールの入り口をくぐるとカウンターには一人で来ているおじさまが晩酌をしっぽり楽しんでいます。
そのカウンターの内側では、店員さんが一人で全てのお客さんの注文を受けています。

湯上りのポカポカさをバネに、思い切って注文。

「ハムカツと日本酒一合お願いします!」

「〇〇円ね」(おそらく500円もしないくらいでした。)

ん、前払い制だ。このお店は、注文の都度お金を払っていくスタイル。
常連さんは、注文と同時に額ちょうどをカウンターに置いていきます。

次は、古くより愛されるもつ焼きの名店「米山」へ。

これは入りづらい…

「ここで断念したら赤羽を知ったことにはならないぞ!」
自分を奮い立たせ、かための引き戸を開けます。

そこは、昭和映画でしか観たことがない世界。
店主は一人で切り盛りされており、作業がなくなったらタバコ休憩をする。
店主の丸メガネも印象的で、本当にタイムスリップしたような感覚になりました。

自分たち専用の鉄板で、好きな部位を焼いていきます。

〆にはあっさり澄み渡るモツの煮込み。

寒い北風で酔いを覚ましながら、赤羽の夜道を歩いて帰ります。

「これは赤羽の人も通っちゃうよな…」


次に向かったのは東十条。

そのわけも、そこにはバングラデシュ人コミュニティがあって、本場のバングラデシュ料理が食べられると聞いたからです。

その店の名も、「プリンス・フードコーナー」。
こちらも、ステッカーがびっしり貼られている、かための引き戸を開けます。

中には、バングラデシュ人しかいなく、彼らが故郷に想いを馳せる場になっているようです。
店内はベンガル語が飛び交い、壁にはコーランの一節が。
お客さんは右手で料理を頬張っています。

メニューで目に留まったのが、チキンプラオという料理。
チキンを丸々ローストし、スパイスたっぷりな炊き込みご飯と一緒に食べます。

日本人の私たちにはフォークとスプーンが出てきて、手に自信がない私はさすがにそれを使うことにしました。

これが衝撃的に美味い。
インドのカレーとは違って少し水分量が少なく、ハッカクが効いています。
また、上にはレモンが乗っかっていて酸味ですっきり仕上げてくれます。
大好きな卵も丸々一つ入っていて思わずテンションが上がりました。

止まりません。これはリピート確定でした。
そして引き戸を開けて店を出たら、すっかり東十条にいたことを忘れていたのでした。


「百聞は一見に如かず」という言葉を体現してくれた北区での生活。
SNSやグーグルレビューで他人の評価が簡単にわかってしまう時代に、自ら経験することがいかに納得感ある形で自分の芯を形成していくのか思い知りました。

皆さんも銭湯でゆるまったあとに、かための引き戸を開いて街へ繰り出しませんか?


たなかいが、銭湯から勇気をもらい、街の新たな側面を冒険したように、私ユウト・ザ・フロントも、北区で新体験の波にもまれてきました。

そして、新体験の日々の中、こんなにも"気持ちのいいもの"が世の中にあることを私は知らなかったんだと何度も感じていました(あぶなくないやつ)。

銭湯で体を潤わせ、東京砂漠のオアシスを探し歩いた青年二人の姿をご堪能ください。


暗い部屋、怪しい機械とお酒。

北区生活のとある1日。

私たちは、少し足を伸ばして、北千住にある娯楽施設「Link」に来ていました。
ここでの新体験は、ダーツ!🎯

(ホットペッパーより)

私はこれまで「なんとなくこわい」という偏見で、ダーツをすることを避けてきました。暗がりで怖い大人たちが、物騒な針を投げていると思っていたからです。

そんな恐怖を胸に、いざ入店。
100円を入れ、ゲームスタート。

投げ方もよく分からないが、とりあえず的に向かって投げてみる。

・・・あれ?

気のせいかと思い、もう一投。

・・・めっっっちゃ楽しい!

最初は、明後日の方向に飛んでいってしまっていたダーツの矢も、次第に狙いたい場所を狙えるようになってきた。

こんな楽しいなら!ということで、別日に池袋のロサ会館というレジャービルへ。

(フォートラベルより)

悪のアジトのような見た目だが、ダーツができるのならば、怯えている暇もない。

ロサ会館のダーツは、時間制だったので、投げまくる。ひたすら投げまくる。

席からマウンドまでの行ったり来たり。
ダーツを手で投げる。

これだけなのに、1時間のプレイでとても疲弊。しかし、とっても楽しい。何より、ブルが出た時のあの快感は忘れられない。

真ん中に刺さる矢。
きらきらと光る的。

その後の銭湯では、ダーツでかいた汗は流せても、的のド真ん中:ブルを射抜いた快感による鳥肌は洗い流せませんでした。


ダーツを頑張りすぎたせいか、少し痛む節々。

そこで私たちは、赤羽にあるマッサージ屋さんで体を回復させることにしました(健全なやつ)。

(エキテンより)

怪しげな路地裏を進み、暗い雑居ビルを登った先にあったのが「整体ドンキ」。

はじめてのマッサージ。
心を許す前に、気づけば施術のベッドに横たわっていました。

「どこが痛みますか?」

「首と肩と右腕です......」

そして始まるマッサージ。
少し痛すぎる、とも思ったが、その山を越えるとだんだんと気持ちよくなってくる。

肩の周りを重点的に揉み込まれ、軽くなっていくのがわかる。
あーそこそこ!と心の中で108回くらい思ったところで、マッサージ終了。

明らかに体の動きが滑らかになった。
軽い足取りで、夜の街(銭湯)へ繰り出していった。


話は変わりますが、私は今年の4月から社会人になります。
今は内定者という立場です。

今の期間は、社会人生活のスタートをスムーズに切るため、週2日のインターンを行なっています。

そして、そのインターンがあるのは北区滞在中も変わらず......
そのため、埼京線でぎゅうぎゅうに潰されながら通勤をし、ヘトヘトになって北区に帰ってくる日が2日間あったのです。

疲労を背負って帰ってきたその日、私は初めての体験をすることになります。
それが「労働後の銭湯」です。

閉まるぎりぎりの時間に、急いで銭湯に向かいます。
その日行ったのは「みどり湯」

デスクワークで破壊された首と肩を、湯で温めます。ジャグジーに、寝湯。まさに労働後に来てくれと言わんばかりのオアシス加減。

これが週5で働くサラリーマンであったとしても、今日の疲れを洗い流し、明日への希望だけを焚き付けてもらえるだろうなと確信しました。


4月から始まる新生活。
ワクワクと不安の入り混じった感情。

この北区生活を通して学んだことは、どんなにネガティブになろうとも、この世界にはたくさんの楽しいものにあふれているし、銭湯に入れば、とりあえずリセットできるということです。

銭湯は、東京砂漠のオアシスなのかもしれません。

ぜひ、みなさんも、新しい経験を通して世界を楽しみ、少し疲れたら銭湯に帰ってくる生活を送ってみてはいかがでしょうか。


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