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山田風太郎の『八犬伝』 【役所広司、内野聖陽、土屋太凰、栗山千明】

高校生の時、朝日新聞に山田風太郎の「八犬伝」という小説が連載されていました。当時は拾い読みしか出来なかったのですが、この秋に映画化されました。

山田風太郎の「八犬伝」

山田風太郎の「八犬伝」は「南総里見八犬伝」のストーリー(虚の世界)と作者・曲亭馬琴(滝沢馬琴)と親友・葛飾北斎の創作に向けた交流(実の世界)を描いた伝奇小説です。
「南総里見八犬伝」は、以前にも記したように1973年から75年にかけてNHKで放映された人形劇「新八犬伝」で親しみ、その後に現代語訳したものを読みました。

八犬伝
パンフレット表

映画でも「虚の世界=南総里見八犬伝」と「実の世界=馬琴と北斎、周囲の人々」が交互に映像化されます。

「虚の世界」の印象的な配役は、伏姫=土屋太鳳、浜路=河井優実、玉梓=栗山千明。栗山千明の妖艶にして怨念ほとばしる玉梓はおっかないです。NHKで放送されているダークサイドミステリーの妖しいナビゲーターそのまんま。
八犬士は若手俳優で固めていましたが、ちょっとイメージが違うかなぁ・・・・(あくまで私の感想です)。
でも、映画の折々に劇中劇として挟み込まれる「虚の世界」もおもしろいですよ。

「実の世界」は実力派俳優で固めています。滝沢馬琴=役所広司、葛飾北斎=内野聖陽、馬琴の妻・お百=寺島しのぶ、馬琴の長男・宗伯=磯村勇斗、宗伯の妻・お路=黒木華。劇中劇として演じられる歌舞伎の「東海道四谷怪談」には中村獅童と尾上右近も登場します。
この「実の世界」がリアル。創作に悩み、家族の不幸に打ちひしがれる馬琴の苦悩が胸に迫ります。
SFXを多用して現実離れした(誉めてます)「虚の世界」とリアルな「実の世界」の対照は、それぞれの世界をより印象づけるための演出かなー。

ラスト近く、馬琴の妻・お百が亡くなる場面と、光を失った馬琴が義娘・お路の口述筆記で「八犬伝」の完成に執念を燃やす場面は胸に迫ります。

この映画おもしろかったです。打ちきりになる前にまた見よう。

八犬伝
パンフレット裏

「八犬伝」の映画化は、9月に鳥取に帰り、「里見八犬伝終焉の地」を巡っていたときに知りました。里見家最後の当主・里見忠義の墓がある倉吉市の大岳院の本堂に、ポスターがバーーーーーンと貼ってあったのです。
前にも書きましたが、里見家終焉の地は鳥取県倉吉市でした。「南総里見八犬伝」の原作にもそこまではっきりとは書いてありませんが、「八犬士たちが隠居した後、里見家は道を失って一族相争い、ついに滅びてしまった」と記されています。
その意味では、玉梓が死の間際に里見家を呪った「七代先まで祟って、一族を畜生道に落としてくれるわ!」の呪いが、残念ながら成就されてしまったというべきか・・・・

「南総里見八犬伝終焉の地」の訪問記はこちら ↓
倉吉市・大岳院【里見八犬伝終焉の地・1】|Yuniko note
倉吉市・勝宿彌神社【里見八犬伝終焉の地・2】|Yuniko note
関金町堀の里見屋敷跡【里見八犬伝終焉の地・3】|Yuniko note

次回予告 辺見庸の「月」 【宮沢りえ、磯村勇斗、オダギリ・ジョー、二階堂ふみ】

1年前に見た映画ですが、賛否両論を巻き起こした大問題作。

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