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CD、DVD、Blu-Ray 鑑賞室

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愛聴しているCD、DVD、Blu-Rayの拙い感想を書き綴っていきます。
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2024年9月の記事一覧

【壮麗、劇的、美音の洪水】ヘルベルト・フォン・カラヤン&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団/ビゼー:「カルメン」組曲&「アルルの女」第1組曲、第2組曲【思い出の1枚】

中学1年生の冬、音楽の鑑賞の時間にビゼーの「アルルの女」第1組曲と第2組曲を聴きました。音楽の先生が生徒一人一人に「アルルの女」のスコアを配り、オーケストラの配置やスコアの仕組み、オーケストラに於ける指揮者の役割を説明してくれたのです。 私にとってまったく未知の世界で、とても興味深く聞きました。そして何よりもオーケストラが奏でる千変万化の音色に酔いしれました。小学校5年生で聴いたチャイコフスキーの「くるみわり人形」組曲、諸学校6年生で聴いた「ペール・ギュント」第1組曲も強く印

【「禿げ山の一夜」の名演から8年】ヴラディーミル・フェドセーエフ&モスクワ放送交響楽団:祝典序曲「1812年」~ロシア管弦楽曲集・2【8年後のモスクワ放送響】

8月26日の記事=「晩夏のゾーッとするクラシック」第1回で、ヴラディーミル・フェドセーエフ&モスクワ放送交響楽団の「ロシア管弦楽曲集 Vol.1」を紹介しました。→【晩夏のゾーッとするクラシック・1】ロシア管弦楽曲集 Vol.1/ヴラディーミル・フェドセーエフ&ソビエト国立交響楽団【悪魔、妖怪、蛮族の乱舞】|Yuniko note 今回はその8年後に録音された同じ演奏者による「ロシア管弦楽曲集 Vol.2」です。 8年という短いような長いような年月が指揮者とオーケストラにもた

【極東の見知らぬオケへの客演指揮】チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」/ヘルベルト・フォン・カラヤン&NHK交響楽団【もっともっと低音を引き出させてやる!】

名指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンが若き日にNHK交響楽団を指揮した貴重な記録です。前記事のピエール・ブーレーズ指揮のモスクワ音楽院管弦楽団の演奏と同じく、一流指揮者の力量について考えました。 1954年4月 カラヤン初来日 1954年4月2日。ヘルベルト・フォン・カラヤンはNHKの招きで初来日しました。当時カラヤンは46歳。第2次世界大戦終結からまだ9年。ベルリン・フィルの常任指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラーやアメリカのNBC交響楽団を指揮していたアルトゥーロ・

【三流オケへの客演指揮】ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」ほか/ピエール・ブーレーズ&モスクワ音楽院管弦楽団【悪いオーケストラなどない。悪い指揮者がいるだけだ】

名指揮者ピエール・ブーレーズが客演でモスクワ音楽院管弦楽団を指揮したCDで、指揮者の仕事というか指揮者の力量について考えました。 難しい話はしないように心がけるので、肩ひじ張らずにお読みください。 ピエール・ブーレーズについて ピエール・ブーレーズ(1925~2016)はフランスの現代音楽作曲家で指揮者。フランス国立音響音楽研究所IRCAMを設立し、初代所長に就任したほか、指揮者としてはニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督も務める。 ストラヴィンスキーやウェーベルン

【晩夏のゾーッとするクラシック・13 最終回】ノルドグレン:小泉八雲の怪談によるバラード/舘野泉【フィンランドの作曲家が描くあやかしの世界】

13回にわたってお送りしてきた「晩夏のゾーッとするクラシック」。今回でひとまず最終回です。 作曲者ペール・ヘンリク・ノルドグレンについて 作曲者ペール・ヘンリク・ノルドグレンは1944年にフィンランドに生まれた現代音楽の作曲家です。 1970年から73年にかけて来日し、東京藝術大学に留学しました。この時、小泉八雲の怪奇小説を知り、その怪奇の世界に魅了されます。そして、1972年に舘野泉の委嘱によって「耳なし芳一」が作曲され、以後、「怪談」に基づくバラードが作曲されていきま

【晩夏のゾーッとするクラシック・12】大野雄二:映画「犬神家の一族」サウンドトラック【佐清!仮面を取っておやり!】

本邦初のサウンドトラック これは厳密に言えばクラシック音楽ではないのですが、私としては「ゾーッとする音楽」ではこれははずせません。角川映画の第1作。その完成度の高さからいまだに語りぐさとなっている「犬神家の一族」。 音楽はジャズ・ピアニストの第一人者・大野雄二。 この音盤は日本における映画のサウンドトラック盤の最初のもので、この音盤のヒットを機に、「映画のサウンドトラックも売れる」という概念を生んだとされています。 <収録曲> 愛のバラード  怨念  呪い住みし館  仮面

【晩夏のゾーッとするクラシック・11】ラヴェル:夜のガスパール/ルイ・ロルティ【ピアノによる奇怪な音詩】

「スイスの時計職人」によるピアノの奇怪な音詩 フランスの作曲家モーリス・ラヴェル(1875~1937)は「オーケストラの魔術師」「スイスの時計職人(フランスの人なんだけど)」の異名を取り、精緻・繊細・華麗な作風で知られました。「ボレロ」やムソルグスキーのピアノ曲を管弦楽編曲した「展覧会の絵」が有名ですが、ピアノ曲もたくさん書いています。 今回取りあげる「夜のガスパール」は、ルイ・ベルトランの同名の詩集を題材として書かれたピアノによる音詩です。 夜のガスパール 次の3曲で構

【晩夏のゾーッとするクラシック・10】グリーグ:「ペール・ギュント」第1組曲、第2組曲/ヘルベルト・フォン・カラヤン&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団【北欧伝説の主人公】

小学校の鑑賞教材としても有名 ノルウェーの作曲家エドヴァルド・グリーグ(1843~1907)の代表作「ペール・ギュント」。小学校の鑑賞教材としても取りあげられたり、各種のBGMとしても使われたりしているので、ご存知の方も多いと思います。私も、小学校6年生の時に「ペール・ギュント」第1組曲を教わりました。 今回取りあげる「ペール・ギュント」はもとは劇付随音楽で、のちに作曲者自身によって2つの演奏会用組曲として編まれました。 第1組曲、第2組曲は、それぞれ次の4曲からなっていま

【晩夏のゾーッとするクラシック・9】ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」/ズービン・メータ&ニューヨーク・フィルハーモニック【華麗なる音画】

華麗なる音画としての「展覧会の絵」 前回に続いてムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」です。 スヴェトラーノフ&ソヴィエト国立響の「展覧会の絵」はロシアの野趣あふれる雰囲気の演奏でしたが、今回のズービン・メータ&ニューヨーク・フィルハーモニックの演奏は、モーリス・ラヴェルの華麗なオーケストレーションを最大限に生かした演奏です。 曲目と演奏者 モデスト・ムソルグスキー ・組曲「展覧会の絵」(モーリス・ラヴェル編曲)   プロムナード~こびと~プロムナード~古城~プロムナード~

【晩夏のゾーッとするクラシック・8】ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲「展覧会の絵」/エフゲニー・スヴェトラーノフ&ソヴィエト国立交響楽団【ロシア民話の妖怪とキリスト教の地下墓地】

絵画が生んだ名曲 ムソルグスキーの「展覧会の絵」 ロシア五人組の一人モデスト・ムソルグスキー(1839~1881)が親友の画家ヴィクトル・ガルトマンの死後開かれた遺作展の10点の絵にインスピレーションを得て作曲された組曲「展覧会の絵」。 もともとはピアノ曲として作曲されましたが、モーリス・ラヴェル(1875~1937)の管弦楽編曲によって、一気に人気曲となりました。 曲目と演奏者 管弦楽版の「展覧会の絵」は、原曲の荒々しさを前面に押し出して演奏するか、ラヴェルの壮麗なオ

【晩夏のゾーッとするクラシック・番外編】これって、いいの?【カラヤン関連ジャケット考】

ある意味、閲覧注意です 予告では【晩夏のゾーッとするクラシック・8】として、ムソルグスキーの「展覧会の絵」を取りあげることにしていましたが、急遽番外編を入れさせていただきます。 この項、残酷な表現や性的な表現は出てこないのですが、ある意味で閲覧注意です。 カラヤン&ベルリン・フィルの「ニューイヤーズ・イヴ・コンサート」 前項のカラヤン&ベルリン・フィルの「悲しきワルツ」で、「ベルリン・フィルは毎年12月31日の夜に、親しみやすいクラシック音楽を演奏するコンサートを行って

【晩夏のゾーッとするクラシック・7】シベリウス:悲しきワルツ/ヘルベルト・フォン・カラヤン&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団【病床の女を訪れる幻の客】

ジャン・シベリウス 前回に続き、フィンランドの作曲家ジャン・シベリウスの「死」を扱った名曲です。シベリウスについてはこちらを→【晩夏のゾーッとするクラシック・6】シベリウス:トゥオネラの白鳥/サー・マルコム・サージェント&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団【黄泉国の河の嘆きの白鳥】|Yuniko note 交響詩「フィンランディア」でフィンランドの独立に大きく貢献した人です。 曲目と演奏者 ジャン・シベリウス  交響詩「フィンランディア」  トゥオネラの白鳥  悲しきワ