【小説】風信子館の証跡 -4-
個性はひとつの目から見えるものではなく、けれどもふたつの目があれば足りるものかと思えばまだ見えない。
みっつ……よっつ……複数の目があって初めて、それが個性かが判断される。
よって、自分自身が持っているものなのに人から与えられるのが個性なのである。
多分。そうきっと。私は考えてノックし続けている。
宿直室に閉じ込められた私は、唐草の放った言葉の意味を考えているのに精一杯で、結局のところ何も出来ずにそのまま何時間も過ごした後、存在証明の失敗を取り返せずに寝静まった唐草を見計