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オーガニック給食、日本は遅れている?デンマークと比べて考えてみた
オーガニック給食について調べていると、「フランスやデンマークではオーガニック給食が進んでいるのに、日本はなんで遅れているんだ? けしからん!」という話を散見する。
こういう話を聞くと、「フランスやデンマークの人たちは環境意識が高く、日本は意識が低いの?」とならないだろうか。
気になったので、 オーガニック給食の普及率が世界一のデンマーク について ChatGPT に聞きながら、日本との違いを調べてみた。
デンマークのオーガニック給食、どれくらい進んでいる?
デンマークの コペンハーゲン では、 90%以上の公共給食(学校、病院、介護施設など)でオーガニック食材が使われている らしい。
さらに、2020年時点で 国内の食品市場におけるオーガニック製品のシェアは12.8%。これは世界トップクラスの数字だ。
政府も 2030年までに有機農地の割合を20%以上に増やす 目標を掲げていて、オーガニック化をどんどん進めようとしている。
確かにオーガニック意識は高そうだ。
じゃあ、日本はどうなの?
日本のオーガニック給食の普及率についてのはっきりしたデータはないけど、 2022年時点で193の市町村 が導入しているとのこと。
また、有機農業の面積は 全農地の0.5% にとどまっている。ただし、日本政府も 2050年までに25%に拡大する 目標を掲げているので、今後増えていく可能性はある。
うーむ、たしかに、デンマークとオーガニック意識を比較されても文句は言えない。
この違い、なんで生まれたの?
やっぱりデンマークの人たちのほうが日本より環境意識が高いのか?
ChatGPTに聞いてみたら、意外にも「意識の高さ」だけの問題じゃないことが見えた気がした。
デンマークと日本では、農業公害の規模が違う
→ 農業公害の規模の違いが、オーガニック農業への転換の規模を決めた
→ そして、その違いは工業化のスピードが影響している
つまり、デンマークでオーガニックが進んだのは 「環境意識が特別に高いから」ではなく、「農業公害が深刻だったから」 に端を発しているような気がする。
工業化の違いが農業公害の規模を生んだ
結論から言うと、 デンマークの工業化はゆっくり進み、日本の工業化は急速に進んだ ことが背景にある。
日本は急速に工業化を進めた
日本は 明治維新(1868年)以降、政府主導で急速に工業化を進めた。
特に 戦後の高度経済成長期(1950年代〜1970年代) には、自動車・鉄鋼・電機産業が急激に発展した。
この急速な工業化には、以下のような理由がある。
• 資源が少ないため、製造業を強化する必要があった
• 戦後の復興を急ぐため、大規模なインフラ投資が行われた
• 技術革新を取り入れ、国際競争力を高める政策がとられた
• 人口が多く、労働力が豊富だった
• 石炭や鉄鉱石などの資源が自国にあった
しかし、その結果 四日市ぜんそくや水俣病などの深刻な工業公害 が発生した。
政府は公害対策を最優先で進め、その流れで 農業の環境対策も早くから整えられた というわけだ。
その結果、日本では 農薬や化学肥料の使用基準が厳しく管理され、農業公害が発生しにくい仕組み が早くから整った。
デンマークはゆっくり工業化
一方、デンマークでは日本ほど急速な工業化は進まなかった。その理由には、以下のような背景がある。
• 農業が経済の中心だった
• 人口が少なく、大規模な工業化が難しかった
• 農産物の輸出が重要で、工業より農業に重点が置かれた
• 戦争の影響を受けにくく、大規模な復興政策が不要だった
• 石炭や鉄鉱石などの資源が自国になかった
そのため、デンマークでは工業公害の問題はそこまで深刻にはならなかった。
しかし、その代わり 1980年代になって農業公害が深刻化 し、そこでオーガニック農業への転換が一気に進んだのだ。
つまり、これは どちらが環境意識が高いかの問題ではなく、それぞれの国の産業構造や歴史の流れの違いによるものだと言える。
日本とデンマーク、結局どっちがすごいの?
工業化の面で見れば、日本は今でも 重工業に強みを持ち、大企業が多く、大量生産の体制を確立している世界有数の工業国家 だ。
一方、デンマークは日本のような 大規模な重工業はほとんどなく、中軽工業を中心に発展している。
では、日本のほうが「すごい」のか? そうとも言い切れない。
日本の 国内総生産(GDP) はデンマークよりもはるかに大きいが、 一人当たりのGDPはデンマークのほうが日本の約2倍 もある。
これは、日本が大規模な生産体制に特化しすぎた結果、柔軟性を欠いてしまった一方で、デンマークは 中規模の生産体制を維持しながら効率よく経済を回している ことが関係している。
また、日本では 「長時間働くことが美徳」 とされる傾向があるが、デンマークでは 「いかに効率よく働くか」が重視される ため、労働時間は短くても生産性が高い。
結論
日本とデンマークでは、それぞれの 歴史の流れや工業化の進み方が違った ため、オーガニック農業の普及の仕方も違う。
デンマークは 「環境意識が高かったからオーガニックを進めた」 のではなく、 「農業公害が深刻だったからオーガニックにするしかなかった」 というのが実情だったといえよう。
一方、日本では 農業公害が発生しにくい仕組みが整っていた ので、オーガニックへの転換があまり求められなかった。
「オーガニック給食が普及しているデンマークはすごい、日本は遅れている」で終わるのではなく、取り入れるのだとしても、その国の事情を考えることが大切なのではないだろうか。