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自分をからっぽにしてみる/介護の仕事をして思ったこと

先日、下記の本を図書館で借りてきました。

『行く先はいつも名著が教えてくれる』秋満吉彦著(NHKエデュケーショナル・プロデューサー)

著者が仕事で悩んだ時に救ってくれたいくつかの名著が紹介されています。
仕事や人間関係に行き詰まった時に勇気づけてくれる本です。

その中に、明治時代に東京美術学校(現・東京藝術大学)を立ち上げた岡倉天心の『茶の本』の一節が目に飛び込んできました。

水差しが役に立つのは、その形や材質によるものではなく、水を容れるからっぽの空間によるものである。虚はすべてを容れるが故に万能であり、虚においてのみ運動が可能になるのだ。自分をからっぽにして自由に他人が出入りできるようにすることをこころえた者は、どんな状況でも自由にコントロールすることができるようになるだろう。

岡倉天心『茶の本』65ページ

私は介護士として介護施設で2年半働いています。40代後半で介護を始めたので、なかなか業務が覚えられず、介護の世界は果たして自分に向いているのだろうか、と何度も考えました。 辛いこともありますが、今は続けていて良かったと思っています。介護に携わったおかげで自分の視野が広がったからです。

介護施設で働き始めた頃は、
自分の水差しには空間がなく、何も入る余地がありませんでした。
自分のことしか見えてなく、同僚や利用者さんの気持ちを考える余裕がありませんでした。[今でも時間に追われると周りが見えなくなることもあります(汗)]

仕事がなかなか覚えられず、笑顔もなく、目の前のことをこなすのに精一杯でした。
その時はとても苦しくて、全く楽しくありませんでした。

仕事を覚えて随分慣れてきた頃から、肩肘を張らずに自然体で業務に取り組めるようになってきました。
自然と仕事中に笑顔が増えて、明るい声で話をするようになっていきました。
同僚の動きや利用者さんの表情に目がいくようになり、極端に狭かった視野が少しずつ広がっていきました。

自分の水差しに空間が生まれ、他人が出入りする余地が出来ました。

心に少し余裕ができて、同僚に素直に相談したり、どうすれば同僚が仕事をしやすくなるのかと考えるようになり、相手も気軽に話をしてくれるようになりました。

利用者さんにどうしたら楽しんでもらえるかと考え、コミュニケーションを多く取るようになり、怒らせることも減っていきました。

自由にコントロールとまではいきませんが、良好な人間関係が築けるようになっていきました。

この本を読んで、自分をからっぽにして他人をまず受け入れてみる。
そうすると相手も自然に接してくれるようになり、新しい気付きや良好な関係性が生まれてくるということに改めて気付かされました。

余裕がなく、自分をからっぽに出来ないこともあると思います。
そういう時はからっぽに出来てないな、と現状に気づくだけでもいいです。
そうすると自分に執着していたことに気付き、一歩引いた目で見ることが出来ます。
自分を客観的に見られるようになると、そこから少しずつ相手が入ってくる余地が生まれてくると信じています。

最後までお読み頂きありがとうございます!

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