【世界一チケットを取るのが難しい】ニューイヤーコンサートのウィーン・楽友協会とは
新年の初め、オーストリア・ウィーンでは、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートが開催される。
毎年有名指揮者を招いて行われるこのコンサートは、日本でもテレビ放送され、その会場である楽友協会の"黄金のホール"は、世界各国からのゲストで満席になり、華やかな新年の幕開けとなる。
前回・今回と2回にわたって、音楽の都・ウィーンでの音楽事情について取り上げているが、
前回は前編として、ウィーンの中で一番有名な歌劇場(オペラ座)である「ウィーン国立歌劇場(Wiener Staatsoper)」、
今回は後編として、ニューイヤーコンサートでも知られる「ウィーン楽友協会(Wiener Musikverein)」
について取り上げる。
ウィーン楽友協会(Wiener Musikverein)の歴史
ウィーン楽友協会は、1812年に設立され、正確には、協会およびその本部の建物団体のことを指す。
協会の正式名称はDie Gesellschaft der Musikfreunde in Wien (直訳するならば、ウィーンの音楽の友の協会)であるが、日本では「楽友協会」と呼ばれることが多い。
楽友協会内には、以下の3つのホールのほか、
・大ホール (Großer Musikvereinssaal グローサー・ムジークフェラインス・ザール)
1870年に完成。「ザール」はドイツ語で「ホール」の意味である。ホール内部の絢爛豪華な装飾から通称「黄金のホール」と呼ばれる。
・小ホール (Brahms-saal ブラームス・ザール)
「本当の宝箱」と呼ばれるほど、大ホールより優れたホールだとさえ言われたこともある。1937年にヨハネス・ブラームスを讃えて彼の名が付けられたそう。
・室内楽専用のホール (Gottfried von Einem-Saal ゴットフリート・フォン・アイネム・ザール)
1996年に完成。
2004年には、地下に4つのホールが建設された。これらのホールはコンサート以外にも、リハーサルやイベント、会議などにも使用できるようになっている。
1. 多目的ホール (Gläserner Saal グレゼアナー・ザール)
英語では、Glass Hallとなる。
2.多目的ホール (Metallener Saal メタッレネア・ザール)
英語では、Metal Hallとなる。
3.多目的ホール (Steinerne Saal シュタイネアネ・ザール)
英語では、Stone Hallとなる。
4.リハーサルやレセプション用のホール (Hölzerner Saal ヘルチェアネアナー・ザール)
英語では、Wooden Hallとなる。
(公式サイト より)
ニューイヤーコンサート
ウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートは、毎年1月1日にウィーン楽友協会の大ホール(黄金のホール)で行なわれるコンサートである。
冒頭にも書いたように、日本でも、NHKのテレビ・ラジオで放送される。ウィーンでのコンサートはマチネ(昼公演)なので、日本での放送時間は夜に当たる。
ニューイヤーコンサートの曲目は、主に、ヨハン・シュトラウス2世を中心とするシュトラウス家の楽曲である。曲目の選定は、ヨハン・シュトラウス協会会長やシュトラウス研究家などが集まって行われている。
このニューイヤーコンサート では、『美しく青きドナウ』(ヨハン・シュトラウス2世)、そして『ラデツキー行進曲』(ヨハン・シュトラウス1世)を演奏するのが習わしとなっている。
『美しく青きドナウ』の冒頭が演奏されると一旦拍手が起こり演奏を中断され、指揮者およびウィーン・フィルからの新年の挨拶があり、再び最初から演奏を始めるのも恒例となっている。
『ラデツキー行進曲』では、リズムに合わせ、観客も交えて手拍子をする。新年への期待感と華やかな幕開けにぴったりな曲であると筆者は感じる。
また、このコンサートは、世界一チケットを取るのが難しいと言われている。これには訳があり、定期公演やニューイヤーコンサートはスポンサーなどに手配されることが多いそうだ。これらのものが売られるうちに、価格が100万円以上する席も出てくるようになったそう。
特に日本人が会場に多い (テレビでも和装姿の女性をよく見かける)ことは非常に有名であるが、これは、日本企業がウィーン・フィルやオーストリアとの密接なビジネスパートナーである一つの証明でもある。
実は、ウィーン・フィルの公式サイトから、チケットを購入することもできるのだが、毎年凄まじい倍率の抽選となる。抽選は無料で参加することができるので、うん良く当たった場合には、定価で購入することができる。
ニューイヤーコンサートの申し込み可能なチケットの枚数は、上限2枚。チケットの価格は、ニューイヤーコンサートは35ユーロから1200ユーロだそうだ。申し込み期間は前年の4月1日から30日まで(2021年の場合)。
詳しくは公式サイトに、日本語で情報が載っている。
楽友協会ツアーに参加してみた
前回の記事でも書いた通り、筆者は9月に実際にウィーンを訪れることができた。
楽友協会でのウィーン・フィルのニューイヤーコンサートの様子は、日本にいる頃からずっと見ていたので、いつか会場に行ってみたいと思っていた。
残念ながらコンサートを見ることは叶わなかったのだが、ガイド付きツアーに参加することができたので、写真とともにご紹介したいと思う。
まずは、ウィーン地下鉄でカールスプラッツ駅に到着。
楽友協会はすぐに見えてくる (工事中だったのが少し残念)。
駅から徒歩3分、楽友協会の前に着くと、
ウィーンの名所に設置されている、オブジェがあった。この旗は、オーストリアの国旗の色であるが、ウィーンの街のものである。
足元には、作曲家であるグスタフ・マーラーのサインが。
正面玄関の左脇に入って行くと、ガイドツアーのためのチケット売り場がある。
筆者はすでにインターネットで予約をしてあったので、申し込みメールを提示し、入場チケットと引き換え。
13時のガイドツアースタートまで、少し時間があったので、もう一度建物とパチリ。
チケット売り場の近くには、楽友協会でのモーツァルトのコンサートの広告が載ったトラックも。
街中でもモーツァルトの格好をしたスタッフが、コンサートのチケットを売っているのをよく見かけた。
残念ながらガイドツアー中は、メインの「黄金のホール」以外、写真撮影が禁止されていた。筆者は、先に書いた小ホール (Brahms-saal ブラームス・ザール) 、4つの多目的ホールも見ることができたのだが、ここでは「黄金のホール」のみご紹介する。
まずは入り口の像たち。さすが「黄金のホール」というだけあって、隅から隅まで"金"である。
豪華絢爛という言葉がぴったりなホール。有名作曲家たちの石像が並び、背筋が伸びる。
いよいよ舞台の正面へ。これが、あのニューイヤーコンサートが行われる舞台である。これがテレビで見た光景か!と感動してしまった。
上を見上げると、眩しいほどの装飾の数々。
光り輝く天井は、どれだけ見ていても飽きない。
舞台の後ろには、とても立派なパイプオルガンもあり、この「黄金のホール」の魅力を何倍にも引き立てていた。
記念に一枚。一度でいいから、ニューイヤーコンサートでウィーン・フィルを聴いてみたいものである。
ガイドツアーは、ドイツ語、英語だけでなく、なんと日本語でも申し込みができる。それだけ日本人ファンが多いということなのだろう。
公式サイト(日本語) https://www.musikverein.at/ja/guided-tours
終わりに
いかがだっただろうか。前回に続き、ウィーン後編として、楽友協会について取り上げた。
"音楽の都"ウィーン。音楽が街に根付き、その伝統を守りぬくウィーンであるが、それを全世界にも発信し、人々を魅了している。
筆者がこの記事を書いている現在、オーストリア全土のロックダウンが発表された。パンデミックは中々終わりが見えないが、全世界の人が音楽を心から楽しめる日がくることを願っている。