【映画レビュー】おまえの罪を自白しろ
大物政治家の汚職を暴くために、誘拐が仕掛けられる話。色んなところでヘタだなと感じるような、ちょっとちぐはぐな作品だった。
しっかりした原作がある作品を映画化した時に起こりがちなのだけど、原作が大きすぎて映画の範囲内に上手く収めきれていないような感覚をこの作品にも感じた。説明が足りなくて、作り手が想定している所まで鑑賞者の理解が追いついていないのだろうなぁという感覚だ。原作のスケールが大きければ大きいほどそれを取捨選択するのは難しくなるだろうし仕方ないのだろうけど、この作品で言えば作り手の技術不足を感じてしまった部分も多い。
まず単純に、登場人物の立場や関係を最初に端的に説明できていない。大物政治家の堤真一が家長で、妻は亡くなっている。その子どもたちや配偶者は何人いてそれぞれ何をしているのか?これは重要だしそんなに複雑でもない事なのに、この人だれ?の状態が長すぎる。私は本当に最終盤まで長男も次男も父の秘書なんだろうと思い込んでいたら、長男は県議だった。というか、長男がいること自体を理解したのもかなり話が進んでからだった。政治の世界を描くとなると、どうしてもおじさん多めになって人物の見分けが付きにくくなるけど、それにしてももうちょっとスマートに説明して欲しいと思った。
キャストのハマりもいまいちだった。堤真一のイメージと演じた政治家は合っていなくて、もっとタヌキ親父みたいなタイプがやるような役だった。ケンティとか、若い刑事とか、全体の雰囲気や温度感から浮いちゃってるような役者もいた。これは決して本人たちが悪い訳ではなく、ちぐはぐな事が問題なだけだ。堤真一の子どもも、長男だけ雰囲気違いすぎて兄弟っぽくないよなぁとか。まあ、政治家を演じるおじさんたちは流石の貫禄だったが。
ストーリーも、あまり惹かれなかった。私がそもそも政治家に清廉潔白さを強く求めていないのが原因かもしれないが。犯人への同情を煽るような作りだったけど、あまり同情できなかった。全体の構成も、誘拐の解決のために奔走するパートが終わってからの部分を蛇足に感じてしまって、それならもっと汚職についてわかりやすく説明したり永田町の権力争いを楽しめるように、たっぷり時間を使って欲しかった。
そもそも政治を描くって、ものすごく胆力がいる事だと思う。そんな簡単に行く訳ないだろ……と少しでも思わせると冷めてしまう。
堤真一が演じる政治家の秘書たちが、ピンチの中で献身的に代議士を支えようとする姿や、全てが終わった後に心からねぎらう姿などは、悪者にも人望があってそれを支えようとする人たちにも信念があるんだよなぁと、物語の深みを感じたりもしたんだけどな。
『おまえの罪を自白しろ』 2.5
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