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華やぐ

 いつか観葉植物と暮らしたい。

 東京での生活を再開してからというもの、わたしの中で憧れに似た気持ちがすくすくと成長していた。だって、室内に緑があれば、おうち時間に癒しがあれば、きっと毎日が楽しくなると思うのだ。

 そんな折に中学の同級生と食事に行った。彼も地元を離れて暮らしているのだが、話の中でなんと自宅で植物を育てているらしいと知った。それもときどき話しかけたりしている、と。いいなあ。羨ましい。素直にそう感じた。

 すっかり影響されてしまったわたしは、ついに観葉植物を買う決心をした。ただし、ルールがひとつある。「お店で一目惚れをして買いたい」というものだ。

 インターネットで「観葉植物 初心者」などと検索すれば、おすすめの植物の候補がたくさん出てくる。優柔不断で石橋を叩いて渡るタイプのわたしにとっては、買い物をしようとすると事前に下調べしてからお店に行くことが常だ。でも観葉植物はこれから一緒に暮らすのだから、運命の出会いを大事にしたいじゃないか。

 それからというもの、時間をかけて何件かの花屋や植物屋をまわった。しかし心のセンサーは反応せず。「ここがちょっと違うなあ」などとあれこれ悩み、結局買えないまま帰路につく。その繰り返しだった。

 運命の気配を感じたのは五月のある晴れた日だった。ふらっと立ち寄った、最寄り駅近くのショッピングセンター。その一階の方隅に、小さな花屋を見つけた。季節の花々や観葉植物たちが所狭しと並んでいる。充実した品揃えに、「これはじっくり見よう」と思ったのも束の間。手のひらくらいの高さの、パキラの鉢に目を奪われた。小ぶりながら、背筋がすっと伸びているように見える。何より、若葉を精いっぱい広げている様子に愛おしさを覚えた。

 これにします、と店員さんに伝えたところ、「植物がお好きなんですか。ずいぶん熱心に見ていらっしゃったので」と尋ねられた。すっかり見入ってしまっていたらしい。恥ずかしい。

 店を出るときには、「可愛がってあげてくださいね」と言われた。これ、ポケモンセンターでぬいぐるみを買ったときと同じセリフです。

 そんなこんなで観葉植物と暮らすようになってから、二ヶ月ほどが経った。葉の数も順調に増えて、とても元気そうだ。懸命に生きている姿を見ると、わたしもがんばろうと気合が入る。

 この間のわたし自身の変化といえば、朝起きてまず一番にカーテンを開けるようになったことだ。そして、帰宅したときには「ただいま」と言うようにもなった。

 家族って、誰かと暮らすことって、本当に素敵だ。心からそう思う。

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