短歌+エッセイ「栞」
読んでいる途中の本がすぐにたまってしまう。そのそれぞれに、栞が挟まっている。読書の相棒たちだ。
栞紐のあるタイプの本はそれを使う。本のしっぽのようでかわいい。ない場合も、文庫本などには付録でついてくることがある。ミニ知識が書いてあったりして面白い。
自分でも購入するし、お土産やプレゼントとしていただくことも多い。行ったことのない土地の香りを感じながら本を読めるのがうれしい。
それぞれの本にふさわしい栞を選ぶのも楽しい作業だ。「宇治源氏物語ミュージアム」で買った和紙の栞を源氏の解説本に、スナフキンの栞をムーミンの本に、など。
押し葉や押し花は意外ともろくて栞として実用的ではないが、挟まっていると思い出がよみがえる。京都・奈良へ修学旅行へ行った際に京都駅近くで買った堀辰雄の『大和路・信濃路』(新潮文庫)に挟まっている何枚もの葉っぱには、それぞれ拾った場所と日付まで書き込んであって念入りである。捨てるに捨てられない。
コンサートや展覧会などのチケットをわたしはとっておくほうだ。栞としてちょうどいい形状をしている上に、うつくしいことが多い。
写真に撮ったのは「コレクション」のごく一部。
右端から、大学時代の友人が新婚旅行土産にくれたモン・サン・ミシェルの栞、仙台の書店「火星の庭」で出会った手織りの栞、秋田県仙北市角館で買った杉材の栞、従妹にプレゼントされた「星の王子さま」のブックマーク、高校時代の友達が新婚旅行土産にくれたパリの栞。横向きになっているのは、同人誌仲間の豊増美晴さん手製の栞で、読めないと思うが私が紫式部の小倉百人一首歌を訳した詩に、イラストレーターの甲斐千鶴さんが寄せてくれた美麗な絵がプリントされている。
どれも宝物だ。机の近くの定位置に大切にしまってある。
ただ、困ったことに机からはなれて別の部屋で読書していることもある。栞を持たずにカフェなどで本を読み始めてしまうこともある。そんなとき、つい手近にあるメモ用紙だとか、レシートなんかを挟む。挟んだままにする。時間が経つと、それはそれでいい思い出であり、やっぱり宝物で、相棒だと思える。
そんなわたしの第一歌集(2002年刊行)のタイトルは『草の栞』だったりする。
【短歌】
ひとひらの優しさとしてたまはりし栞を春の詩集に挟む
※初出「短歌人」2022年4月号【私の相棒④】(加筆修正あり)
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