ビバ!浄土ヶ浜
浄土ヶ浜に行った。浄土ヶ浜は岩手県の宮古にある。盛岡からだと高速バスで1時間45分くらい。そこそこ遠い。
盛岡は曇っていたが、宮古につくと晴れていた。僕は晴れ男なのである。お腹が空いていたのでまずはランチを食べる。シートピアなあどという道の駅にて。すぐそこに海が見える。
海は久しぶりに見た。秋田のとき、男鹿に行って以来だから、一年ぶりくらいか。海はいい。天気がいいので太陽の光を受けて海面がきらきらと輝いている。その向こう側には緑いっぱいの山。青と緑のコラボレーション。あまりにも健康的な景色に癒される。
宮古といえば瓶丼である。瓶の中に入った海鮮を丼の上にぶちまける。海鮮ネタを食べた途端、甘い、と思う。醤油が甘いのかと思ったけれど、ネタ自体が甘いようだ。
瓶丼って昔からあるものかと思ったけれど、宮古育ちのUさんによると割と最近できたものらしい。調べてみると2018年10月にスタートとある。6年も経っていない。そう考えると瓶丼のビジュアルはいかにも映えを意識している。
そのあとはフェリーに乗って浄土ヶ浜へ。よくわからないJポップが流れている、と思ったらよく知っているサビが流れて浜崎あゆみだと知る。昔それなりに聴いていた曲のはずなのに、サビ以外はよくわからない。浄土ヶ浜に向かうフェリーの中で浜崎あゆみ。場違いのようでありながら、そのちぐはぐな感じが逆に何とも観光地という感じである。
フェリーでうみねこ用のパンを買うが、7分くらいで浄土ヶ浜に辿り着いてしまう。うみねこは見かけなかった。うみねこにあげるつもりで袋を開けてしまったうみねこパンを握りしめたまま浄土ヶ浜に着陸する。
青かった海が、浄土ヶ浜の周辺は緑色に見えた。綺麗である。浄土ヶ浜というだけのことはある。荒く削られた岸壁が白い。青森の仏ヶ浦に似ている。仏とか、浄土とか。あの世に近づける場所が日本には割とたくさんある。
青の洞窟というのが名所らしいので行ってみる。救命胴衣を着て、さっぱ船という小舟へ。ここでウミネコパンチャンスがあった。ウミネコがたくさん舞っている。前の方に座っていた人が親指と人差し指でかっぱえびせんを持ち、ウミネコがくちばしの先でそれをうまくキャッチして飛び去る。
僕は怖いので、ウミネコパンを投げ捨てるように海に飛ばす。ウミネコは見向きもせず、パンは海のどこかへ消えた。
そして青の洞窟である。荒く削られた白い岸壁が近づく。そこに巨大な割れ目があり、小舟はその中へ進んでいく。
この青の洞窟は八戸穴ともいうらしい。昔、この穴に入っていった犬が、数年後八戸市で見つかった為、この穴は八戸まで続いているということになり、八戸穴と呼ばれるようになったとか。でも実際はこの穴は少し進むと行き止まりになっている。
太陽の光が穴に射しこみ、海水がブルーに輝いている。白い岸壁の近くはグリーンに見える。浄土ヶ浜まで行って、そこからさらに小舟に乗り換えて。わざわざ行った甲斐のある景色がそこにはあった。日常を生きていたのでは絶対に出会えない景色である。
世界には美しい場所がたくさんある。それはやっぱり希望で、その希望に触れたくて僕は時々旅に出るのかもしれない。
戻って浄土ヶ浜をぶらぶらと歩く。砂浜のかわりに白い石がたくさん敷き詰められている浜。
海に向かって水切りをするが、うまくできない。石は海の中にぽしゃんと沈んでしまう。同行のUさんは水切りがうまく、海面に石を何回も飛び跳ねさせていた。
帰りのフェリーでは、ウミネコタイムがたくさんあった。フェリーの最後尾に立ち、ウミネコに向かってパンをちぎって投げる。うまくウミネコの口に投げ入れられたら勝ち。それはそんなゲームだった。後半はコツが掴めてきて、ウミネコにたくさんパンを食べさせられて満足。
フェリーから降りたらひと旅終えた気分だった。何だか少し成長した気分である。車に乗り込み、三王岩へ。浄土ヶ浜と比べるとマイナーな観光スポットであるけれど、マイナーであればあるほど僕のマイナー魂は燃える。メジャーよりもマイナーの方が格好いい。
三王岩を見下ろせる場所に辿り着くが、そこからではよく見えない。下に向かう階段があるのでもちろん降りる。階段を降りる毎に三王岩の全貌が明らかになる。
ただの岩、そんな風に聞いていたけれど、それがただの岩であるはずがなかった。波と風により削られ形作られたその三つの岩は、自然の作り出した芸術品だった。青い空と白い雲の中にそびえるその岩は、いつまでも見ていたくなるような荘厳な輝きを放っていた。
そんな風にして宮古の街を満喫した。
Uさんは何もない田舎だ、というけれど何もないはずがない。
海があって、浄土ヶ浜があって三王岩があって、美味しい海鮮がたくさんあって、いい居酒屋もたくさんある。
宮古は素敵な街だった。
夜はUさんと三軒はしごした。刺身が美味かったし、酒も旨かった。たくさん酔っぱらった。最後はスナックだった。美人の親子がやっている、旅先のスナックという感じだった。
酔った客がカラオケを歌う中、ドレスを身に纏った美人の娘がフロアを歩く所作が美しかった。
いい街だった。また行きたい。いつか、また行こう。