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【読書記録】どこかリアルな恐怖。『絶叫』葉真中顕
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光文社文庫
あらすじ
マンションで孤独死体となって発見された女性の名は、鈴木陽子。
刑事の綾乃は彼女の足跡を追うほどにその壮絶な半生を知る。
平凡な人生を送るはずが、無縁社会、ブラック企業、そしてより深い闇の世界へ……。辿り着いた先に待ち受ける予測不能の真実とは!?
ミステリー、社会派サスペンス、エンタテインメント。
小説の魅力を存分に注ぎ込み、さらなる高みに到達した衝撃作!
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感想
葉真中顕先生、好きです。
好きな作家に出会えた喜びをヒシヒシと感じています。
この作品もすごかった。この前に読んだ『ロスト・ケア』も最高でしたが、『絶叫』もすごい。ほんと絶叫です、陽子の絶叫が聴こえてくる。
ネタバレを含みますので、これから読む人はご注意ください☆
孤独死の悲惨さ。
物語の最初から、結構衝撃的です。
孤独死にはなりたくないな、と。
孤独死の場合、放置された時間が長いことが多いので、人の形を留めていない、ことが多いとか。。飼い猫に食われて分解されると死因を特定も難しいとか。
修羅場をくぐってきた刑事でさえ、なるべく遭いたくない遺体らしいです。
でも孤独死って増える一方ですよね。。。
陽子の壮絶な人生
夏休み数日前に、ふらっと出てって死んでしまった弟。
その弟を溺愛していた母親。
陽子はせめて母親には愛されていてほしかったけど、
「まあ、私は男の子が欲しかったんだけどね」
裏を返せば女の子なんて…つまり、あなたなんて…いらなかった、とすら取れる言葉を平気で投げつけた。
あなたの母は、そういう人だった。
お父さんが久々に話しかけてきた、朝の描写が印象的です。
保険証と通帳、印鑑を持ってお父さんも蒸発してしまう。多額の借金を残して。
専業主婦の母と残された陽子。
警察に相談しても、未成年や何か事件に巻き込まれた形跡がある場合以外は、積極的に探してもらえないという事実。
むやみに居場所を突き止めることは、人権侵害にあたる可能性がある、とは驚きました。
それからの陽子の人生が凄まじい。
売れない漫画家の妻→夫の離婚、子どもが出来ず離婚→コールセンターの派遣社員、正社員になろうとハローワークで勧誘され→生保レディ→自爆営業(枕営業)を繰り返し解雇→デリヘル嬢、帰宅途中に襲われヤクザの娼婦→連続保険金殺人犯・・・・
読めば読むほど陽子の人生が苦しい。
悪いこと悪い人は惹かれるようにやってくる。
陽子は幸せになれるのか…。
彼女もただ、平凡な幸せが欲しかったはずなのに。
愛されたかっただけなのに…。
終わり方もよいです。個人的に好きでした。
終盤、「!???」となりますが…(笑)
最後までお読みいただき、ありがとうございました(*^-^*)