見出し画像

落ちこぼれの自分のつまらない話

時間をゴミのように捨てていく毎日。そんなものにはもううんざりだ。だけど、有効な時間の使い方こそ分からない。

1人部屋に篭って何となくベットの上でゴロゴロするだけの日々が、かれこれ8ヶ月は過ぎている。そろそろやばいとは思いつつも、何かをする訳でもなく、またスマホをいじる。「何となく」という霞の中に消えていった今までの時間と、過ぎ去っていっている今のことを考えると、今にもそこから飛び降りてしまいそうだ。
起きた私を誘ってくるあの縦長の窓。無機質な表情がより一層私の何かを掻き立てる。高くてせいぜい20mぐらいだから、飛び降りたとしても残るのは痛みだけで、死ぬまでには達しない。それは馬鹿な私にだって分かる。変なところをうてばもしかしたら、、、っていうだけで、確実では無い。もしなにか脳の障害でも残ったりしたら、さらに私は自分に絶望することになる。いっそロープでも買ってくるか、、、なんだかそれもイマイチやる気が起きない。

 私が学校に行かなくなってから8ヶ月過ぎた今でも、勉強には手が付かないままだ。このままでは未来の自分が大変なことになる。そんなことが分かってはいても、服やプリントがちらかったこの汚い部屋を見ると、何にもやる気を無くしてしまうのだ。机の上は本やプリントの山積み、そしてティッシュの箱?、、、、勉強なんか出来る状態じゃない。
さぁ、部屋を片付けよう。めんどくさいけど、、生きることには中途半端で、死ぬこともできず、こうしてだらだら過ごすのにはもう飽きたのは案外事実だし。Bluetoothでスマホとヘッドホンを繋ぎ、お気に入りのEDMを聞きながら、ちらかった服を片付け始めた。

私が中学一年生の時は勤勉で、とても真面目な奴だったからか、不登校という名前には縁の無い存在だと勝手に思っていた。いや、不登校に自分がなるということすらあまり考えた事が無かったと思う。
中学校ではいつも明るく、誰に対しても変わらない表情で接することを心がけた。自分だけがそうなんじゃなくて、みんながそんなふうにして学校で振舞っていたから、それをするのは"当たり前"だったのだ。
中学一年生の前半期はバレーボール部に入っていた。その時私を襲ったのは、厳しい上下関係と週二で遠征という地獄だった。先輩と名乗るたかが産まれて一二年しか違わない同じ子供に、「それ持ちますよ。」だとか、時を見計らっては水筒やタオルを丁寧に渡したりした。

「先輩には礼儀正しく敬語で話して、先輩を待たせるのは絶対禁止、すれ違ったら挨拶を。」

そんなことを心で唱えてはできるだけ実行した。でも、そんなことをしたからといって褒められることは無かった。それが"当たり前"だったから。そんなふうに"当たり前"をこなして、週に二回ほど車で一、二時間の所にある中学校の体育館に行っては、ボール拾いの日々だった。
遠征する場所から帰る途中の車の中で、四人ぐらいで話が盛り上がっている時、先輩にまちがえて「それな!」と、言ってしまったことがあったが、あの時は焦った。もちろん先輩からは、「今、それなって言ったよね。」と、怖い顔で追求されたが、意地でも認めまい。と踏ん張り、車内の空気が最悪な中、徹底的に否定し続けた。その先輩は次の時からはケロッとした顔をしていたのて、胸を撫で下ろしたのを覚えている。

めんどくさい人間関係と、楽しくない部活とあって、ストレスが溜まりに溜まる毎日だった。それに加え、塾もピアノも行っていたあの時の自分は、異常だったと今なら思える。
自分の意思で部活も塾もしたのだが、やはり無理があったみたいだ。まぁ、元から上手くいくなんて思っていなかった。上手くいかせようとはしたけれど、、、、それももう仕方ないことだ。そう、考えてもどうしようもない、、、、。

今から10年くらい前、おばあちゃんの家に居たら、母が嫌そうな顔をしながら、
「 そこの橋のところにパパが来たんだって。ばぁば達と一緒に行ってきたら。」と言った。 全速力で走ったら、あと少しの所で転けてしまって、パパが頭上で笑った声が聞こえた途端、ふゎっと体が宙に浮いたのを覚えている。後ろを振り返ると、白い歯剥き出しで笑っている祖父母達がいた。

私が産まれる前に、母とパパは離婚している。だけど、今でもパパは、私や兄の誕生日とクリスマスには忘れずに家の近くの駐車場に訪れるのだ。

でも、もう私は信じていないのだ。誰も信じることが出来なくなったから。

考えてもどうしょうもない事ばかりを考える。特に意味も無い筈の命に翻弄されている自分があまりにも情けなく、そして惨めだと思った。なんでも余裕に生きて行けたならいいのにな。

フローリングの上に座り込んだまま私はずっと一点を見つめていたようだ。部屋を見るともちろん片づいた形跡はなく、そこにはいつもの汚い部屋があるだけだった。手にとっている服からは、数ヶ月分の汗の匂いがモワッと立ち込め、自分からできるだけ遠くを目掛けてその服を勢いよく投げた。

あの縦長の窓からは、オレンジ色の淡い光が、ぼんやりとしたままの部屋でふわふわと浮かんでいた。自分は本当に生きているのだろうか。もしかしたら体があるだけの幽霊かも知れない。と、私は今日もそう思ったのだった。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集