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堂林翔太の覚醒に迫る

新型コロナウイルスの関係で異例の開幕となった2020年シーズン、広島はここまで投手陣が痛打されるケースが増え、思うように勝ち星が拾えず、中々波に乗れない日々が続いています。

そんなチーム状況の中でも、大きな輝きを放つのは堂林翔太で間違いないでしょう。
シーズン前の対外試合では3本塁打/OPS.994と活躍を見せ、勢いそのままにシーズンに入っても打率4割台をしばらくキープし、セリーグの首位打者に躍り出ています。

昨年までは期待されながらも、一軍でその力を発揮できませんでしたが、今年は後輩の鈴木誠也に師事したことが功を奏したのか、打撃改造に成功した成果が表れていると言えましょう。

その打撃について何が進化したのか、以下にて考察していきます。

1.以前の考察

シーズン開幕前の4月に、オープン戦までの好調を受けて上記のようなnoteを作成しました。
そこで下記のような結論を導き出しました。

・低コンタクト力と低長打力
→打つべきボールに絞ってハードコンタクトできていることで、長打力は向上を見せている
・変化球への脆さ
→変化球の打撃成績は相変わらずの低さで、投球割合の非常に高いストレートを捉えての好成績だけに、変化球への脆さは相変わらず
・低めボールゾーンの見極め
→手を出すケースは減少しているが、変化球の投球割合が低いという要素もあるため、本当に見極めが向上しているかは懐疑的
・捻りすぎの打撃フォーム
→完全に抜けきってはいないが、上半身下半身ともに捻りは抑えられ改善傾向にある

当時はまだ懐疑的な部分はあるものの、例年より間違いなく期待しても良いと結びました。
この考察にシーズン開幕後の結果も踏まえた、プラスαを加えていきたいと思います。

2.好成績の要因を探る

2020年ここまでの好成績の要因について、以下にて考察を加えていこうと思います。

※成績は7/26までのものを使用

①変化球対応の向上

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3月までの段階では、高い打撃成績は元来得意であったストレートが多く投じられたところを捉えて稼ぎ出したもので、母数の少ない変化球対応については疑問符としました。
実際ここまでの成績を見ても、対速球系(ストレート/シュート/ツーシーム)打率は打率.531(49-26)と驚異的な成績を残しており、ここが好成績の源泉であることが窺えます。
ファストボールは、堂林に対して最早投げてはいけないボールへとなりつつあるのです。

加えて、ストレートへの対応力が上がったことによる相乗効果からか対変化球の成績の向上も見られ、ストレートを抜きにした成績を見ても、打率.272(59-16)と昨年までからは格段の進歩を見せています。

投球割合が決して得意のファストボール系に偏っているわけでもないため、以前は疑問符とした変化球への脆さは、克服しつつあると言えるのではないでしょうか。

では、なぜこのような向上が見られたかという点について考えてみると、フォーム改良によって、ボールをより長く見れるようになったことが大きいように思います。

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これまでは打撃フォームにおいて、これまでは上半身に加えて下半身まで大きく捻ってしまい、動きのベクトルが同じになってしまっていたために、割れのフェーズを作り出すことができず、少しボールを抜かれると弱い打球しか飛ばない状態でした。

それが今年は捻りを小さくし、下半身も捻らなくなって上半身と下半身の動きのベクトルが逆になったために、割れのフェーズを作り出すことができるようになりました。
これにより、以前のようにボールを抜かれても、グッとワンテンポこらえてボールを捕まえられるようになり、変化球対応が向上したということです。

上記記事で「技術というか、僕は今まで強引に引っ張りにいくというバッティングだったんですけど、インサイドの球でもセンターに打ち返す、センター中心のバッティングをしようとした、その結果がああいうバッティングにつながったと思っています」と語っているように、意識の変化という部分も大きいのかもしれません。

加えて技術的には、内田順三氏が「徐々に出番を失った昨年までは、打たないといけないと力み、左足をドンッと強くステップして打っていた。打撃フォームにもタイミングの取り方にも柔軟性がなく、硬かった」「前足を少し前に出したりしながらリズムを取ることで、下半身始動のスイングができるようになったうえ、しっかり軸足の右足に体重を乗せてからステップしている。肩が開かず、内側からバットを出せているのはそのためです」と語るように、タイミングの取り方に柔軟性が生まれ、様々なボールに対応できるようになったことも大きそうです。

これまでは、ストレートを確実に叩いて好成績を叩き出してきましたが、直近がそうであるように、変化球の割合が徐々に増えてきています。

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週別の投球割合を見ると、出場試合の少ない6/19wと6/30wを除くと、直近の7/21wはFA%とFT%を足したファストボール系の割合がこれまでで最小で、変化球の中では曲がる系が減少し、CH%/SF%/SI%を足した落ちる系の割合が大幅に増加していることが分かります。

ここで低めの変化球に対して追いかけるのではなく、これまで通り目付けを高くして我慢し、1試合1打席で1球は来るであろうストレートや高めに浮いた変化球を、どれだけ高い確率で捉えられるかが活躍のカギとなることでしょう。

②インサイドの捌き

ここまでで特徴的なのは、鋭さを増したインサイドのボールの捌きという点もあります。

梅津晃大から放った2号本塁打や、吉田大喜から放った右中間への二塁打に代表されるように右中間に大きい打球を放つこともできれば、秋山拓巳から放った5号本塁打のように素直に引っ張り込むこともできており、特にインコースの真ん中の甘めのゾーンは打率.643(14-9)と高打率を記録しています。
高校時代から評価されてきたインサイドの捌きが、ここにきて復活しつつあるのです。

その裏には、上記記事にあるように「バットの角度をギリギリまでキープして最後に回転すること。そこをもう少し意識してみろ」という新井貴浩氏のアドバイスが効いて、今まで以上に軸回転で身体をクルッと回して打てていることもありそうです。

インサイドの捌きに余裕が生まれることで、アウトサイドのボールへの対処により注力できていることが、変化球対応の向上を支えている側面もあるのかもしれません。

3.今後の課題

ここまで一か月好調を維持してきましたが、これがそのまま続くほどプロの世界は甘くないでしょう。
そこで想定される今後の課題としては、以下の二点が考えられます。

①苦手な落ちる系のボール連投に耐えられるか

上述したように、7/21wから落ちる系のボールを投じられるケースが増加しており、若干崩されつつあるのかこの週は打率.240(25-6)と当たりが止まりつつあります。
おそらく今後も同様の攻め方が続くものと予想されます。

これに対し、目線を上げてファストボール系や浮いた変化球に絞って、対応できるかがカギとなるでしょう。
自分の絞ったボールが来なければ三振になっても仕方がない、と思うくらいの割り切りも必要かもしれません。

ここを超えてしまえば、相手からしても攻め手がなくなるため、是非超えてもらいたい関門です。

②高BABIP状態がどこまで続くか

データ的に見ると、ここまでの堂林のインプレー打率を示すBABIPは.450と非常に高い数値を記録しています。
だいたい長いスパンで見ると.300に落ち着くと言われるこの指標で、.450という数値はあまりに高すぎるため、ここはある程度低下してくるはずです。

とりわけゴロ性の打球が三遊間に飛んでいくケースが多く、引っ張り方向に飛んだゴロの割合は66.7%を記録しています。
ここに目を付けられ、各球団が三遊間を締める守備シフトを敷いてくると、BABIPが一気に低下し、打撃成績も伸び悩んでしまうかもしれません。

ただそこで変に逆方向ばかりを狙おうとするのではなく、これまで通り打球方向を過剰に意識することなくセンターを中心に打ち返していく意識が残っていれば、シーズントータルでは必ず好成績が付いてくるはずです。
ですので、極力意識は変えることなく、悪くなっても今年ようやくできた打撃の幹の部分に戻ることを続けてほしいものです。

そうすれば、堂林、鈴木誠也のツインバズーカは新広島名物となることでしょう。

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