【理科教員の勝手気ままに読書メモ】#5 尾嶋好美編訳・白川英樹監修『「ロウソクの科学」が教えてくれること』
はじめに
学校の理科の授業で学んだはずのことを、もう一度学び直したいという方
新しい視点を身につけたいという、知的好奇心に溢れた方
授業準備をされる際に、参考にしたい本をお探しの学校の先生方
今まさに自然科学を学んでいる最中の学生・生徒の皆さん
こういった方々のために、1人の理科教員としてオススメの本を、勝手気ままにご紹介。
さて今回ご紹介するのは『「ロウソクの科学」が教えてくれること』。
これは、イギリスの大科学者・ファラデーによる講演録『ロウソクの科学』を図解したもの。
そしてこの本の監修をされているのがノーベル化学賞受賞者・白川英樹先生。
だったら読まずにはいられなかったので、印象に残ったところと感想についてつらつらと。
ファラデー『ロウソクの科学』について
今回紹介する『「ロウソクの科学」が教えてくれること』は、ファラデーの『ロウソクの科学』という本(講演)の解説書に当たる。
原著『ロウソクの科学』については現在、上の写真にある2種類の訳本が出版されている。
ちなみに、私立中高一貫校で、理科の夏休みの課題としてこの読書感想文を書くというところもあるんだとか。
『ロウソクの科学』は、ファラデーが1860年に行ったクリスマス・レクチャーの講演録で、6講に分けて著されている。
中身は平易な言葉で記されているものの・・・
読みにくい。
というのは、そもそもファラデーの講演録ということで、ファラデーが話したことをそのまま記しているのだろうが、1講1講の文章が長く、途中で区切り目がないので、読むのに疲れてしまう。
あと、文庫本には図が少なく、文章に著されている実験についてイメージがしづらい。
これは私自身の読解力のなさの問題なのだと思うが、メモをとりながら読まないと理解できないのでは?と思った。
それゆえ、今回はあえてその解説本を紹介するのである。
印象に残ったところをつらつらと
1.1本のロウソクから広がる化学の奥深さ
最初はロウソクが燃えるしくみについて著されている。
そこから状態変化、燃焼のしくみ、燃焼で生じる水の性質、気体の性質、ボルタ電池、電気分解のしくみ、質量保存の法則まで話題が広がっている。
講演の中では化学自体の奥深さをファラデーは魅せているが、研究熱心なファラデー自身の奥深さが表れている。
2.ロウソクが燃えるしくみは深い
恥ずかしい話、私は理科の教員を務めていながらも、ロウソクが燃えるしくみを全然理解できていなかった。
この本を読んで、まとめてみると下の図のような感じになるのだろうか。
(間違っていましたらご指摘お願いします)
① ろうそくの芯が燃えて、下のロウが溶ける。
② 溶けたロウが毛細管現象で芯の周りを昇っていく。
③ ロウソクの炎で周りの空気が温められて上昇する。
④ 冷たい空気が下へ沈み、ロウソクの芯の根本の方に入り込む。
⑤ 入り込んだ冷たい空気がロウの外側を冷やす。
⑥ ロウソクの芯の周りにくぼみができる。
上の図を説明すると、このようになるのだろうか。
確かに、なぜロウソクは「燃え続ける」のかという疑問はあった。
この本を読むと、ものすごい深いしくみなんだなあということを改めて思った。
3.実験の説明では図・写真が必要
原本『ロウソクの科学』では文章が長く、図が少ないので理解しづらいが、この本では『ロウソクの科学』で綴られている実験を実際に行っている写真があるので分かりやすい。
もっと言えば、ファラデーの『ロウソクの科学』を最初から読む前に、前提としてこの本を読んでおくと理解が深まるのかもしれない。
雑記
この本は中学校レベルの内容に当たる。
この本を読むだけでも中学校レベルの化学の理解が深まる。
化学反応について基礎から学んでみたいという大人の方にとっては、この本は最適。
私の講座のゼミ生さんにもオススメしないとな。
この本の詳細はこちらに紹介されているのでご覧あれ。
https://www.sbcr.jp/product/4797397482/