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アクションゲームの作り方:ジャンプアクションとスラッシュアクションの違い

アクションゲームを作るとき、同じ「アクション」というジャンルでも、そのゲームがどんな操作感や演出を重視しているかで、制作フローが大きく変わります。
たとえば、近接攻撃主体でコンボを華麗につなげる“スラッシュ系”と、ジャンプによるステージ攻略を中心にした“ジャンプアクション系”では、ゲームデザインに関わる職種やアニメーションの扱い方がまったく異なることが多いです。
今日はそれらの違いについて、実際の経験をもとに解説していきます!


スラッシュ系アクションにおけるアニメーターの重要性

私は以前、スラッシュ系のアクションゲームの開発に参加していたことがあります。そこで痛感したのは「アニメーターがゲームの核心部分を握っている」という事実です。ボタンを押して攻撃するとき、何フレーム目で攻撃判定を出すか、どのタイミングで硬直を入れるか、といった要素はすべてアニメーションに直結していました。アニメーションの遅れはコンボのもっさり感につながり、逆にテンポが良ければプレイヤーは爽快感を得やすいです。

実際、当時の開発現場では「アニメーターの方が自分でゲームデザインを詰めていく」ことが当たり前でした。ゲームデザイナーは作品の方向性を示したり、コンボ数や攻撃種類などの大まかなコンセプトこそ共有しますが、フレーム単位での仕様書を細かく用意することはほとんどなかったです。
結局、最終的に「当たり判定が出始めるフレームはここ」「攻撃後の硬直はここまで」といった細かい調整をするのは、アニメーターとプログラマでした。

また、敵キャラクターの動きに関しても同様で、いつ攻撃モーションが始まるか、プレイヤーがパリィや回避をする余地は何フレーム分あるかなどのタイミングは、敵のアニメーションが決め手になります。だからこそ、アニメーターはただ動きを作るだけでなく「この攻撃モーションは開始から何フレーム目で予兆をしっかり見せ、次のフレームでプレイヤーに回避行動を取るチャンスを与えて、その後一気に振り下ろす」など、ゲームデザインを体感的に組み込みながらアニメーションを作っていくわけです。

ジャンプアクションの特徴とデザイナーとの連携

一方で、ジャンプアクション系のゲーム作りは、スラッシュ系とはまったく違う流れになりやすいと感じています。ジャンプの高さや移動速度、壁につかまる判定などは、細かくゲームデザイナーがパラメータを調整することが多いです。私がアクション要素の強いジャンプ系ゲームを作ったときは、キャラクターの挙動とアニメーションをなるべく切り離すようにしていました。

  1. ゲーム内でジャンプがどれくらい飛べるかはプログラマが数値を設定し、

  2. ゲームデザイナーがひたすらテストプレイを繰り返し、

  3. パラメータが確定した後にアニメーションをつける

というフローでした。

アニメーターはそこまでフレーム単位の拘束がなく、「見た目の動きがゲームの実際の挙動と大きくずれなければOK」とされることもしばしばありました。この理由としては「ルートモーションを使わない設計をとると、ジャンプなどの挙動を数値ベースで決めやすい」からだと考えています。

補足:ルートモーションとは?
ルートモーションとは、アニメーションデータに含まれる「キャラクターが移動する位置や向きの情報」を、ゲーム内の実際の移動に直接反映させる仕組みです。たとえば、走るアニメーションの足運びに合わせてキャラクターを移動させる場合、足が地面をしっかり踏んで進んでいるように見えやすいので、ビジュアル上のリアリティを高められます。一方で、アニメーションの動きに合わせる分だけ自由度が下がり、素早い方向転換や細かい操作をしたいときにレスポンスが遅れがちになるなどのデメリットもあります。

キャラクターの移動やジャンプ速度をアニメーションではなくプログラマ側のパラメータで管理するため、ジャンプアクションは細かいステージギミックに対応しやすいです。その分、ゲームデザイナーがたびたびパラメータを修正し、エリア間の距離や段差の高さを微調整して「遊びやすさ」を突き詰めることになります。逆に、アニメーターは「足場に乗る動作が自然に見えるように手足を動かす」程度で済むことが多いため、スラッシュ系のようにアニメーターがゲームそのものをデザインする場面は少なくなる印象です。

シューティング系アクションとの比較

TPSやFPSなどシューティングに近いアクションの場合は、どちらかというとジャンプアクション寄りだと考えています。キャラクターのアニメーション自体はそこまでゲームデザインに直結しないため、レベルデザイナーやプログラマが射線やカメラの挙動を調整しながら、敵の配置やプレイヤーの視界を決めていくことが多いです。

武器の発射アニメーションやリロードアニメーションなどは見た目の演出として重要ですが、プレイヤーの操作感や当たり判定は数値で管理されることがほとんどだと思います。(※ここでいう当たり判定は、キャラと地形の当たり判定のこと。キャラと弾の当たり判定はキャラの身体に細かく付くため、アニメーションに多少依存する)
そのため、スラッシュ系のようにアニメーションとフレームごとの判定が密接に絡むわけではなく、全体的に「ゲームデザイナーとプログラマが主導する」という構造に近いです。

開発初期に押さえておきたいポイント

こうした流れを振り返ってみると、アクションゲームを作る際は「メインアクションが何か」をまず第一に決めることが大切だと思います。スラッシュ系のようにアニメーターがゲームデザインを握るなら、アニメーション制作に十分な時間とテストプレイ環境を用意する必要があるでしょうし、ゲームデザインができるアニメータをチームに入れる必要があります。
逆に、ジャンプアクション系のようにパラメータ調整が肝になるなら、ゲームデザイナーがこまめに試行錯誤を繰り返せる仕組みを整えることが重要だと考えています。

私自身、最初にジャンプアクションの制作に関わって、ゲームデザイナーが細かいパラメータをいつも調整している様子を見ていました。
その次にスラッシュ系アクションを担当したので、スラッシュ系アクションにおいても、「ゲームデザイナーがすべて指示を出して、プログラマとアニメーターはその通りに動くのかな?」という先入観を持っていました。
しかし、実際にはアニメーターがほぼ“演出とゲームバランス両方”を背負っており、そこにプログラマが寄り添う形でゲームの完成度を高めていました。ゲームデザイナーは、たまにプレイして助言を言う程度の役割でした。

もし、この作り方の違いを知らずに進めていたら、開発はうまく進まなかったのではないかと思います。ゲームデザインと制作プロセスは表裏一体、ということです。

ということで、アクションゲームにおいては「どこをゲームの軸にするか」を早い段階で共通認識にしておき、それに合ったチーム編成をすることが大事だと感じました。もし自分の作りたいゲームがどんなアクション要素を核にするか迷っているなら、まずはそこをハッキリさせて、誰が主導権を握るか、どこを重点的に制作期間を割くかを整理するのが良いと思います。

まとめ

アクションゲーム開発には多様なアプローチがあるからこそ、そこにクリエイターの個性が色濃く反映されると感じています。
チームで一致団結し、魅力的なアクションを実現するためにも「ゲームの核心」を最初に決めておくことが、完成度を左右するのではないでしょうか。

皆さんがアクションゲームを企画・開発するときの参考になればうれしいです!


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