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炎上するプロジェクトの共通点
今日はちょっと刺激的なトピックです!
「炎上してしまうプロジェクト」に共通するポイントについて、僕なりの視点でお話ししたいと思います。
ゲーム業界で長く仕事をしていると、成功例だけでなく、スケジュールが大幅に遅れたりメンバーのモチベーションが落ちたりして崩壊寸前になるプロジェクトとも出合ってきました。
ただ、そんな厳しい状況になってしまうプロジェクトには、ある大きな共通点があると感じています。
結論から言うと、それは「リーダー(ディレクター)の問題」がかなりの割合を占めるということです。もちろんメンバーのスキルや予算の都合など、いろいろな要因はあります。でも、最終的にプロジェクトの方向性を示し、メンバーを導く役割を担うのはディレクターですよね。ここがうまく機能していないと、炎上確率は一気に高まると僕は考えています。
方向性を示せないディレクターが招く混乱
「ゲームとして何が面白いのか」「どういうポイントをユーザーに楽しんでもらいたいのか」がぼんやりしている状態で開発に突き進むのは、とても危険だと思います。
例えばアクションゲームを作るはずなのに、突如ミニゲームのポーカー部分に注力しはじめてしまうなど、“やりたいことが多すぎて軸が定まらない”ケースは特に要注意です。あれもこれもと要素を詰め込みすぎると、最終的にはどこにも新鮮味のない作品になりがち。
また、ディレクションが曖昧だと開発メンバーがゲームの魅力を感じられなくなるのも問題です。メンバー自身がそのゲームを好きかどうかは、意外にもプロジェクトの成功とは関係ありません。
明確な方向性があれば「こういう面白さを提供したい」という想像力が働き、やる気につながることが多いです。軸がしっかりしていないと、みんながそれぞれの思いで作業を進めてしまい、結局は集まった要素がちぐはぐで面白くならないんですね。
実装コストを知らないディレクターが引き起こす悲劇
ディレクターの中には、“このアイデアは面白い!”という企画力はあるのに、技術的な負荷や工数をまったく理解していないタイプもいると思います。
「敵を一気に30体出せば迫力がある!」と発想するのは簡単ですが、実際のプログラマやアーティストにとってどれだけ大変なことかを知らないまま、無理なスケジュールを提示してしまう。
現場と温度差がある状態でリリース日が固定されると、残業が増え、メンバーの体調を崩し、最悪の場合は退職者が続出するケースも見てきました。企画自体は悪くないのに、技術的なコスト管理を誰もやっていないと、プロジェクトはどんどん壊れていくんです。
ただ、この問題はテクニカルディレクターのような役割の人をもう一人立てられれば、だいぶ改善すると僕は思います。企画を考えるディレクターと、コストや人員の計算ができるディレクターが協力していけば、無茶な指示やスケジュールは減っていくはずです。
本当は作りたくないゲームを任されたディレクターの苦悩
「ディレクターって作りたいゲームを作るものじゃないの?」と不思議に思う方もいるかもしれません。しかし、多くのシリーズを抱えている大会社では、会社の都合で「このシリーズの新作を作ってね」と割り振られ、本人はそのゲームを面白いと思っていないのにディレクターをやっているというパターンも実在するのです。
大手の場合、経営判断的にシリーズタイトルの続編を作りたいタイミングに、ちょうど手が空いているディレクターを充てることがあったりします。しかし、そのディレクターがそのシリーズを必ずしも好きとは限りません。とはいえ、立場上「自分はそのタイトルに興味がない」とはもちろん言えないので、黙って従うケースが多いのです。
当然、本人の感覚として「どこが本当に面白いのか」がピンとこないため、過去作品を分析して一生懸命仕様を詰めても、どこか強い熱意が生まれないんですね。結果、例えば「もともとはコアなアクションがウリだったはずが、カジュアル要素ばかり強調してしまう」など、シリーズファンからすると期待外れになりがちです。
……これ以上詳しく書くと、タイトルがわかってしまいそうなので、具体例はこれくらいにします!
組織としての対策は?
こうしたディレクターのミスマッチを防ぐには、まず本人の志向や得意分野をちゃんと把握した上で配属を決めることが大切だと僕は考えています。安易に「この人優秀だから大丈夫だろう」で任せてしまうと、想定外の方向に迷走しやすいと思います。
また、シリーズものの場合は、過去の作品で何を大事にしていたのかをきちんと文書化しておくことも非常に重要だと感じています。口頭での説明や個人の頭の中だけで管理していると、新任ディレクターにきちんと伝わらず、コアユーザーの楽しみ方を見失いがちです。
ディレクターが持つべきマネジメント意識
もう一つ重要だと思うのは、ディレクター自身が制作の進め方(マネジメント)をある程度理解しておくことです。企画力と演出力だけに長けていても、実装面の負担感がわからないと厳しいです。
処理負荷やアニメーション工数など、作り手側の苦労が見えないままだと「なぜ予定どおりに進まないの?」とメンバーを追い詰めてしまう可能性が高くなります。
もしディレクター本人がそれを全てカバーできない場合は、頼れる技術系の右腕をプロジェクト内にセットしてあげることも選択肢のひとつです。
最終的な責任はアサインを決める上層部にもある
こうした炎上パターンの原因は、ディレクター個人が「ダメな人」だからというよりも、「そのディレクターを誤ったプロジェクトに配置する組織側の問題」だと僕は思います。
なぜなら、適材適所を見極めるのは、もっと上のプロデューサーや経営陣の役割です。ディレクターに足りないスキルがあればサポートを用意する、合わないジャンルであれば別の人を検討する。それらの判断を怠ると、プロジェクト全体を巻き込んだ炎上が起こりやすくなるんですね。
まとめ
炎上しがちなプロジェクトを振り返ると、「ディレクターの方向性が定まっていない」あるいは「ディレクターのスキルセットとプロジェクトが合っていない」という共通点が見えてきます。
これを回避するためには、上層部がしっかりとディレクターの得意分野を把握し、必要なら技術面をサポートできる人を付けることが重要だと感じています。さらに、シリーズものなら過去作のコア要素をきちんと継承できるように文書化しておくことも欠かせません。
ディレクターがしっかりとした方向性を示せるかどうかで、プロジェクトの成否は大きく左右されると思っています。もし周りに炎上しそうなプロジェクトがあったら、まずはディレクターと上層部のマネジメント体制を少し疑ってみると、思わぬ改善策が見つかるかもしれません。
炎上を防ぎ、ワクワクするゲームを作るためにも、適切な人材配置と明確な方向性の確立がますます重要になっていくと感じています。
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