『Curiosity(好奇心)』から始まるコラボレーション。相手を知りたいのかジャッジしたいのか。
こんにちは、An-Nahal代表の品川優です。
この『多様性とイノベーションの科学』シリーズは、“インクルーシブリーダーシップ”や“グローバル・ダイバーシティ”について創業者の私が日々感じていること、日本企業のD&I推進に奔走する現場のリアルな日常をお伝えするnoteです。今回は『Curiosity』から始まるコラボレーションについてです。
先月、約1週間スウェーデンとノルウェーに訪れました✈
トヨタ財団から助成を受け取り組んでいる相互メンタリング『MILE』の先行事例としている企業に訪問することが目的でした。この視察費用は研究の一環として一部サポートを受けているものの、コロナ禍の渡航制限や燃油サーチャージの高騰、円安などが起きる中、正直懐は厳しいのですが今しかない!と思い急遽アレンジ。オンライン会議だけでは分からない、対面でのコミュニケーションのよさや、実際に足を運んで五感で感じる街、現地の雰囲気やD&Iの取り組みは非常に刺激的で、気づきの多い出張となりました。
今回の出張で私の心に残ったキーワードが『Curiosity』でした。実際に打ち合わせの場面でもCuriosityは大事だねという言葉も出てきましたし、訪問先とのディスカッションからも、『Curiosity』ってこういうことか!と実感する場面が多くありました。
細かい話は後からでもできる。まずはお互いを知りたい。
北欧出張の目的は、トヨタ財団の研究プロジェクトにおいて有意義な示唆を得ること。そして、それを日本でさらに進めていくために同企業とのパートナーシップ提携の話を進めること。(詳細は、発表に向けて準備中のためご期待ください…!)実はAn-Nahal創業直後、2019年春にもスウェーデンで同社に訪れ前CEOや担当者とは会っていましたが、創業者と直接会って話すのは初めてでした。
具体的にミーティングで得たい合意事項や情報はあったので、限られた時間で伝えたいことが伝えられるように、私たちの事業を理解してもらうために…と資料も準備して臨みました。
当日、会社を訪問すると案内されたのは朝日が気持ちよく降り注ぐテラス席。コーヒーが振舞われ、これはなんとも優雅なモーニングのワンシーンでは!?というシチュエーションに。
「ミーティングは会議室で」という無意識の前提が壊れ、とても心地のいいテラス席で始まったビジネスミーティングは、なんとも『Curiosity』と共感に溢れた時間だったんです。
ここでいう『Curiosity』とは、インクルーシブリーダーシップに必要な6つの資質の1つ。
創業者もチームメンバーも(後から話した、他のチームメンバーも)みんな、非常に『Curiosity』に溢れた方ばかり!
コーヒーを飲みながら、「An-Nahalの社名はどんな由来があるの?」「この事業に取り組んでいるのは、どんな経緯があるの?」とまずは会社というよりも私たち自身に関心を寄せてくれた問いかけと同時に、「私たちもね…」と、自分たちの想いや事業の現状についてもオープンに話をしてくれたんです。
もちろんビジネスの場面なので、具体的な仕事の話や交渉事も話に挙がったのですが、「細かい話は後からでもできる。今はぜひあなたのことを聴かせて?(お互い知り合う場にしましょう)」というスタンス。
最初から私たちの事業や実績に対して評価(Judgement)をするのではなく、まずは関心を寄せて私たちのことを知ろうとしてくれる。そして共感と、自分たちのこともオープンにしてお互いを深く知ろうとする時間を設けてくれたことが非常に心に刺さりました。
ビジネスにジャッジは必要。でもそのベースは1対1の人間関係。
この出来事はこの会社に限ったことではなく、出張で出会った他の企業や団体の方からも同じことを感じました。
繰り返しますが、ビジネスシーンなので具体的な仕事の話、実績や信用、提案や交渉事ももちろん必要です。ですがその前に、お互い一人の人間としての関係を構築するために『相手を知ろう』とする『Curiosity』。決して「この人は自分(の会社)にとって有益か?」「どんないい提案をしてくれるの?」といった「評価(Judgement)」のために相手を知るのではなく、いい関係を築くためにお互いを知り合う。人と人としての関係があった上でのビジネスだよねというスタンスが非常に嬉しく、この時間があるからこそよりよいビジネスをしたい、よりよい提案をしたいという気持ちにさせてくれるなと感じました。
日本(と括ってしまうのも大げさかもしれませんが)のビジネスシーン、特に新規で営業をする場面だと、最初からお互いに評価する目線になってしまいがちではありませんか?私自身もそうなってしまうことがあります。改めてビジネスにおいても土台となる一人の人間同士の関係性を大切にしたい、『Curiosity』はインクルーシブリーダーの要素としてはもちろんのこと、普段のビジネスでも大切な要素だと学ばせてもらった出張となりました。
相手を知る目的はジャッジではなく純粋な好奇心。具体的なセリフはどう変わる?
今回の出張の主な目的は協業=コラボレーションを模索するアポイントだったのですが、そのすべてにおいて、相手の姿勢が『評価(Judgement)』ではなく『Curiosity』でした。D&Iにも必要な要素ですし、なによりインクルーシブリーダーシップにおいて、そしてコラボレーションやイノベーションの第一歩において、とても重要な資質なんだなと改めて実感しました。
相手を知るための会話、その目的が相手を評価(Judgement)するために知ろうとしているのか、それともお互いに何ができるかを前向きに考えていくため、どんな人(想いや考え)かを知りたいという目的で知ろうとするのかでは全く違います。
もしかしたら、相手を理解するための会話(問い)の仕方は不慣れな方も多いのかもしれません。私もここ数年はコーチングを学び、事業(コンサルティングや研修)にも活かしているのですが、コーチングの中で学んでいることがヒントになりそうです。
コーチングの中では、相手を理解するために、”誘導ではない聞き方”や”ジャッジせず聴く”ことの大切さが強調されています。そのためにまずはオープンクエスチョンを使うとされていて、以下のような問い方があります。
オープンクエスチョンの問い方例
What's on your mind?
今頭の中にどんなことが浮かんでますか?
What is your current challenge?
今抱えている課題はなんですか?
What step are you willing to take?
これからどんなことをしていきたいと考えていますか?
パートナーシップを模索する時の問い方例
How can we contribute each other?
私たちがお互いにできることはなんでしょう?
How can we collaborate?
どんなところで協力しあえそうでしょうか?
こんな風に問いかけられたら、どうやって答えますか?逆に、相手にこのように聞いたらどんな返事が返ってくるでしょうか。
「想像できないことが返ってくる」かもしれないですよね。実はこれがオープンクエスチョンのいいところ。誘導や評価(Judgement)をする前提で聞くのは、自分の仮説があって検証しようとしているからです。そうではなく、オープンクエスチョンで相手から自分が気づいていなかった色んな視点をもらう、”パースペクティブテイキング(視点の獲得)”という考え方も大事にしてみたいですよね。
もちろん、何かを決定するフェーズではクロージングするために評価(Judgement)も必要です。相手との対話の中でお互いを理解するフェーズと、決定するフェーズでは心持ちを変えられるといいなと思います。お互いを理解するフェーズでは、コントロールできない、予期できない返答を得ることで新しいアイデアやコラボレーションに繋がっていきます。
そしてもう1つ、前後の文脈も関係します。一方的に質問するだけでなく自分たちのことも話し、対話の中で共感がある。お互いにオープンに話し、それぞれに共感があった上で更に相手を知るための問いがある。だからこそより安心してオープンに話せるし、お互いの理解も深まる好循環になります。
ここでもう一度、ハーバードビジネスレビューの記事に書かれている『Curiosity』について引用します。
・オープンな姿勢=自分たちのことも話す
・強い好奇心=相手に関心を寄せる、聴く
・人の言葉に是非を問わず=ジャッジしない
・共感を持って理解しようとする
まさにこれなんです!
この状態があった上で「どうすれば一緒に実現できるか?」という姿勢でで話を進める。こんなコミュニケーションができたら、もし仮に今すぐビジネスの取引にならなかったとしても、この先もいい関係が続き、いずれ仕事のパートナーにも発展するタイミングが来るかもしれないという素敵な未来が描けると思いませんか?
アポイントやミーティングの時間すべてをお互いを知るためだけの会話に使うことは現実的ではありませんが、少しでも相手に『Curiosity』を持った対話や行動を取り入れることから始めてみたいと思います。
An-Nahalでは、『コラボレーション』を積極的に行っています。An-Nahalのサービスやプログラムを受けてみたいという企業様はもちろん、「私たちとこんなコラボしない?」というお話も大歓迎です。
✓多国籍なメンバーでチーム力を発揮することにお困りの方
✓インクルーシブリーダーシップを発揮できる人材を育てたい企業の経営者・人事のみなさま、
✓多国籍なチームに英語でのプログラムを提供してほしい企業さま
ぜひ人材育成、組織開発についてお話できたら嬉しいです。
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