日本の調味料との出会いと使い方
この日曜日もまた料理教室を開催しました。
今回は、日本の調味料の使い方。
この教室をしようと思ったきっかけは、ポルトガルでも、本当に美味しい、昔ながらの製法で作られている醤油や味醂、味噌が手に入るようになったから。(すっごく嬉しい!)
本当にポルトガルは、この5年くらいですごく色々と国際化して変わったなぁと実感するけど、やはり日本の良いものが手に入りやすくなったことはとても大きい。きっとヨーロッパの他の大都市にお住まいの方たちは、そんなのもう普通のことだったかもしれないけど、ヨーロッパの端っこの、日本からの直行便もないこの国では、在住の日本人の数も少ないし、そこまで需要がなかったのだ。
店をやっていた時に、お客さんと話していると、日本に旅行に行ったことがある人の数がめちゃくちゃ増えていることを知り、中には1年に一度いく人たちもいた。それくらい日本の国や文化、日本食を愛している人たちがポルトガルにもたくさんいる。
もう店を始める前の、8年前まで私が料理教室やワークショップをやっていた時代とは、確実に違う。周りの料理人たちも、積極的に日本の調味料を使い始めている。しかも、日本人の私たちよりも、よっぽど熱心に、麹から味噌を作っていたり、独創的な使い方をしている店もたくさんあって、私も逆に刺激を受けたりする。固定観念がないってすごい!
先日訪れたナチュラルワインとベジタリアン料理の店、Senhor Uva(セニョール・ウヴァ)は、私がやっていた店のお客さんたちの間でも評判の良い、気さくに自然派ワインと一緒に地のものを使ったお洒落で美味しい野菜料理が楽しめるお店。行った日も、活気があってとても賑わっていた。
ここで興味を持って頼んでみた一品に、黒米で椎茸を包んだものの、梅干しクリーム添えというものがあった。味は馴染み深い椎茸や梅干しそのものだけど、見た目が可愛くて、こちらの人にも人気なのかな?面白いアプローチだなぁと思った。
今ではもちろん、普通のスーパーでも醤油なんかは売っている。でも、味醂は、味醂風調味料というやつの方がメインに売っているかな。たくさんの人たちが、普段使いで気軽に醤油を取り入れているのがとてもよくわかる。
それが嬉しい反面、複雑な思いを抱く気持ちは、店でテイクアウトを頼まれた時に生まれた。
店では、お寿司や刺身用に、造り醤油や麹醤油をいつも作って用意していたのだけれど、テイクアウトで注文された際に、「醤油は家にあるから入れないで大丈夫!」というお客さんが結構いたり、醤油の名前を「〇〇ちょうだい!」と大手醤油メーカーの名前で呼ぶ人がいたりいた。もちろん、おうちにある醤油を使ってもらえたら環境にも優しいし、とてもいいのだけど、私はケータリングでたくさんのお家の冷蔵庫の中を見てきたから知っている。もう何年も前に買った、最後にいつ使ったかわからない古い酸化した醤油や、大量生産された、ツーンとくる味の醤油をずっと冷蔵庫に入れっぱなしの人がとても多いことを。せっかくの新鮮な魚がその醤油の味になってしまう。。
日本酒屋Sakemicoが美味しい昔ながらの製法の調味料を扱い始め、試食した時、私もその美味しさに感動した。味醂なんかは、そのままリキュールとして飲める。お味噌だって、これだったらそのままディップとして、田楽味噌として何もせずに食べたい。これをこちらの人にもぜひ知ってほしい!そう思った。
それがこの料理教室をやろうとしたきっかけ。
来てくれた生徒さんは、2名はプロの料理人、あとはフードジャーナリストに、日本にも行ったことのある日本食大好きなお医者さん、子供たちに美味しい和食を食べさせたいというお父さん、料理が大好きな12歳の男の子、そして日本人の女性の方も参加してくれた!
まずは、濃口、薄口、そして色んな製法で作られた醤油をそれだけで試飲。味醂も小さなグラスに入れて飲み比べ。味噌も白味噌や田舎味噌なんかを食べてもらった。皆その美味しさに目を丸くして驚いていたし、それで作ったお刺身用の漬けダレや、胡麻和えのタレに感動していた。これで作ったら、何を合えても絶対美味しいでしょう!ていう風になる。
この日作ったのは、
ほうれん草の胡麻和え
サーモンの漬け丼
豚汁
こちらの人たちに人気なメニューばかりで攻めてみた。
でも、出来上がった料理を実際に皆で食べる時はもちろん、それを作る際に行った、美味しい調味料との出会いの瞬間が印象的だった。
今回使った調味料はこちら。
天然の蔵付き酵母、自然の温度でゆっくり熟成させた、防腐剤など入っていない奈良のイゲタ醤油さんのものと、愛知の三河でつくられた、そのまま飲んでも美味しい小笠原味醂さんのもの。
そして、京都のたっぷり手間暇かけた、昔作りの加藤みそさんの白味噌と奈良の井上本店さんの五徳味噌。
食材や、職人さんたちが手をかけて作った調味料が美味しかったら、毎日の料理はそんなに手を加えなくても美味しい和食が手軽に作れるんだ、ということを伝えることができたワークショップかな、と感じております。
きっと自国のオリーブオイルや塩にこだわりを持っているポルトガルの人たちだから、こういう素材の質の良し悪しは、よりスムースに共感してくれるのではないかと思う。
そうだ、今度はポルトガルのオリーブオイルと日本の醤油のペアリングなんかもやってみようかな!