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ベーカリーの日常

ベーカリーに1週間毎日いると、少しずつ店全体のルーティンが見えてくる。

そのルーティンの中に、小さなハプニングや、ちょっといつもと違う出来事なんかが毎日少しずつ起こる。うちの店もそんな感じだったな。

毎日開店時間8時ちょうどにコーヒーと、ハムとチーズのサンドイッチを食べにくる女性。きっと出勤前なのかな?コーヒーと甘いパンを食べながら、毎日パソコンで何か作業している男性もいた。こうやって、朝8時から10時くらいまでは、出勤前に朝ごはんを食べに来たのであろう人たちがポツポツと来店して、その後10時以降になると、子ども連れのお母さんたちが、一おしゃべりに来る、という客層に変わり、11時くらいが一番店が満席で賑わう時間だ。

ランチタイムはシェフ、ウーゴのスペシャル料理が週替わりで出されている。
このパンは、マニャジートというチョコチップ入りのパンで、子供に大人気。

店でコーヒーと一緒にパンを食べる人もそうやってコンスタントにいるけど、やっぱりパンだけを買いに来る人が圧倒的に多い。店のスタッフとのやりとりを聞いていたら、ああこの人はもうとてもよく来る常連さんなんだろうな、とか、パンの種類を一つ一つ聞く人を見たら、ああこの人は初めてなのかな?などと思いながら、パン作りを手伝った。ヨーロッパはだいたいそうだと思うけど、こちらのパン屋は、日本みたいにお客がトングで好きなものをディスプレイから取るスタイルはなく、カウンターの後ろに並んでいるパンを、自分の順番になったら注文して、袋に入れてもらう。パンの種類もそんなにないから、カウンターのディスプレイで十分収まる。

土曜日は、1週間で一番忙しい。土曜日に出すパンは、木曜日に酵母を準備する。だから木曜日の酵母の量を見て、どれだけのパンを金曜日に仕込むことになるのかがわかる。金曜日はその酵母でパンを捏ねて、発酵させて、成形して、土曜日の早朝まで2次発酵させる。土曜日の早番の人は、朝2時入り!私が6時に到着した時には、すでにすごい量のパンが焼きあがっていた。

昼前になると、びっくりするくらいの行列ができた。皆田舎パンを買って、家で家族とのお昼のお供にするのだろう。普段は仕事だから、土曜日しか来れない人なんかもいるんだろう。

ISCOは毎日「〇〇曜日のスペシャル」パンを日替わりで作っていて、例えば、金曜日はビールとモルトが入ったパン、土曜日は、キャラウェイシードの入った異国の雰囲気漂うパン、日曜日はフォカッチャ、など、見学するのが楽しかった。

そんな中、私も大好きでよく買っていた、毎日定番の甘いパンが、シナモンロールとカルダモンロール。これは、毎日の売れ筋を見ていたら、パン・オ・ショコラと並んで人気商品だ。ISCO以外では、北欧系の今リスボンで勢いを増しているスペシャリティコーヒーと天然酵母のパンが売りの、「コペンハーゲン」も必ずこのシナモンロールとカルダモンロールが置いてあり、どうやら北欧系のパンは、ポルトガルでも人気が出始めているらしい。

今どんどん店舗が増えているコペンハーゲン。うちの近所にもあるから、たまに行く。

「コペンハーゲン」は、値段も高めだからか、何かのサイトになっているからなのか、白人系の観光客のお客さんばかりで、地元民はあまり見ないけど、ここISCOは地元の人たちがこういう北欧系のパンなどを買っていくから、ああ、こちらの人たちにも人気があるんだなぁ、と嬉しい気持ちになる。

ちなみにこのシナモンロールとカルダモンロールも作り方を教わって、一生懸命生地の巻き方を練習した。この時、使っているバターの量と砂糖の量にはちょっと度肝を抜かれた。そのほかにも、アーモンドクリームを挟むクロワッサンなんかも、すごい量のバターやシロップなので「これはカロリー半端無いねぇ。。」というと、パン職人のジョアナに「そういうことは考えない方が美味しく食べれるのよ」と言われてしまった。

クロワッサンを皆でひたすら成形!


そんな中、私のいる1週間の間のちょっとした出来事といえば、ISCOにも、スペシャリティコーヒーが導入された!店のスタッフも、常連さんがエスプレッソを頼む度に、「今日からスペシャリティコーヒーに変わったのよ。味が変わったから気に入ってもらえるといいんだけど」と説明しながら出していた。

それから、新規でこのベーカリーのパンを仕入れるレストランがまた一つ増えた、という嬉しいニュースもあったり、ああ、この店は頑張って少しずつ発展させていて頼もしいなぁ、と肌で感じた。

新規フリーで活動を始めた私としては、本当にいいエネルギーをたくさんチャージさせてもらえた、素晴らしい1週間でした!

窯に入れる直前に卵液を塗るところ






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