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【研究】基礎の基礎に立ち返った話

先日、募集タイトルで目に止まったテーマについて書いたわけですが、それに関連した内容ということで、【#最近の学び】を書いてみようかなと。仕事の内容ですが、専門外の方が読んでも理解出来るよう、専門的な表現や用語はなるべく使わないようにします。


きっかけは常に問題

マウスの臓器から外来DNAを抽出すること。
現在、私が研究開発に取り組んでいる研究におけるひとつの工程です。読んで字のごとく、実験用マウスの臓器(肝臓や肺、腎臓など)から外来DNA(外から入れたDNA)を取り出す作業です。

専門家でない方でも「そんなのもう研究の分野で一般的な手法があるんじゃないの?」と思われるかもしれません。

そのとおり。とっくの昔に簡単にスピーディーにDNAを取り出すためのキットがいろんなメーカーから販売されています。

ではなぜ新たに開発する必要があるのか?
それはこの研究では臓器全体からDNAを取り出す必要があり、それはあまり一般的に行われることではない為です。市販のキットはどれも、小さなサイズ(臓器の一部)からのDNA抽出にしか対応していません。

それなら臓器を小分けにして市販のキットを使えばいいのではと思うかもしれませんが、それではコストも手間もかかりすぎるわけです。

ではどうするのかというと、当たり前に聞こえるかもしれませんが、『基本の原理に戻る』のです。

基礎の原理を考える

市販のキットも最近よく使われている手法も、もとをたどればひとつひとつの工程の全てに元になった研究結果があるのです。それらの原理をひとつひとつ確認し、各々の工程がどんな原理で、どんな条件に設定されているのかを考えなければなりません。

よって、元になった研究論文や、メーカーが取得している特許明細に目を通していきます。そうすると一般的になりすぎていて、原理の細かい部分までの理解が十分でなかったりすることに気が付くわけです。

基礎となる原理・方法の代替えになる可能性のある方法を探し理解する

それぞれの工程の原理がわかると、それぞれがどんな理由でなんのために工程に組み込まれているのかが推察されます。そうすることで、各工程の代替えとなる技術を探すことが可能になるわけです。

例えばある工程にハサミが使われているなら、そこはカッターで代用できるよね的な話です。(道具変えるだけってほど単純ではありませんが)

そろったパーツを組み立てる

そんな感じで、様々なパーツ(方法)が手元に集まってきます。そうしてそれらを組み合わせたり、一部応用したりと、バラバラの状態から一連の工程に組み立てていくのです。この時点ではまだ紙の上で四苦八苦です。

だいたい頭の中で「いけたな」と思っても、紙の上で細かく計算していくと、うまくいかなそうな点が見つかったりします。当然、その部分はやり直しですね。

実証実験を行う

実際に試薬を使って期待どおり動くかどうかを確認します。それで予め決めた数値をクリアすればハッピーエンド。越えなければ、どの工程が問題になっているのかを検証し、組み立て直すための考察をするわけです。


これらがいわゆる『研究開発』と呼ばれるものの一連の流れなのです。面倒ですね、ほんと。

しかし、こういったことを繰り返すことで、その分野の知識の厚みが少しづつ増していき、『プロフェッショナル』の域に近付いていける唯一の道なのです。

今回は、DNAの抽出というあまりにも基本的なステップが課題となりました。この技術自体は、私が分子生物学を学びだした頃には既に確立されていて、一般的な作業工程として広く知られており、それぞれの細かい工程の原理は深く調べることなく使える環境だったのです。

たかがDNA抽出、されどDNA抽出。

ちなみに長々と偉そうな事を書き綴ってきましたが、現時点で満足のいく解決方法を見つけられていません。(切羽詰まってます)

なんとかしてこの課題を乗り越えてやるぞ!

#最近の学び


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